関⼼対象の⼊念な調査ののち、歴史上の⼈物の記憶、あるいは歴史的な記憶 が強く残る場所を訪れ、写真にとどめることによりその真実に迫っていく独特の⼿法で作品を発表してきた、米田知子の個展「アルベール・カミュとの対話」がシュウゴアーツで開催される。
アルベール・カミュ(1913~1960)は、仏領アルジェリアに⽣まれ、20世紀の激動の時代の狭間に⽣きた。彼は著作を通じて、⼈間が遭遇する不条理の宿命を直視し、真の反抗や正義の意味、⼈間の共存とは何かを問い続けた。⼈間は平等の光と⾃然の恩恵を受け、⾃由を享受すべく存在し、暴⼒と権威を排除した⽣の尊厳を訴え、また苦悩する。
私はカミュが息づき、創造と葛藤の地となった⼆つの故郷――アルジェリアとフランスを訪ね、⼈々との対話を通じて、先の時代の出来事と今再び世界を包み込む世界の⿊い影を作品で応答し、普遍的な輝く愛を問い、⼈間――その“存在”のことを考える糧にできればと思った。
制作のきっかけにはカミュの『犠牲者でもなく執⾏⼈でもなく』というエッセイがある。これは戦後まもなく1946年にカミュが編集⻑を務める仏レジスタンス紙『コンバ』に数⽇間に渡り掲載された。原爆投下に象徴された科学進歩による⼈間の⽣の否定と(地球規模の)未来(へ)の破壊、⽬的達成にはいかなる⼿段をも正当化させるイデオロギーと暴⼒への批判――「直接的にも間接的にも――あなたは殺されたいですか、または、殺⼈者になりたいですか」もしいずれかの回答に”否”であるのならば、命を剥奪し沈黙を強いる世界に疑問を持ち”否”と⾔えるべきだとカミュは訴える。カミュが⽣きた時代、また時代を経て繰り返されてきた暴⼒と戦いは、われわれをより豊かな、平和の時代と導いてきたのであろうか。⼈類のこの果てしない課題は現在の混沌した世界状況の中、カミュの作品と⽣き⽅を軸に「⼈間の存在と愛」の根本的意味を考えることの重⼤さを感じ、作品を通じて、幅広く皆さんと対話が出来ればと思う。
―米田知子
米田知子, A statue in a pond and sky seen through palm trees. Botanical Garden of Hamma, Algiers, Algeria, 2017, Set of ten platinum and palladium prints with box
本展覧会の作品は国際交流基金/パリ日本文化会館における「『トランスフィア(超域)』#5 『米田知子 アルベール・カミュとの対話』」展のために制作されました。
タイトル | 「アルべール・カミュとの対話」 |
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会期 | 2019年4月13日(土)~5月25日(土) |
会場 | シュウゴアーツ(東京都) |
時間 | 11:00~19:00 |
休廊日 | 日月曜・祝日および展示替え期間 |
イベント | オープニングパーティー:4⽉13⽇(土)18:00~ |
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