19 June 2026

パオロ・ロヴェルシの「疑念」が生む写真。MOP財団が大規模個展開催

19 June 2026

AREA

東京

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Web. 'Sara Grace', Paris, 2018

Sara Grace, Paris, 2018. Paolo Roversi

Doubts, Paris 2026 Paolo Roversi for d la Repubblica

Miley Cyrus, Paris 2025 Paolo Roversi

Naomi, Paris 1996 Paolo Roversi

Audrey, Paris 1998 Paolo Roversi

Fading Vivien, New York 2001 Paolo Roversi

スペイン・ア・コルーニャのMOP Foundationにて6月20日から写真家パオロ・ロヴェルシの大規模個展「Doubts」が開催される。本展では代表作に加え、これまで未公開だった写真群も公開され、40年以上にわたって独自の写真表現を築いてきたロヴェルシの創作世界を包括的に紹介する。

ロヴェルシは、現代ファッション写真を代表する存在。『Vogue』や『W Magazine』をはじめとする数々の媒体で活動し、ディオール、コム デ ギャルソン、ヴァレンティノなど世界的なブランドと協働してきた。だが、その作品は単なるファッションイメージにはとどまらない。長時間露光による柔らかなブレ、ポラロイドの実験的な使用、深い闇から立ち上がる光の表現によって、被写体を現実と夢の狭間へと導いてきた。

写真批評家ヴィンス・アレッティは、ロヴェルシの作品について「まさに目の前で形づくられていくように感じられる」と評している。本人は自らを「職人」と呼ぶが、その写真には錬金術にも似た変容のプロセスが宿っている。写真は紙面や壁の上に静止したイメージではなく、今なお呼吸を続ける存在として立ち現れる。

ロヴェルシの制作の舞台は、彼自身が「影の劇場」と呼ぶスタジオにある。そこは日付や季節、時間の感覚から切り離された空間であり、光と影、フラッシュ、ボケ、さらには偶然の事故までもが創作の材料となる。「私の作品のあらゆる進化は偶然から生まれた」と語るように、アクシデントを天からの贈り物として受け入れる姿勢こそが、彼の写真を唯一無二のものにしている。

本展のタイトルである「Doubts(疑念)」は、ロヴェルシの創作哲学を象徴する言葉でもある。彼にとって疑念とは、創造性と想像力への扉を開く契機であり、反対に確信はその扉を閉ざしてしまうものだ。写真は何かを明確に説明するためではなく、むしろ曖昧さや不確かさのなかに身を置くための装置として存在する。

展示空間は、「Theatre(劇場)」「Appearances(外観)」「Shadows(影)」「Doubts(疑念)」「People(人々)」「Presence(存在)」「Grace(優雅さ)」「Beauty(美)」「Fading(消えゆく)」という9つのテーマによって構成される。それらは個別の章であると同時に、静寂や影、物と物のあいだに潜む美を信じ続けてきたロヴェルシの精神世界を立体的に浮かび上がらせるものでもある。

近年、ファッション写真は商業イメージを超えた芸術表現として再評価されている。そのなかでロヴェルシは、アーヴィング・ペンのスタジオ写真の伝統を受け継ぎながら、ロバート・フランクやアウグスト・ザンダー、アーウィン・ブルーメンフェルドの系譜を横断し、写真に詩的な曖昧さと精神性をもたらしてきた。彼が共鳴するジュリア・マーガレット・キャメロンの「写真は鮮明であるときではなく、美しいときに完成する」という言葉は、その実践を端的に表している。

MOP財団による本展は、パオロ・ロヴェルシの作品を回顧するだけでなく、写真がいかにして「疑念」から生まれ、曖昧さのなかに美を見出してきたのかを再考する機会となるだろう。

タイトル

Paolo Roversi: Doubts

場所

MOP Foundation(Av. Porto da Coruña, 15006 A Coruña, Spain)

会期

2026年6月20日(土)〜9月

URL

https://themopfoundation.org/ 

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