ニュイ・ブランシュKYOTO 2021のプログラムの一環である、石橋英之の個展「潜在」が五条坂京焼登り窯で10月17日(日)まで開催中。
ニュイ・ブランシュKYOTOとは、京都市の姉妹都市であるパリ市発祥のニュイ・ブランシュ(白夜祭)に着想を得た、京都市とアンスティチュ・フランセ関西が毎秋開催する現代アートの祭典。11年目となる今年はテーマを「HORIZON(展望)」とし、ビジュアルアートの展示やパフォーマンス、映像上映など、さまざまなプログラムが京都市内で行われる。
本展は、ニュイ・ブランシュ KYOTOとフランス北部トゥルコワン市のル・フレノワ国立現代アートスタジオとのコラボレーション。本展の会場である五条坂京焼登り窯は、112年の歴史を持つ京都市内最大規模の元藤平陶芸登り窯で、東山区の五条坂に6基残る窯の内、唯一当時の姿のまま保存されている産業遺産である。1909年の築造以来、大量の陶磁器を海外に向けて輸出していたが、1968年に大気汚染防止法が施行され、五条坂の職人や住人にとって伝統産業の誇りの象徴だった松煙は、大気汚染のシンボルと見なされるようになったという。
初期写真史に関心を抱く石橋は、さまざまな古典技法やPhotoshopなどによる現代の技術を組み合わせ、ビンテージのポストカードやファウンドフォトなど既存の写真を加工し、新たなストーリーを生み出すことで知られる。今回の展覧会では、残された五条坂京焼登り窯に関する文献を調べ、地元の住人や以前登り窯で働いていた職人の話を聞き、歴史の断片をかき集め、それらを異なる時代や視点から再構築している。例えば、新作のひとつである「解体された煙突」は、近年耐震性が不十分であることを理由に一部壊された煙突の、かつての姿を復元するため、解体の際に排出された煉瓦の破片を用いて制作されたもの。さまざまな時代に撮られ、まわりの景色が異なる煙突の写真を重ね合わせ、時の流れを表す一枚のイメージを生成。そのイメージをデジタルネガに変換した後、煉瓦破片を細かく砕いた顔料を混合した感光液を塗布し、朝に太陽が登るとともに露光をはじめ、日没まで合計6回の露光を繰り返して最終的なイメージが作られている。
残された痕跡との出会いを通して、写真と痕跡、そして記憶の関係を探求するインスタレーション作品。現在と過去、実在と不在、確定と不確定の間を行き来しながら、現在の記憶を浮かび上がらせる。実際の登り窯の中で、その場所が持つ過去を、石橋が独自の手法で可視化したイメージを鑑賞できる貴重な機会をお見逃しなく。
タイトル | 「潜在」 |
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会期 | 2021年10月1日(金)~10月17日(日) |
会場 | 五条坂京焼登り窯(京都府) |
時間 | 11:00~18:00 |
休廊日 | 火水曜 |
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