29 July 2021

落合陽一が創る見る、嗅ぐ、食べるクラシック音楽会とは?写真展と合わせ8月11日(水)開催

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東京都

29 July 2021

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落合陽一が創る見る、嗅ぐ、食べるクラシック音楽会とは?写真展と合わせ8月11日(水)開催 | 落合陽一

メディアアーティスト落合陽一と日本フィルハーモニー交響楽団が共演するクラシックコンサート「醸化する音楽会」が8月11日、サントリ―ホールで上演される。落合は同楽団と聴覚だけではない演奏会を2018年から企画。奏者の演奏に身を委ねる通常のクラシック演奏会ではなく、聴衆も能動的な所作を必要とするこのシリーズは、五感を取り入れ新しい音楽体験を追究する。5回目となる今年は、落合撮影の写真展「オーケストラと質量」も同時開催。詳細はいかに?落合に聞いた。

文=IMA
写真=松栄憲太

落合と日本フィルは「テクノロジーによりオーケストラを再構築する」というテーマのもと、あるときは紙やすりを削り、あるときは振動する球体と振動し、あるときはARでモンスターが出現と、聴覚だけではない音楽体験を探究してきた。5回目の今回は「醸化する音楽会」と題し、「五感、解禁。」と謳う。“醸化(じょうか)”は造語で、コロナ禍により移動が制限される中で、ローカルで“発酵”したものを見せたかったとのことから、この字を当てたという。

落合陽一


「演奏プログラムは西洋と東洋の対比となっていて、1960年代から我々日本人が歩んできた文化とは何か?その発酵性を考えるのがテーマです」

曲目は、前半に黛敏郎『オリンピック・カンパノロジー』、伊福部昭『土俗的三連画』、和田薫『交響曲 獺祭~磨migaki~第2楽章“発酵”』と日本人作品が並び、後半はJ.シュトラウスⅡ世『シャンパン・ポルカ』、バルトーク『ルーマニア民俗舞曲』、ペルト『カントゥスーベンジャミン・ブリテンへの哀悼歌』、ムソルグスキー『展覧会の絵よりバーバ・ヤガー~キエフの大門』とヨーロッパの作品が演奏される。

東西の対比というように、よく見ると前後半で鏡像のような構成になっている。和田とシュトラウスⅡ世は酒、伊福部とバルトークは民俗性というように対応する。黛が日本の名刹でサンプリングした鐘の音に対し、ムソルグスキーではキエフの鐘楼が鳴り響く。演奏会ではオーケストラの演奏に連動し、リアルタイムレンダリングによる映像を投影し、視覚でも表現する。

リハーサルを検討する落合陽一。映像のフレームレートの指示や“ぬるっと”など音の質感なども言及。

リハーサルを検討する落合陽一。映像のフレームレートの指示や“ぬるっと”など音の質感なども言及。


「例えば、アイヌがテーマの伊福部の作品はアイヌの刺繍文様が流れ、バルトークではルーマニアの刺繡文様が流れます。黛とムソルグスキーでは東西の死生観を表現。キエフの大門で召されて、臨死体験のようなアンコール曲につながるんです」

このように音楽も映像も呼応し、聴覚と視覚の融合を図る。ただ今回は視聴覚のみに留まらない。

「過去4回、聴覚・視覚・触覚を用いるコンサートを行いました。今回はそこに味覚と嗅覚を加えたいと構想しています。1年半にもわたるコロナ禍で、皆さん家でライブ配信を視聴するのに疲れてきたと思います。映像と音だけでは到達できたない身体性を回復するために、味覚・嗅覚まで取り入れ、五感を総動員させたいたいんです。前回コロナ禍では8Kで配信しましたが、やはり生のオケの音には敵いません」

音と映像の協奏は、ロシアの作曲家スクリャービンによる色光ピアノを用いた管弦楽曲『プロメテウス 火の詩』を想起させる。また、スクリャービンは未完の神秘劇にて光、香り、舞踏など五感を用いた総合芸術を構想していたが、本演奏会もそれに近い印象だ。スクリャービンは共感覚があったといわれている。

