アメリカ人フォトグラファー、ロン・ジュードの作品集『VITREOUS CHINA』のセカンドエディションがLIBRARYMANから刊行された。本書の刊行にあたり、初版はソフトカバーだった仕様がハードカバーへと変更されている。
主にアメリカ中西部に位置する軽工業地帯の都市を記録した写真のアーカイブで構成されている本作は、工業そのものの詳細というよりは、巨大トレーラー用駐車場や通用口など、一見あまり重要でないような周辺の風景を写し出している。
ヴィトリアス・チャイナ工場(トイレや洗面台などで用いられる陶器のエナメルコーティング)で窯のオペレーターとして、最初はアメリカ中西部、後に南カリフォルニア働いていた作者の祖父が空想したかもしれないーもしくはその長い年月をぼんやりと思い起こさせる、そんな情景である。
雰囲気だけに浸っているような単なる代替的な経験として写し出した写真は物語として不十分であるが、作者はその代わりに、何か超越した主観的な瞬間をとらえながらも、説明的かつ、あたかも自分の経験ような痕跡を用いて描写している。
ヴィトリアス・チャイナの表面のエナメル質な「美しさ」と、トイレや洗面台で使われている「実用的な機能性」との間に生じる逆説的な関係性のように、アメリカ人フォトグラファーのマイク・スラックニよって添えられた文章と織り混ぜられたジュードの写真は、目に見えない記憶の数々や物語的な記号化と物理的な粗さが目立つ何てことの無い場所、そのどちらもを含めたひとつの「体験」を引き出そうとしている。
タイトル | 『VITREOUS CHINA』 |
---|---|
出版社 | |
価格 | 6,200円+tax |
発行年 | 2017年 |
仕様 | ハードカバー/ 160mm×200mm/54ページ |
URL | https://twelve-books.com/products/vitreous-china-by-ron-jude-second-edition |
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。