写真家・映像監督の奥山由之による待望の新作写真集『windows』が、赤々舎より刊行される。
本書は、2020年4月から2022年11月までの2年半にわたり、東京都内で、約10万枚の不透明なガラス窓を撮影したシリーズ。奥山が初めてデジタルカメラを用いて撮影したこれらの写真群から、本書は724点が収載される。
コロナ禍にあったこの時期、海外に赴くことの少なくなった奥山は東京の街を歩きながら、窓の表情に目を留めた。路面に面した窓の多くは、すりガラスや型板ガラスなどの不透明なガラスで、屋内にあるさまざまな日用品が透けて見える。キッチンや浴室の水まわり、フィギュア、花、洗濯物、貼り紙、傘、神棚、自転車…窓枠に沿ってトリミングされた内部の空間は抽象的な模様となり、外部の影や映り込みも宿しながら、そこに暮らす誰かの存在を想像させる。それは一枚一枚の窓が、東京の人々の肖像画となる瞬間だった。 カメラのファインダーという窓から窓を覗いたとき、外と内との隔たりと思えたものがスクリーンとなり、その平面は新たな奥行きをもち得たのだ。
奥山は前作『flowers』(2021年、赤々舎)において、花を媒介にした亡き祖母との対話を描き出し、そこでは内から外への窓越しの眼差しが、あるひとりと向き合うことに重なっていた。本作『windows』では、外から内への眼差しによって見知らぬ誰かと対話し、その個々にして不特定多数の肖像は、自ずと足もとの社会を映し出すだろう。
それぞれ異なるものが密集して建てられている東京の、常に流動的で過剰に生成される街の姿。不透明なガラス窓は、そこで暮らす人どうしの間合いを反映し、歴史的には、閉じつつも外光を透かす障子を起源とするのではないかと奥山は考える。窓をめぐって建築や文化へも接続する『windows』は、時代の貴重な記録でもある。東京の街を丹念に歩きながら撮る奥山の足取りに、20世紀前後のパリを撮影したウジェーヌ・アジェも思い浮かぶかもしれない。標本的にではなく、光や距離によって具象と抽象のあいだを揺らぎ、立ち上がるイメージと生々しさが同居する『windows』。奥山作品の重要な転換点であるとともに、いまを、そして人々を写しとる独自の在り方は深い示唆を投げかける。
タイトル | 『windows』 |
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出版社 | |
出版年 | 2023年6月 |
価格 | 11,000円(特別限定版:19,800 円) |
仕様 | ハードカバー/B5変/752ページ |
URL | http://www.akaaka.com/publishing/Yoshiyuki-Okuyama-windows.html |