8 August 2026

写真が生まれた「後」を歩く──浅間国際フォトフェスティバル2026 PHOTO MIYOTA レポート

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長野県

8 August 2026

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写真が生まれた「後」を歩く──浅間国際フォトフェスティバル2026 PHOTO MIYOTA レポート | 写真が生まれた「後」を歩く──浅間国際フォトフェスティバル2026 PHOTO MIYOTA レポート

浅間国際フォトフェスティバル2026 PHOTO MIYOTA(以下、PHOTO MIYOTA)が、近年移住地としても人気が高い長野県御代田町で開催されている。国内外の全23組のアーティストによる、約300点の作品を五感で楽しめる鑑賞体験が目白押しだ。「After the Image」をテーマに掲げた今回、鑑賞しながらイメージのとらえ方が変わっていく体験とは? IMA編集部によるオンラインガイドツアーで会場をレポートする。

撮影=カクユウシ
取材・文=IMA編集部

自然の中で写真を体験する

PHOTO MIYOTAは、浅間山麓の地域を舞台に2018年よりスタートし、今年で7回目を迎えた。今回のテーマは「After the Image|イメージのその後」。写真は共有され、記憶され、忘れられ、時に誤読されながら、撮影されたその「後」の時間の中で、意味を変え、増幅し、更新され続ける。そうしたイメージが引き起こす感情や記憶の連鎖や、社会的な影響、時間を超えた再解釈による人々の意識の変化に着目する。

PHOTO MIYOTAの舞台となる御代田町は、都内からは公共交通機関で最短90分の好アクセス。メイン会場のMMoP(モップ)は今年、飲食店などの新店舗がオープンして話題に富む複合施設だ。会場入口では、ヘンリエッテ・サブロー・エベセンの作品を起用したメインヴィジュアルが出迎えてくれる。

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無料で鑑賞できるエリアも

チケットを一度購入すると会期中は何度でも入場でき、今年は一部エリアが無料で鑑賞できる。そんな無料エリアのひとつ目は、ARCHIVESの〈Vanitas🥺〉。古典的な絵画かと思いきや、目を凝らしてみると現実には存在しない物をAIが生成した架空のイメージだ。伝統的な絵画様式を、新しい技術によって現代の価値観を映し出すイメージに読み替えてみせる、AIアートユニットの作品である。

パーゴラに吹き抜ける風にそよそよとゆらめくのは、石橋英之の〈Trails〉。木々がおぼろげに浮かび上がるような作品は、数百枚の写真を森の中を歩いて撮影し、GPS情報をもとに重ね合わせたもの。「撮影された写真」と「撮影という体験」を一つのイメージにすることで、写真は風景を超え、時間の重なりとして立ち現れる。

ARCHIVES, Vanitas🥺, 2023

石橋英之, Trails, 2020

MMoPの中心に位置する御代田写真美術館のファサードには、ヘンリエッテ・サブロー・エベセンの〈Growing Up〉シリーズが並ぶ。父親がエベセンを撮影した家族アルバムの写真と、エベセン自身が撮影した写真のコラージュにより、大人になった「現在地」から、父の視点を含む幼少期の記憶を見つめ直す作品だ。

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ヘンリエッテ・サブロー・エベセン Growing Up, 2017-

自然光が降り注ぐ美術館内で6組が展示

美術館に入ってすぐ正面にあるヨーガン・アクセルバルの〈Most likely the flames will destroy themselves(火は火みずからを滅ぼすだろう )〉は、人間の創造が、発展と破壊の双方を生み出す危うさをテーマにしている。花火の鮮やかな爆発が散っていく瞬間をクローズアップでとらえた写真の間で、表情の見えない人物たちは、喜んでいるのか、悲しんでいるのか。思い出を彩る夏の風物詩にも、美しさと危うさが共存することに気づくと、花火の景色はこれまでとは少し違って見えてくるかもしれない。

次は、一階の左手から回ってみよう。Aphicの〈After Walker Evans 2〉は、モニタの上に二枚一組の写真が並んでいる。実はこの二枚のうち一枚はAIが生成し、もう一枚は20世紀のアメリカ写真を代表するウォーカー・エヴァンスが撮影したものだ。これまで、他者の作品を自らの作品として提示するアプロプリエイションの手法で、「誰が作者なのか」「オリジナルとは何か」を問う題材となってきたエヴァンスの作品は、AI時代においても、その問いをあらためて浮かび上がらせる。

