スイス人アーティスト、アン・マリー・ボン・ヴォルフの作品集『Die Verwandte. Aus dem fotografischen Nachlass der Anne』。編集は、同じくアーティストでヴォルフの甥の孫娘にあたるミミ・ボン・モースによる。
ヴォルフは、スイスの都市ルツェルンで幼い頃からのけ者にされて育った。自分の家族と周囲の状況を注意深く観察するようになったのは、疎外されていたことが一因なのかもしれない。しかし、ヴォルフはカメラを通じて徐々に家族と自分が暮らす狭い世界の中に居場所を見出していった。日常の風景、レ・マイヨン=ド=シオンでの夏休み、いとこでジャーナリスト、作家のカール・ボン・シューマッハーを訪れた時のこと、マウエンゼー城などをとらえた作品は、ヴォルフが鋭敏な感覚と構図のセンスを持っていたことを証明している。しかし存命中はその芸術的な才能が注目されることはなく、モースが祖父の家でバナナの木箱にしまい込まれていた作品を偶然見つけ、ようやく日の目を見ることとなった。
本書においてモースは、これらの写真を手掛かりに、決して表に出ることがなく、今となっては知ることができない1人の写真家のポートレイトを描き出そうと試みている。アーティストで哲学者のティーネ・メルツァーによる、いつも家族から少し離れた目立たない場所でカメラの影に隠れていた、遠い昔に亡くなった親戚が残した輝かしいイメージを深く分析したエッセーと、家族へのインタビューが本書の批評的な試みをより完全なものにしている。
タイトル | 『Die Verwandte. Aus dem fotografischen Nachlass der Anne』 |
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出版社 | |
出版年 | 2019年 |
価格 | 6,800円+tax |
仕様 | ハードカバー/180mm×65mm/298ページ |
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