2020年のパンデミック以降に撮影された作品群、
田凱写真展「取るに足らないくもの力学」

田凱写真展「取るに足らないくもの力学」が、8月19日（木）からコミュニケーションギャラリーふげん社で開催される。

田凱（デンガイ）は中国・天津市生まれ、現在東京を拠点に活動している写真家。2006年に来日し、日本写真芸術専門学校フォトクリティックゼミを卒業後、2018年に第19回写真「1_WALL」グランプリを受賞。受賞作「生きてそこにいて」は、かつて油田の町として栄えた故郷が産業の衰退と主に廃れていく光景と、そこで生活する人物を大判カメラで撮影した作品。限定的な都市の記録に止まらない、普遍的な故郷の風景として昇華された本作は、芸術性の高いドキュメンタリーとして高く評価された。

本展では、2020年のパンデミック以降に撮影された写真を中心に約20点を展示。アフターコロナでは、個人間の物理的、精神的な隔たりが露わになった。田の写真に写るものは、友人のポートレイト、中性的なヌード写真、街中で遭遇した断片的な都市風景、登山道の森の中など、さまざま。それぞれの写真に宿る同質性や小さなずれから、鑑賞者が自由に想像し、思考を広げるそのプロセスが、自己と他者の距離を縮めるのではないかと田はいう。

田凱が提案するのは、二項対立のはざまにある、事象の細部に目を凝らし観察する行為。カテゴライズされる前の「取るに足らない」世界の断片に丹念に目を配る田凱の所作は、閉塞気味のこの世の中で、私たちの心に爽やかな風をもたらしてくれることだろう。