奥にかかる大きな2つの幕とその下には、IMA Vol.45にも掲載しているタイヨ・オノラト&ニコ・クレブスの〈Water Column〉。作品制作は「地球温暖化が進んだ将来、人間が海底で暮らすようになったときに芸術はどのように生まれるのか」という問いから始まった。アフリカ東北部とアラビア半島に挟まれた紅海の施設で研究者たちが取り組んだ共同作業では、実験室、サンゴの実験、水中機器、潜水艇、そして見慣れない海洋生物たちに出会ったという。水中と陸上とでは、光、色彩、重力、視界などの要素が大きく異なる。地上では生まれない現象が、見慣れた写真の枠組みを解き放ち、未知のイメージを立ち上げていく。

さらに右手には、極北の自然と、そこで暮らしを営む人々の姿をとらえたマリア・グルズデヴァの〈LUORAWETLAN〉。氷に閉ざされた荒涼とした世界でも、自然を人間が支配する世界でもなく、自然と文明が矛盾なく共存する風景を、遥か遠くの辺境から温かく届けてくれる。

ヨーガン・アクセルバル, Most likely the flames will destroy themselves(火は火みずからを滅ぼすだろう ), 2024

Aphic, After Walker Evans 2, 2024

タイヨ・オノラト&ニコ・クレブス, Water Column, 2024

マリア・グルズデヴァ, LUORAWETLAN, 2020-

二階では、同じくIMA Vol.45に掲載したラファエル・ダラポルタの代表作〈Antipersonnel(対人地雷)〉を展示。美しくライティングされた対人地雷の写真には、それぞれの型や製造に関する情報が添えられている。写真も言葉も惨事を直接語ることはない。しかし、説明を読んだ後にもう一度写真を見ると、何も変わらないはずのイメージがまったく違って見えてくる。そこにあるのは兵器という「物」である以上に、終わることのない争いの歴史だ。見る者の認識は静かに、しかし決定的に変わっていく。

美術館内を俯瞰し、作品同士のあわいを感じながら対岸へと進んでいくと、ルス・ヴァン・ビークによる〈Lazybones nr. 21〉にたどり着く。古い本や雑誌、印刷物からイメージを収集し、切り抜き、組み替えることで、もともとの役割を終えたイメージたちが星座のように結びつき、新たな可能性を生み出している。

ラファエル・ダラポルタ, Antipersonnel, 2004

ルス・ヴァン・ビーク, Lazybones nr. 21, 2026


浅間山を望みながらイメージの見え方が変わっていく

再び屋外に出て、深呼吸をしながら、森の中を歩いてみよう。頭上に目を向けると、森本美絵の〈cause〉が視界に飛び込んでくる。3つの場所の高い視点から見下ろした風景に、明確な主役は存在しない。気になるものから別のものへと視線を移していくうちに、一枚の写真の中に広がる、まだ気づいていなかった世界の奥行きや、もの同士のゆるやかなつながりが見えてくる。

森から視界が開けてくると、遠藤文香の〈Kamuy Mosir〉が待っている。コロナ禍に自然や動物との出会いを通して、世界とのつながりを見つめ直したシリーズだ。人工の光に照らされた動物や木々は、現実の風景でありながら、どこか神秘的な気配を帯びている。そのイメージは自然と人の境界を静かに揺らしながら、世界と出会い直す感覚を呼び起こす。

cause, 2007/2026

Kamuy Mosir, 2021-

浅間山を望むゆるやかな岡を登ると、リン・チーペン aka. No.223の〈Flowers and Fruits〉が現れた。鮮やかに色づく花、みずみずしい果実、それらの自然と軽やかに戯れる若者たち。その光景は彼らが謳歌する生の一部であり、象徴として描かれる。今もなお表現の規制が厳しいとされる中国で、この作品がどのように受け継がれ、変化していくのか。開放的な森の中で、写真に写る瞬間の先へと思考が広がっていく。

223の作品を見た後に振り返ると、キングコングやゴジラ、エイリアン、クラーケンが登場──これらはSF映画のワンシーンではなく、古い民族誌写真に、映画や広告、怪獣、ゲームなど現代のイメージを大胆にコラージュした、デニウソン・バニワの〈Colonial Fictions〉だ。一見ユーモラスなコラージュは、笑いを入口としながら、植民地主義がいまも私たちのものの見方や価値観のなかに根深く残っていることを露わにする。

