7 March 2025

鶴田真由インタビュー“カメラから、奥深く、神秘まで” 森岡書店で3/18より写真展

7 March 2025

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鶴田真由インタビュー“カメラから、奥深く、神秘まで” 森岡書店で3/18より写真展 | 250204_IMA_0180 のコピー

映画、舞台そしてテレビで、俳優として活躍する鶴田真由。彼女はまた、数々の写真展や写真集を手がけてきた。2024年9月には東京・銀座の森岡書店にて、「織詩-Ori Uta」と題した展示を実施。鶴田による蓮の花の写真と詩に、調香師の沙里が手がけた香りが組み合わされた同展は、写真を見る行為を超えた、複合的な体験を訪れる者にもたらしていた。そしてその続編となる展示が、2025年3月18日より森岡書店にて行われる。鶴田と写真との関わりを聞いた。

ポートレート撮影=郭勇志
取材・文=菅原幸裕

旅から写真に魅せられて

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2024年9月、森岡書店で行った展示風景

「沙里さんと共同のプロジェクトとして、昨年は蓮(の写真や詩)と香り、ということで展示を行なったのですが、3月の展示はその香りを取る過程を写真に収めています」(鶴田)

取材時はまさにプロジェクト進行中といった様子で、旅先から送られてきた沙里のメッセージに新たな展開を予感し、心躍る様子を見せていたのが印象的だった。

大学時代に初めて一眼レフのカメラを手にしたという鶴田。もっともその用途は、友人とのイベントを撮影するなど、個人的な記録の範疇だったという。その後、俳優として活躍する中で、ドキュメンタリーの仕事も多くなり、旅先にカメラを携行するようになった。「次第に旅と写真が私の中で一緒になってきて」、ぐっと写真に近づく機会が訪れる。

「2009年〜2010年ごろに、ロレックスが特別協賛した『日本列島 知恵プロジェクト』で、日本の文化を掘り起こすようなことをやってみないかというお話をいただきました。写真家の高木由利子さんと懇意にしており、由利子さんにこんな企画があるけどご一緒して頂けませんかとお誘いし、さらに動画の音響を担当する方と、3人でチームを組んだんです。私がこんな人に会いたいと企画して、写真撮影は由利子さん、文章は私が書き、動画はみんなで制作したことがすごく楽しくて。そして、由利子さんが撮影した写真を、どんな風に編集し動画(スチールムービー)にしていこうかというやりとりの中で、自分でももっと写真が撮れたらと思ったんです」

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写真集『Silence of India』(赤々舎)


さらにその後、ニコンのTHE GALLERY 企画展として写真家の小林紀晴と一緒にインドを旅し、お互いに写真を撮り文章を書くというプロジェクトを行った。そして『Silence of India』として写真展を開催し、同名の写真集も刊行された。

「その頃から、(写真が)楽しくなってきたんです。自分の視点が明確になってきました。私はこういうところが好きで、こういう世界観で、こういうところに触れたいんだということが、自分の中で次第にクリアになってきました」

花の香りを捉える

そうして行き着いたもののひとつが、花を撮ることだったという。

「周りに華道家や音楽家、調香師など、自然の奥に潜む『美』を見つめながら表現している人が多く、自分も自然をきちんと見るということをしたいと思いました。カメラがあると、普段気づけなかったことを発見できます。視点が変わるというか。例えば望遠やマクロレンズで花を見ていると、めしべってこんな形をしているのかと、どんどん深く入っていくといいますか、そこにある神秘に気づくことができます。それが今は楽しいんだと思います」

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さまざまな花の写真を撮影している鶴田にとっても、蓮は特別という。

「まずは1輪の存在感がすごいということ。そして品格が違う。天上界の花と言われるゆえんがわかるといいますか、世界がその花の内にある感じがあります。それにすごい芳香なんです。早朝に撮影に行くと、蓮池に近づく前から香りがやって来る。甘ったるい香りが強烈で、ちょっとクラクラする感じ。近づいて嗅ぐと、いい香りではありますが、少し臭みも感じます。ミルキーな、生臭い印象です。それがおしべの香りだというのは、今回わかったのですが」

2025年3月の展示で披露される作品

2025年3月の展示で披露される作品

花から香りを抽出する過程を撮影した写真で構成される次回の展示。それは変化や遷移を表現することもでもあると、鶴田は説明する。

「バラバラにしたフレッシュな花びらを、溶剤が入った瓶につけます。そうすると花びらにある生気というか香りの成分が、全部その溶剤に移行していくんです。その過程を経て、もう色も抜けてしまった花びらたち。それはそれですごく美しいし、昇華している。花の生気が液体に移り、それが香りになるという、その循環を写真で表現できたらいいなと思っていて」

さらに、この循環ということは、鶴田の表現自体とも密接に関わっているとも。

「沙里さんの香りづくりの工程を撮った写真に、撮影の過程で着想した言葉をつけて、沙里さんに渡す。それらから沙里さんが香りを調合してくれる。こうした、行って帰ってみたいなやり取りの中で、この香りはどう思うとか、どの写真がいいかとか、お互いのやっていることがだんだん絡み合ってくる。その境界線がなくなってくるのが楽しい。沙里さんとは見ているところや感じていることが近いので、一緒にいるとより深めていけるのだと思います」

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そしてカメラ、写真に関して、次のように言葉を継いだ。

「たぶん写真は、私にとってツールなんです。今は写真を軸としたセッションが楽しい。カメラがあることによって、より奥深くを見られる、理解できることに、面白さを感じているのだと思います」

今回の森岡書店での展示の後には、上海のSIGMAのギャラリーで6月27日~8月17日の期間蓮の写真の展示を行う。また10月4日から19日まで、京都・光明院にて、沙里との新たなプロジェクトの展示も予定されている。

「光明院には、波心庭という、重森三玲が設計した庭があって、静かで、気持ちがいいんです。この空間と、禅寺での展示ということもあって、ここではすべて水の写真にしようと思っています。そして淡路島の沼島で取れる石英や琵琶湖の淡水パールからの香り。淡路島と琵琶湖は陰陽の関係にあるともいわれていて、今回その両方を扱おうということになりました。先日琵琶湖へ撮影に行ったのですが、同じ湖でも場所によって波の様子が全然違っていて、それも写真を撮ることで初めてわかる。そういうことに気づかせてもらえるのは、ありがたいことだと感じています」

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鶴田真由 プロフィール
神奈川県出身。テレビドラマ、映画、舞台などで活躍。代表作はドラマ『妹よ』『徳川慶喜』『サトラレ』、映画『きけ、わだつみの声』『梟の城』『半落ち』など。旅、ドキュメンタリー番組も多数。「Silence fo India」「KATARIBE」などの写真展開催など幅広く活動している。Instagram @mayutsuruta @mayutsuruta_photo
Facebook https://www.facebook.com/mayu.tsuruta.1/
note https://note.com/mayutsuruta

タイトル

花織

会期

3月18日(火)~3月23日(日)

場所

森岡書店 銀座店(東京都中央区銀座1-28-15 鈴木ビル1階)

時間

13:00~19:00

休み

無し

入場料

無料

URL

https://www.office-mighty.com/mayutsuruta

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