「このプロジェクトはどう共感覚を追求するかなんです。メディアアートは音と光の共感覚。それをずっと私は研究してきました。メディアアート黎明期から共感覚をテーマとしたものはあったんですが、最近技術の進歩で音に合わせてCGをリアルタイムで生成できるようになったことは表現しやすくなりましたね」と落合は説明する。

サントリーホールで行われた機材リハーサルの模様。曲に合わせて映像が変わっていく。

サントリーホールで行われた機材リハーサルの模様。曲に合わせて映像が変わっていく。

サントリーホールで行われた機材リハーサルの模様。曲に合わせて映像が変わっていく。

サントリーホールで行われた機材リハーサルの模様。曲に合わせて映像が変わっていく。

サントリーホールで行われた機材リハーサルの模様。曲に合わせて映像が変わっていく。

サントリーホールで行われた機材リハーサルの模様。曲に合わせて映像が変わっていく。


メディアアートを保存するための写真活動

落合は写真家としての一面も持ち、愛用のライカで撮った写真を自身のインスタグラムやホームページで発表している。今回の演奏会では、自ら収めた5回にわたるプロジェクトの舞台裏を、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)にて展示。演奏会の夜のみのエキシビションとなるのでとても貴重な機会だ。

「普段ライカのM型か中判を使って撮っています。メディアアーティストにとって写真は、物質に変換するという点が面白い。メディアアートは壊してなくなるじゃないですか。このコンサートのセットだってなくなる。これをどう記録・記憶するのか。他のフォトグラファーに撮影させるとその人の印象で残ってしまいます。それは嫌なので自分で撮るんです。印刷設備も事務所に構えています」

リハーサル当日もライカを提げ、逐次撮っていた。

リハーサル当日もライカを提げ、逐次撮っていた。

いままでの作品はスナップが主だったが現在進行しているのがヌードフォト。人の撮影は珍しい印象だが、

「コンサートが身体性だったのでその関連もあります。人を撮るのは面白い。身体にはその人の歴史が刻まれているし、どんな人なのか?とほぐしながら撮影するのも面白いですね」とこちらも身体性に意識が向いているようだ。

当日は写真展だけでなく、サントリ―ホール入り口前のカラヤン広場の滝に落合のインスタレーション作品『醸化するモノリス』も設えられる。彼を代表するモチーフである蝶や錆びた金属などが出現する作品で、数日にわたり一般公開される予定だ。

「オケも映像も当日のコンディションによって何もかも変わることが面白い。照明当て過ぎても音は変わるし。生はめっちゃ解像度感じると思います」

その場の体験に勝るものはないだろう。

タイトル

「醸化する音楽会」

日程

2021年8月11日(水)

会場

サントリーホール 大ホール(東京都)

時間

19:00~

料金

【S席】8,000円【A席】6,500円【YS席(25才以下)ダイバーシティ席(障害者手帳保持者)】1,500円【オンライン配信チケット(見逃し配信なし、国内)】各日5,000円

配信

【ライブ配信】8月11日(水)19:00~(販売期間:~8月5日18:00)【再配信(1)】8月21日(土)19:00~(販売期間:~8月17日18:00)【再配信(2)】8月22日(日)9:00~(販売期間:~8月17日18:00)

演出・監修

落合陽一

演奏

日本フィルハーモニー交響楽団

指揮

海老原光

映像の奏者

WOW

プログラム

黛敏郎:オリンピック・カンパノロジー
伊福部昭:土俗的三連画
和田薫:《交響曲 獺祭~磨migaki~》第2楽章“発酵”
J.シュトラウスⅡ世:シャンパン・ポルカ
バルトーク:ルーマニア民俗舞曲
ペルト:カントゥスーベンジャミン・ブリテンへの哀悼歌
ムソルグスキー(ラヴェル編):組曲《展覧会の絵》より バーバ・ヤガー~キエフの大門

URL

https://japanphil.or.jp/concert/24672(日本フィルハーモニー交響楽団Webサイト)
https://eplus.jp/ochyaixjapanphil-ms/(イープラス)

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