リン・チーペン aka. No.223, Flowers and Fruits, 2010-2023

デニウソン・バニワ, Colonial Fictions, 2021

一本の柱から葉のようにフレーム連なるこちらは、PHOTO MIYOTAではお馴染み。今年は大野真人の2シリーズ〈SEPARATE HIDDEN RULES〉〈Karyolysis〉から30点を展示している。色も形も多様な生物と人工物の組み合わせ。予測不能に動く生命は単なる「素材」ではなくなり、人工物と強引に並べられることで、それぞれの「自然」が分断されていく。「不」自然な場に置かれた生命は、その存在をいっそう鮮やかに際立たせる。

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大野真人, SEPARATE HIDDEN RULES, 2012-2022 / Karyolysis, 2018-2023

美術館隣の広場までやってきた。大きな建物の前に、顧剣亨の〈Main Tower〉が約10メートルにわたって広がっている。どこかの高層ビルの上から見下ろした景色のようだが、いくつかの視点が重なり合った不思議な写真だ。自分がどこに立ち、何を見ているのかという知覚と感覚が、眺めれば眺めるほど揺さぶられる。複数の写真をピクセル単位で「編み込む」ことで生まれた作品を、寄ったり、引いたり、歩いたりしながら、画面の変化を味わってみてほしい。

その向かいで、開いたアルバムのような屏風状の展示はパット・マーティンの〈Family Album〉。幼い頃に家庭が崩壊し、家族の思い出そのものが乏しかったマーティンは、母や兄弟、祖父母らを撮影することで、新たな家族のアルバムを自らの手で編み直していった。失われた記憶の空白と向き合いながら、新たな家族の物語を紡ぐその行為は、写真が記憶をつくり続ける営みであることを優しく物語る。

顧剣亨, Main Tower, 2026

パット・マーティン Family Album, 2016-2020

メイン会場の展示も終盤。美術館の裏手の道で気持ちよさそうに風になびくのは、ヨーガン・アクセルバルの〈Looking Up〉。コロナ禍をきっかけに始まり、自身が癌の宣告を受けたことで展開していったシリーズだ。東京の空を飛行機が横切る景色は、ソラリゼーション(モノクロの階調反転)によって現実から離れた色彩となり、夢や記憶のような世界へ姿を変える。病をきっかけに変化した世界の見え方が、写真として結実した作品だ。タイトルには、「見上げる」と「状況が好転する」の2つの意味が込められている。道沿いに吊るされた作品をくぐりながら空を見上げ、刻一刻と変わる御代田の空との響き合いを楽しんで。

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ヨーガン・アクセルバル Looking Up, 2022

サテライト会場も見逃せない

MMoP隣の御代田町役場では、白井晴幸が〈Panorama〉シリーズからPHOTO MIYOTAに合わせて御代田で滞在制作を行った新作を初披露。御代田町民の多くが利用する御代田駅の日常を、自作の特殊なカメラで撮影した。目に見える瞬間ではなく時間の流れそのものが写し出され、見慣れた通勤・通学の風景に歪みや偶然をまとった新たなイメージが生まれる。なお、8月10日(月)からは役場内で新作を撮影したときの動画なども見ることができる。

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白井晴幸 Panorama, 2026

サテライト会場は御代田町役場の他、エコールみよた、Gokalab(ゴカラボ)、そしてIMA nextの受賞作品を展示している西軽井沢第二公民館の4箇所。御代田町を堪能しながら、合わせて訪れてみてほしい。

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タイトル

浅間国際フォトフェスティバル2026 PHOTO MIYOTA

場所

MMoP(長野県北佐久郡御代田町大字馬瀬口1794-1)
他、御代田町役場、まなびの館エコールみよた、西軽井沢第二公民館、Gokalab

会期

2026年8月1日(土)~9月27日(日)

時間

10:00~17:00(最終入場16:30)

休み

火曜日(8月11日、9月22日はオープン)

料金

1,500円(会期中何度でも利用可、小学生以下無料)
中学生・高校生・障害者手帳をお持ちの方は割引あり/一部無料エリアあり

URL

https://asamaphotofes.jp/ 

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