本書『Snow Cab』は、アメリカ人写真家ショーン・ヴェジェッツィが、2015年にロウアー・マンハッタンの空き店舗で行ったインスタレーションを、自らドキュメントした作品集。
展示された作品は動きのない使い古された空間と交わり、空間は作品本来の居場所となって展示後もそこに残された。本作において作者は、アメリカの軍産複合体の内にある個人とプライバシー、セキュリティおよび可視性が混合したストーリーを展開。Tシャツや床用洗浄剤、像、コアサンプル、冷戦時の配給物、野生生物などが写真作品やテキストと合わさり新たな意味が与えられている。
展示に付随するふたつのテキストの中には、作者が以前より続けているセキュリティ産業に関する調査と、個人的な愛と恐怖の体験とが織り合わさる様子が伺える。展示時期直前に起こったパリの襲撃事件に応じた作品として、本作は事件に対する同情を物質生産という表現で伝える。これは展示品と作者によるテキストの至るところで明らかだが、例えば中傷されるテロリスト、1993年の世界貿易ビル爆破事件、「Pray for Paris」のスローガンや水責めなど、吊るされたTシャツのコレクションが最もそれを表現している。これらの服に新たに意味を持たせることで、作者は地政学的なテロから商品と利益という概念を浮かび上がらせ、同時に人間と近代の統制された世界で生きる我々の反応や体験にある脆弱性について繊細かつ明確に伝えようとしている。
タイトル | 『Snow Cab』 |
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出版社 | |
価格 | 4,000円+tax |
発行年 | 2016年 |
仕様 | ソフトカバー/175mm×220mm/カラー/88ページ |
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