
Martin Margiela, “TOPS & BOTTOMS (Faun / top)”, 2023, composite plaster, 117 x 39 x 39 cm © Martin Margiela. Courtesy of Bernier/Eliades
Photo: “We Document Art”
タカ・イシイギャラリー京都は、4月17日からマルタン・マルジェラの個展を開催する。東京・九段ハウスでの展示とあわせ、日本では初となるマルジェラのアート作品による展覧会となる。本展では2018年から2025年にかけて制作された約14点の近作が紹介される。
ファッションデザイナーとして知られるマルジェラは、2009年にファッション界から退いた後、視覚芸術の領域での活動を本格化させた。彼の制作の根底には一貫して「身体」への関心があり、身体は視覚的なイメージとしての側面と、触覚的な感覚を伴う存在という二つの次元が交差する場として扱われる。作品群は、露見と隠蔽、魅惑と疎外といった相反する要素の緊張関係を通じて、古典彫刻から現代美術に至る身体表象の歴史を再考させるものとなっている。
代表的なシリーズ《Tops & Bottoms》では、ルーヴル美術館に収蔵される大理石彫刻を参照しながら、古典的な裸像を現代の下着の形状で切り出すという手法が用いられる。下着という本来「隠す」ための衣服の機能を反転させることで、身体の内部や不在を露呈させる構造が生まれ、鑑賞者の視線は生きた身体そのものから、物質としての痕跡へと移行する。カーペットやシリコンなどの素材による独特のテクスチャーも、触覚的な想像力を喚起する要素として機能している。
一方、《Barrier Sculpture》では、都市空間で見られるバリケードをモチーフにしながら、それをフェイクファーで覆うことで、日常的な機能を持つオブジェを奇妙で詩的な存在へと変容させている。シュルレアリスムやポップアートと響き合うこのアプローチにおいて、日用品はレディメイドとして再文脈化され、その潜在的な意味が引き出される。
マルジェラの作品に繰り返し現れるもう一つの特徴は「断片化」だ。石のテーブルに置かれた《Black Nail Polish》では、爪の形状を思わせる磁器の焼成用具が並ぶが、そこで生成されるはずの物体は存在しない。また、未組み立てのプラモデルを思わせる《Kit (Black)》は、まだ現れていない完成形を鑑賞者の想像の中に投影させる。こうした不在や沈黙は否定的な空白ではなく、作品を新たな意味の共振へと開く生成的な力として提示される。
| タイトル | マルタン・マルジェラ |
|---|---|
| 場所 | タカ・イシイギャラリー 京都(京都府京都市下京区矢田町123) |
| 会期 | 4月17日(金)~5月16日(土) |
| 時間 | 10:00~17:30 |
| 休み | 日~水曜日、祝日 |
| 料金 | 無料 |
| URL | https://www.takaishiigallery.com/jp/ |
