27 April 2024

藤原ヒロシインタヴュー“切り取り、残るのが写真を撮る面白さ”。ライカ表参道で国内初写真展

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東京

27 April 2024

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藤原ヒロシインタヴュー“切り取り、残るのが写真を撮る面白さ”。ライカ表参道で国内初写真展 | 藤原ヒロシインタヴュー“切り取り、残るのが写真を撮る面白さ”。ライカ表参道で国内初写真展

2024年4月12日、ライカの新たなフラッグシップストア「ライカ表参道店」がオープンし、そのこけら落としとなる、藤原ヒロシさんの写真展「ambnt 旅、仕事、環境、を切り取る」が開催中だ。意外にも、国内で写真展を開くのは初めてだという彼に話を聞いた。

撮影=郭勇志
取材・文=中村志保

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展示フライヤーに使用されている作品。モンクレールのイベントを開いた際の会場風景だ。「真ん中の人が犬を連れているのがいいなと思った」と藤原さん。

ライカを初めて手にしてから30年以上が経つ。フィルムカメラのライカMPをはじめ、M8からはデジタルへ、そして現在の愛用機は最新型のM11。2年前には、藤原ヒロシさん率いるフラグメントデザインがライカとコラボレーションした特別限定モデルも発売され、ファン達を沸かせた。藤原さんにとってライカとの思い出は深い。

「個展といっても、何か気負うものもないし、これまでに撮り溜めた写真の中から年代を問わず、“なんとなくいいな”と思ったものをセレクトしたんです。頑張って写真を撮ろうなんて思ったこともないし、いつも撮りたくて仕方がないというわけでもない。たまにカメラを持ち歩いて、身の周りに何かあったら撮るだけなんですよ。みんながスマホで撮るのと同じ感覚だと思います」と、藤原さん。それでも、ライカがデジタルになってからはフィルムの時よりも1000倍くらいシャッターを押すことが増えたそう。

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右はモンクレールのパーティーを撮った一葉。「ライカは、室内がきれいに写ると思ってるんですよね。モノクロはどちらかというと外で撮るほうがいいな」と、藤原さん。

だから、藤原さんが撮るのは、いわばスナップ写真だ。展示ではいくつかの風景写真に混じって人物写真もある。その写真からは、彼がこれまで手がけてきた膨大な仕事とプライベートの境界が、溶け合うような、そんな瞬間を目撃できるような気もするし、同時に藤原ヒロシという人物像が浮かんでくるようでもある。それは、彼がいる“環境”でしか撮ることができない写真だ。

「僕はプロのカメラマンというわけではないし、“こんなポーズをして”と決めて撮ることも、セッティングして撮ることもありません。いいなと思った瞬間をただ切り取っているんだけど、ポートレイトよりも風景のほうが好きですね。セッションするのが苦手だから(笑)」

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「スマートフォンのカメラのクオリティがすごく高くなって、ライカのような色を出せるものもあるし、iPhoneで撮っても変わらないと写真家が言う時代です。それでもやっぱりライカで撮るというのは、何か特別な気分になるもの。今後もずっとライカを使い続けていくんだろうな」

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写真について、藤原さんは次のように見解を述べる。「良くも悪くも、残るのが、写真なのかもしれません。見るタイミングによっても一枚の写真の見え方は変わることもありますしね」。続けて、大きく変化する世相を藤原さんはどう見ているのか尋ねてみる。

「昨今はコンプライアンスが厳しくなって、ひと昔前はつくれたものや言えたことができなくなってしまったでしょう?もちろん良くなった面も、つまらなくなってしまった面もあると思いますが、僕自身は昔からずっと自由にやっているということは変わっていなくて、誰かに“こうしたほうがいいんじゃない?”なんて、言わないし、言えない。押し付けることなんてできないから、変わっていくなあ、と眺めているだけです。それと、AIなどテクノロジーはどんどん進化していきますが、僕は誰かと一緒に想像しながら会話したり、楽しんだりするほうがやっぱり好きですね」

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そんな藤原さんの言葉に表れる気配のようなものは、展示されている彼の写真からも感じ取ることできるだろう。藤原さんが何かを見つめる時の距離感。次の瞬間には変化してしまうものを切り取るその一瞬間。「じっと絵を描くのも面白いけど、あちこち歩いて行って、さっと撮って、アーカイブみたいに残っていく。写真にはその面白さがありますよね」

最後に、今回のインタヴューでのエピソードを一つ。余談で「藤原さんはインスタで、スマホで撮った写真を気さくに投稿されていて、見るのが楽しみ」だと伝えると、「良いところを切り取って残すこともできれば、悪いところを切り取って見せないこともできますからね」との答えが。意図はしていないとのことだが、展覧会のタイトルにある“切り取る”という言葉には、藤原さんがなぜ写真を撮り続けているのか、その深淵が映っているようにも思える。

タイトル

ambnt 旅、仕事、環境、を切り取る

会期

2024年4月12日(金)~7月28日(日)

会場

ライカギャラリー表参道(東京都渋谷区神宮前5-16-15ライカ表参道店2階)

時間

11:00〜19:00

休館日

月曜日

料金

無料

URL

https://leica-camera.com/ja-JP/event/leica-gallery-omotesando/hiroshi-fujiwara

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