沖縄県北部、通称やんばる地方で行われる「やんばるアートフェスティバル」がスタートした。2月24日まで、大宜味村立旧塩屋小学校をメイン会場に名護市、本部町、国頭村、東村などでアート作品展示やワークショップ、関連イベントなどが実施される。
沖縄と言えば東松照明の終の住処であり、また石川真生や伊波リンダ、石川竜一など今活躍している写真家を輩出している地のためか同フェスでも写真展が充実。IMA読者必見の写真の展示を紹介する。
取材・文=IMA
目次
8回目となるやんばるアートフェスティバル
やんばるアートフェスティバルは今回で8回目。テーマは「山原本然(やんばるほんぜん)」だ。「本然」とは「本来あるべき元々の姿」の意味。やんばるがその本然の姿を保ち続ける限り、激動の現代においてどのような時代が訪れても大丈夫という意志を込めた。総合ディレクターは仲程長治。石垣島出身で沖縄をテーマに写真や映像などを制作。アーティストとして自身も出展している。
今回から「YAFキュラトリアル・コミッティ」が始動。エキシビション部門ディレクターの金島隆弘に加え、ゲルベン・シュレマー、林怡華、町田恵美、吉田山ら4名のキュレーターが参加し、県外、海外から幅広くアーティストを選定。多様な作品が披露されている。
土地に根差した展示がやんばる随所で行われるやんばるアートフェスでは写真展も沖縄と関係している。
歩いて巡る屋外写真展 塩屋湾・ウンガミ/koou
アートコレクティブkoouが出展する「歩いて巡る屋外写真展 塩屋湾・ウンガミ」は、大宜味村立旧塩屋小学校よりほど近い区画にある。塩屋売店、民家など4か所のファサードや壁に写真が掲示される歩いて楽しむ作品だ。近所の住民と対話しつつ展示を進めていったという。海浜のこの場所は約500年の歴史がある伝統行事「ウンガミ(海神祭)」が行われてきた特別の場。この土地の記憶を伝える名護博物館所蔵の平良孝七の作品はモノクロの力強さに溢れている。
わたしのブナガヤ/浅田政志
ブナガヤとは現地の伝承にある精霊や妖怪のことだ。やんばるの大自然に身を投じると本当に存在していると感じる。ブナガヤは小さな体で赤い髪をしているという。しかも相撲が好きらしい。ちょっと河童のようでもある。出会うと幸せになるというのだが、浅田はまだ会ったことがないとのことで、今回ブナガヤに扮して写真が撮れるインスタレーションを出展した。概要は観光地によくある記念撮影用の看板、顔はめパネルのようなものだ。赤髪のかつらを被りブナガヤになりきり、スマホを台に設置し、セットでポーズ。浅田は撮るという行為を作品にしたという。2月1~2日には浅田が来場し、撮影イベントが開かれる(2000円)。
たましいの通り道・やいまの壺パナリ/片桐功敦
キョウトグラフィーにも出展していた華道家の片桐は、八重山の焼き物「パナリ焼」の壺を用いた写真を披露。パナリ焼はもともと水や食べ物を貯蔵するための土器。底に穴が開いてるものは骨壺として使用されていた。生活の道具だが、現在は使用されていない。ほとんど市場には出回っていないため片桐は個人蔵のものを借り、西表島でその土地に割く植物を生け撮影したという。生け花の写真は島の空気を存分に匂わせている。2月23~24日には片桐が来場し、撮影イベントが開催される(3000円)。
カタチをあたえる。/KYOTARO HAYASHI x Ryu
沖縄を歩いていると良い風が吹いていると感じないだろうか?南国の島だけあって、海風が常に漂ってる感じがする。海が至近の旧塩屋小学校も心地良い風が吹く。作家はここにしかない風を感じ、写真がプリントされたシフォンと音楽で表現。人が通ると揺れ、風が通ると揺れる。風を視覚で聴覚で体験できる展示だ。
Edge Complex/麥生田兵吾
旧塩屋小学校から車で10分ほどの大宜味村喜如嘉保育所の跡地で展示される写真作品だ。麥生田は何かと何かが混ざるところである境界にフォーカスし、沖縄を国としての境界に位置すると捉えた。沖縄の岩をくり抜いた墓が自然と一体化しつつある様を写し、まるで此岸と彼岸の時間の境界を描き出した。麥生田は沖縄南部を巡り、探し、シャッターを切ったという。墓だけでなく、生命の象徴として若者やヤギの三つ子のカットも添えた。生と死の境界も描き出している。
沖縄のアートと滞在を楽しんで
写真の他には、渡辺志桜里やChim↑ Pom from Smappa!Groupらの様々な作品も充実。特に地域に根差した沖縄グラフィックデザイナークラブによる広告、八重山の美術工芸をリサーチするユニット五風十雨による沖縄の職人・池村鍛冶屋の紹介、沖縄の酒泡盛をテーマとした津田道子の「泡盛ラプソディ」などに注目だ。また昨今美術としても注目される工芸を集めた「YAFクラフトマーケット」も立ち寄りたい。沖縄のセレクトショップ「PORTRIVER MARKET」がキュレーターを務め、やんばる地域で活躍する作家や工房を中心に集めた。やちむん(焼き物)、木工、ガラス、アクセサリーなど、多岐にわたる沖縄のクラフト作品が展示・販売され、例年人気のマーケットという。
宿泊は、やんばるのオクマ プライベートビーチ&リゾート、恩納村のBEB5沖縄瀬良垣 by 星野リゾート、那覇のホテル アンテルーム 那覇が展示もしているのでおススメだ。那覇からやんばるへと日をまたいで滞在していくのもいい。点在する展示をやんばるの自然を背景に車で回る。作品のみならず鑑賞行為も沖縄を直に感じるアートフェスだ。ステイをアートに過ごして、沖縄トリップを楽しんでみてはいかがか。この季節の沖縄は涼しく、実はベストシーズンなのだから。
タイトル | やんばるアートフェスティバル 2024-2025 |
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メイン会場 | 大宜味村立旧塩屋小学校11:00~17:00 |
他会場 | 沖縄県本島北部地域の各会場 |
会期 | 2025年1月18日(土)~2月24日(月) |
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