18 June 2021

銀座のライカギャラリーで
「スポーツのある風景」展が開催中

18 June 2021

Share

銀座のライカギャラリーで「スポーツのある風景」展が開催中 | 銀座のライカギャラリーで「スポーツのある風景」展が開催中

ライカギャラリー東京で、写真家集団マグナム・フォトの協力による「スポーツのある風景」をテーマにしたクリス・スティール=パーキンスの写真展が、6月2日(水)より開催中だ。合わせて同氏にインタビューの時間をもらった。

会場では、クリスの半世紀近いキャリアを通して、中米、アフリカ、ヨーロッパ、アジアなど、世界各地の競技場から校庭まで、さまざまな機会に撮りためてきた作品の中から、人々とスポーツの関わりをとらえた14点が厳選され展示されている。

撮影=ソンジン
文=小林英治

クリス・スティール=パーキンス


「私はスポーツに特化して写真を撮り続けてきたわけではありません。一貫して興味があるのは人間の生き様です。ですが、人間が生きるうえでスポーツは不可欠な要素だと思いますので、それが自然と写っているということだと思います」

イギリスを拠点に、都市部に潜む貧困やサブカルチャーなどをテーマに活動する一方で、アフリカ、中南米、レバノンなど世界各地の紛争地や社会情勢などの取材をしてきたクリス氏は、初めて訪れる国や地域にコミットする手段として、スポーツを入口にするケースも多いという。

クリス・スティール=パーキンス


「旅をしながら写真を撮っていると、スポーツというものが世界中で人々にアプローチしやすいテーマであることは事実です。例えば有名なサッカー選手の名前を口にしたときに、イギリスでも、パプア・ニューギニアでも誰のことだか分かってもらえますし、実際、現地のスポーツクラブを訪れることで、人を紹介してもらったこともあり、その国の社会や文化を理解するためのドアが開くということはよくあります」

Amputee footballers training, Accra, Ghana, 2010 © Chris Steele-Perkins

Amputee footballers training, Accra, Ghana, 2010 © Chris Steele-Perkins


松葉杖姿の二人の男性が、サッカーボールを蹴っている写真もそんな一枚だ。「たとえばこちらの写真は、普通にサッカーの試合を観ていたら、ピッチサイドに車椅子に乗っている人たちが見えたので、『障害者のチームがあるんですか?』と聞いたところ、『もちろん。土曜日の10:00にここに来てごらん』といわれて、あらためて行ったときにくり広げられていた様子を撮影したものです」。なぜ彼らは片脚なのか。もし健常者のサッカーの試合の写真を撮っていただけでは、その背景にある紛争や国の歴史を考えることはなかっただろう。

Wheelchair tennis match, London, 2007 © Chris Steele-Perkins

Wheelchair tennis match, London, 2007 © Chris Steele-Perkins


「こちらは、南ロンドンにあるパラリンピックセンターで撮影した、車椅子テニスの試合の様子です。この場合は、事前に施設に連絡をして、いつ行けば試合が観られるかを聞いて撮るものを決めて行きました。この写真は、ちょっとした騙し絵のようなポジションになっていて、スポーツというテーマとはまったく別の面から面白いと思っています。合成などはしていないのですが、上の選手より下の選手の方が倍の大きさに見えますよね。どうしてこうなったのか私も忘れてしまったんですが(笑)、こういったあいまいな部分も写真の面白さのひとつです」

Indoor climbing wall, Wales 1996 © Chris Steele-Perkins

Indoor climbing wall, Wales 1996 © Chris Steele-Perkins


作品のひとつに、教会の内部で若者たちがボルダリングをしているという興味深い光景の写真もある。「これは、イギリスのブリストルにある15世紀に建てられた教会が、クライミングセンターに転用された施設です。最近では、このように多くの教会がコミュニティセンターやスポーツセンターに改装されています」

Wolverhampton sport club, England, 1978 © Chris Steele-Perkins

Adventure playground, Wolverhampton, England, 1978 © Chris Steele-Perkins


1978年にイングランド中部地方で撮影された二点は、教会に併設されたスポーツクラブの内部とその屋外、同じ場所で撮影されたものだという。ホールの屋内で身体を動かす人物の横に腰かけるうつろな表情の男性と、屋外でロープに飛び乗って遊ぶ子どもたちの嬉々とした姿が対照的だ。時代はサッチャー政権誕生前夜、長らく経済が停滞していたイギリス社会の重苦しい空気が垣間見える。このように、「スポーツ」というテーマでキュレーションされた小さな展示ながら、ひとつひとつの作品からは多様な写真の魅力が感じられる。

「ロバート・キャパの有名な言葉に『写真が良くないとしたら、それはもっと近寄らないからだ』というものがありますが、私は『写真が良くないのなら、20年後にもう一度見てみなさい』といいたいです」。最新作のひとつに、今年撮影された東京・中野の公園で遊ぶ子どもたちの写真がある。被写体が皆マスク姿であることに、後年この写真を見る人たちはどのような意味を読み取るだろうか。

なお、ライカギャラリー京都では、同じく「スポーツのある風景」をテーマに、エリオット・アーウィットがスポーツとともに生きる人と風景を彼独自のユニークな視点で切り撮った作品の中から厳選した15点が展示されている。

タイトル

「スポーツのある風景」by クリス・スティール=パーキンス

会期

2021年6月2日(水)~8月24日(火)

会場

ライカギャラリー東京(東京都)

時間

11:00~19:00

休廊日

月曜

URL

https://s.imaonline.jp/3ww3a2F

クリス・スティール=パーキンス|Chris Steele-Perkins
1947 年ミャンマー生まれ。1949 年イギリスに移住。2つの大学で化学と心理学を学ぶ。在学中から学生新聞の写真家兼ピクチャーエディターを務め1971 年よりロンドンでフリーランスの写真家として活動を始める。主に都市部に潜む貧困やサブカルチャー、パラリンピックなどをテーマに撮影し、1988 年ライカ・オスカー・バルナック賞、1989 年ロバート・キャパ賞受賞。1979 年マグナム・フォトに参画。現在ではロンドンと東京に活動の拠点をおく。写真集に『The Teds』、『アフガニスタン』、『FUJI』などがある。1970-80年代に撮影した北アイルランドの人たちを再訪し、新たに撮影した写真と40年前の当時の写真をあわせて掲載した作品集を今年中に刊行予定。

Share

Share

SNS