今年の初夏は、河川での洪水が多発し、北の国では氷が溶け続けているニュースが連日流れた。宇宙の遠い惑星までたどり着く知能と行動力も持っているはずの人類が、環境の問題に対して先送りばかりしているのはなぜだろうか。『111 l』は、梅雨のやまない雨を眺めながら、私たちの未来の地球について想像しながら、藤田はるか自身が制作を手がけて生まれた1冊だ。
今年2月、中谷宇吉郎雪の科学館の現館長である古川先生から、宇宙のとある惑星の大気中に水蒸気の存在が確認されたことを聞いた藤田は、「もしかしたら宇宙でも雪が降るかもしれない」という可能性にたどり着いた。その現実ともフィクションとも取れる想像の物語に端を発し、写真集では花火や雪、氷などの抽象的な写真が散りばめられている。
タイトルとなる「111 l」は、水蒸気の確認された惑星が地球からおよそ111光年先にあるらしいことから付けられた。温暖化と経済の歪みを藤田が感じながら作ったという本作は、一方で雪の降る宇宙を旅するという人間の想像力に希望を見出すという側面も併せ持っている。移動が制限される状況だからこそ、写真を通して、どこか遠くの惑星で雪が降っているという、想像の物語を旅してみてはどうだろうか。
タイトル | 『111 l』 |
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出版社 | 藤田はるか写真事務所 |
出版年 | 2020年8月29日(土) |
価格 | 1,600円+tax |
仕様 | 210mm×297mm/40ページ |
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