渡部敏哉「Somewhere not Here」展が中目黒・POETIC SCAPEで12月7日(土)まで開催中。POETIC SCAPEでは2017年にも同シリーズを展示。今回はその新作、約20点がお披露目される。
2年前の個展で渡部は、自らの意識の底にあるイメージを写真で掬い上げる試みとして、現実感が消えた「ここではない、どこか別の場所」を暗示する作品を発表した。今回の展示でもその基本的姿勢は変わらないものの、作品にはわずかな変化が認められる。
これまでの「現実→非現実」という、ある方向性を持った作品に加え、見つめれば見つめるほど被写体の意味が目の前で解体されてゆくような作品が増えている昨今。このビジュアルのゲシュタルト崩壊ともいうべき作品には、掬い上げたと思った瞬間に指の隙間からこぼれ落ちてゆく、形を成さない液体のような性質が感じられるだろう。
渡部は、自分が言葉を核に制作することが苦手だと話している。しかしこれは単純に感覚で制作するという以上の意味を持っている。
単に一つの感情で終わらないようなイメージ(中略)写真に写っているモチーフからはちょっと距離がある別な何か
―本展に寄せた言葉より
渡部は作品の輪郭を言語によって明確に形成するのではなく、その周りに漂うノイズをも取り込み、安らぎと不安感、美しさと恐れなど、複数の感覚が複雑に絡み合う作品を制作してきた。2年間の時を経てさらに密度と流動性が増した「ここではない、どこか」の行き着く先は、我々の意識の底なのかもしれない。
タイトル | 「Somewhere not Here」 |
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会期 | 2019年11月2日(土)~12月7日(土) |
会場 | POETIC SCAPE(東京都) |
時間 | 13:00~19:00 |
休館日 | 日月火曜 |
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