31 May 2025

落合陽一ラボ10周年記念展開催中!”AI時代残るアーティストは良いものが分かる人”

31 May 2025

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落合陽一ラボ10周年記念展開催中!”AI時代残るアーティストは良いものが分かる人” | 250528_IMA_452

東京・六本木のAXISギャラリーにて6月2日まで落合陽一主宰による筑波大学デジタルネイチャー研究室の設立10周年記念展「シンギュラってコンヴィヴィ」が開催されている。2010年代からのテクノロジーの発展を辿れる展示だ。

撮影=大久保歩
取材・文=IMA

本展では、これまで同研究室が10年にわたり取り組んできたポストユビキタス社会における計算機自然(デジタルネイチャー)の探究と、テクノロジーと身体、社会との関係性を問い直す作品群を一堂に展示。AI、メディアアート、音、身体、自然、ロボティクス、人新世といったテーマを横断した、学生たちによる研究と表現の成果が並ぶ。

展示は、4章に分けられる。「第1章 デジタルネイチャーの10年」では落合研究室の10年を社会の出来事と共に年表として可視化。落合らしいテキストがAIで自動生成されるAIおみくじ「シンギュラみくじ」やAI生成された物理学者リチャード・フィリップス・ファインマンの映像が話す「ファインマン」なども展示。デジタルネイチャーと最初に言い出したのはファインマンだという。「自然のシミュレーションしたいのなら自然をコンピューターにするしかない」という発言を残している。

第1章 デジタルネイチャーの10年

第1章 デジタルネイチャーの10年

第1章の展示「ファインマン」

「第2章 脱人間中心の系譜」からはラボの風景となる。研究室が発表してきた論文や作品を展示。会期中は学生が常駐し、説明してくれる。人と対話しながら展示を読み解ける。御朱印をAIで読み込みオリジナル生成できる作品「御朱印2.0」やAIで服をデザインした「Deep Wear」などが並ぶ。御朱印のデータセットは落合研究室に最もそろっているという。「趣味が高じて出てくるわけのわからないものが何かを生む」と落合。

「第3章 マタギドライブとヌルの旅」では学生たちが思い思いに研究物と、研究室にあった物を雑多に持ち込み展覧。ゴキブリが書いた般若心経や写真の研究、視覚障害者用のボクシングエクササイズなどなど。カオスな空間が続いている。


第2章 脱人間中心の系譜

第2章の展示「御朱印2.0」

第3章 マタギドライブとヌルの旅

第3章のゴキブリが書いた般若心経

「第4章 ヌルのタメノモナドロジー」は3章までとは場所を移し、AXISビル地下1階に展示。落合が2011年、まだ学生だった頃につくった作品で、「今回学生の展示と一緒にするといいかと思った」(落合)とのこと。シャボン玉を用いたインスタレーションで宇宙空間のような暗闇の中にシャボン玉が幻想的に浮遊する。

展示については落合は次のように話す。

「研究対象は、今あるものが計算機によってどう発展するのかというデジタルネイチャーの文脈に乗れば何でもOK。普段整然とした展示を行っているAXISギャラリーにアンチテーゼとして、ぐちゃぐちゃと研究室のものを持ってきて展示しました。AIが流行した後に人類臭さが残るといいなと。通常卒展だと作りたくて作ったものを見せたくて見せるんですが、我々は作っているその場で何を考えていたか、動態的なものをそのまま置いて見せたかった。ヴェネチアビエンナーレを見ていてもそういった展示が多かったので、研究室の中身をそのまま持ってきました」

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第4章 ヌルのタメノモナドロジー

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2010年代からテクノロジーの発展が目覚ましいが、時代を先導してきた落合の研究室ではその変遷をたどることができる。

「VR、デジタルファブリケーション、AIなどの研究をやってきました。今流行っているAIは2016年から生成AI を研究しています。2010年代はメタの隆盛、IoTなどの発展でVR、デジタルファブリケーションがAIより先に来ると思われていたのが、AIの成長の方が早くなり、成長が逆転してしまいました。AIが賢くなり、発展が速く、AIを使って研究するのが普通になってしまった。人が体を使うことや趣味をAIが学問に変えていくようになる。そこを研究室の展示をやっていて感じられると思います。一番面白いところです」

メディアアーティストでもある落合。今後、アートの未来はどうなると考えているのか?

「AIによりアーティストはなんでも作れるようになりました。センスの良い人が残っていくと思います。今まで技術がなくて実際には作れなくても、何が良いのかわかる人の残るでしょう。例えばお酒の杜氏は実際にはお酒を造っているわけではなく、良いお酒が分かる人です。実際にお酒造っているのは酵母などですから。なので、どんな音楽が良いか、どんな小説が面白いか、をしっかり選別できるセンスの良い人がアーティストとして残ると思います」

エントランス右手の壁面には10年間の研究室のスナップが一面に貼られている。落合と学生の信頼関係が伝わってきてほのぼのさせられる。

6月2日13:00~15:00には慶應義塾大学環境情報学部教授の安宅和人の落合のトークイベントを実施。最終日なので展示を見がてら聞きに行くことをおススメする。

タイトル

シンギュラってコンヴィヴィ:ポストユビキタスからデジタルネイチャーの10年,計算機自然の森で踊れ,さよならホモサピエンス

場所

AXISギャラリー(東京都港区六本木5-17-1 AXISビル4F)

会期

5月28日(水)〜 6月2日(月)

時間

10:00~19:00(最終日15:00まで)

料金

無料

URL

https://digitalnature.slis.tsukuba.ac.jp/2025/03/lab-exhibition-2025/

 

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