カンテレ・フジテレビ系連続ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」主題歌「Presence」や、timelesz の「Summer Ride」を STUTS と共作し、さらに STUTS、YONCE(Suchmos, Hedigan’s)とのMirage Collectiveとして同じくカンテレ・フジテレビ系連続ドラマ「エルピス」主題歌「Mirage」を制作するなど、卓越したソングライティングを発揮してきたシンガーソングライター・butaji。
2021年以来の新アルバム『Thoughts of You』を3月4日にリリースし、写真家・米田知子がジャケットアートワークの写真を手がけた。
2024年に兵庫県立美術館で開催された阪神・淡路大震災 30年企画展「1995 ⇄ 2025 30年目のわたしたち」で、自身と同じ神戸出身の米田の作品と出会い、深い感銘を受けたことからオファー。帰国中だった米田がbutajiが生まれ育った神戸・ひよどり台の団地を訪れ、撮影を行った。
butajiも幼少期に被災を経験。その後、家族は引っ越しを余儀なくされ、父親との関係が離れていくなど、心と現実の両面で震災の影響を受けてきた。本作には、震災30年という時間のなかで自分自身と向き合い続けてきた、その心の風景が詩情としても色濃く映し出されている。

偉大なジャズ・ピアニストでありシンガーでもあったNat King Coleが、ポピュラー・ミュージックを彩っていた時代の音楽。その生命の息吹を感じさせながら、そっと寄り添ってくるような豊かなアレンジメントに、butaji は長く魅了されてきた。
自身のソングライティングに、そうした響きをまとわせた作品を今の時代に残したい。また、あらゆることが早いスピードで可視化されていく現代に、ゆっくりと味わうことのできる音楽を届けたい。そんな想いを共にする音楽家たちと、butajiの音楽を丁寧にかたちにしていった。
その始まりは、2021年に音楽家・荒井優作とのユニットbutasakuとして手がけた、NHKの実験的ショートドラマ『声がききたい。』。登場人物はひとり、相手の声は聞こえない――電話で話す姿だけを10分間映し続けるその作品のために、「自分だったらどんな音楽をつけるだろう」とスケッチを重ねて生まれたのが、アルバムの冒頭を飾る「In silence」。この曲と「Lost Souls」には、柴田聡子や優河らの作品で高い評価を受けてきた岡田拓郎がプロデュースで参加し、現代音楽家・香田悠真がストリングス・アレンジを手がけている。
トラックとbutajiのヴォーカルの相性の良さが際立つ「so far」にはyahyelの篠田ミルが、「Isolated blues」にはMETがトラック・アレンジャーとして参加。アルバムの最後を飾る「remission」は butaji自身がすべてのトラックを手がけ、さらにシンガー・ソングライター壱タカシのピアノの上で歌われる、唯一の弾き語り曲「さようならをいう前に」が、ほかのバンド演奏の楽曲たちと折り重なることで、アルバム全体の時間の流れを作り出す鍵となっている。
三浦透子へ提供した「点灯」も、本作に自然と寄り添う一曲としてセルフ・カバー。ヴォーカル・コーラスには三浦本人も参加している。
誰かを想うこと、記憶を手放さずにいること――その静かな営みが、このアルバムの中に息づいている。
