誰もが応募できるオンラインの写真コンテスト「IMA next」第25弾のテーマ「STORY」のグランプリ受賞者が発表された。
IMAプロジェクトが主宰する「IMA next」は、2019年に発足した誰もが応募できるグローバルなオンライン写真コンテスト。毎月国内外の多彩なゲストを審査員に迎え、月ごとにひとつのテーマを掲げ、応募の中から優れた作品を選出し、プラットフォームとして新たな才能の発掘を目的としている。
第25弾テーマ「STORY」のグランプリは、デイヴィット・ネルシシアンの作品「Rooms of Visually Impaired People」。本作は、視覚障害者の生活、感情や感覚をテーマにした、継続的な写真プロジェクト。二枚組の作品は、客観的な写真と周りの空間に対する主観的な認識の両方を示し、世界に対する認識の壁を壊し、それを見ているさまざまな人々に同じ感情を伝えることを目的としている。審査員を務めた世界的に活躍する写真家・米田知子は、現代の写真表現において欠かすことのできない要素である「STORY」をテーマとして選んだ。今回の選評として下記のように述べている。
“視覚障がいの人々が自室の空間を目の見える者に提示する為、記号化させた――彼らは空間とオブジェの関係性やその形象や色彩などを、臭覚、触覚、聴覚などさまざまな視覚以外の全感覚器官を駆使し、内面で豊かに浮かび上がらせている。この逆説的に組み合わされた二枚は、このことを繰り返し提示し、矛盾させ、挑戦する。”
なお、ショートリストにはエンダ・バーク、池田嘉人、和田悟志、浅野大、桃井敦史、クレア・フレンチ、Masato Ninomiya、中村彰宏、バシリス・バシリオ、高野ユリカの10名の作品が選ばれた。公式サイトにはショートリストの選評と受賞作品がそれぞれ掲載されている。
タイトル | |
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審査員 | |
グランプリ | デイヴィット・ネルシシアン「Rooms of Visually Impaired People」 |
ショートリスト | エンダ・バーク「homebound with my parents」 |
URL | https://ima-next.jp/winners/story/rooms-of-visually-impaired-people/ |
▼グランプリ
デイヴィット・ネルシシアン「Rooms of Visually Impaired People」
本作は、視覚障害者の生活、経験や感情を題材に、複数の章に渡って制作してきた現在進行形のプロジェクトの一部である。このシリーズでは、目が見えない方に白紙をわたし、自身の部屋を描くようお願いすることで、客観的に部屋をとらえた写真と個人を囲むスペースの主観的な認識を構成した。特定の世界感の認識に関する理解の壁を乗り越えることで、共有可能な感情をさまざまな鑑賞者に伝える。
デイヴィット・ネルシシアン|Davit Nersisyan
フリーのドキュメンタリー写真家。エレバン(アルメニア)とニューヨーク(アメリカ)を拠点に活動している。International Center of Photographyに在学中。Mirzoyan photo-book Libraryで司書としてスタートしたキャリア。そこで多くの時間を、理論を読むことに費やし、長期的な写真プロジェクトを実践してきた。ネルシシャンが扱う主なテーマは、ニュースからはみ出した人々の物語である。撮影する人とのコラボレーションで作り上げられるパーソナルなストーリーを通して、彼は鑑賞者に、報じられずに忘れさられている、より重要なトピックを提示する。現在進行中の視覚障害者に関する作品は、複数の章からなる写真プロジェクトで、テキストやビデオなどの異なるメディアも用いている。当プロジェクトの第一章は、2018年にMirzoyan photo-book Libraryで展示された。