2021年は誰の写真集を買おうかな?どんな作家に出会えるかな?とワクワクしてみませんか。国内の4つの書店に今年注目したい若手写真家の写真集3冊を教えてもらった。鍛え抜かれた審美眼で写真集をセレクトするお店だからこそ、それぞれ注目する理由があるはず。第4弾は石川県金沢市のアーティスト・ラン・スペース、IACK。現代写真を中心にセレクトされ、最近は独立系出版社や自費出版作品のディストリビューション業務も行うなど幅広く活動する。自身も写真家であるオーナーの河野の洗練されたラインナップから、今年注目したい写真集を要チェックだ。
セレクト・文=河野幸人(IACKオーナー)
デイビット・ブランドン・ジーティング『Neighborhood Stroll』
コマーシャルやファッションの分野でも活躍するアメリカ人写真家、デイビット・ブランドン・ジーティングによる作品集。技巧的な写真を得意とするジーティングはスタジオ写真やPhotoshopで加工を施した作風で知られるが、本作では自身が暮らすブルックリン区・グリーンポイントでストレートなスナップ撮影を行っている。移動はおろか外出すら制限される時代において、写真家はいかなる作品を生み出すことができるのか。想像力に富んだ彼のような作家のさらなる活躍に期待が高まる。
タイトル | デイビット・ブランドン・ジーティング『Neighborhood Stroll』 |
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出版社 | Skinnerboox / SAME PAPER |
価格 | 6,100円+tax |
発行年 | 2019年 |
仕様 | ハードカバー/229mm×305 mm/300ページ/限定1,000部、ポスターが表紙の一部として付属 |
URL |
イヴ・ドゥリエ『Garçon de Café』
フランス西部のレンヌ在住の写真家、イヴ・ドゥリエによる作品集。ドゥリエは今日まで継続して、ローカルコミュニティや市井の人々に焦点を当てたZineや作品集を制作している。本作『Garçon de Café』では、レンヌのカフェで働く若い従業員やフードデリバリーサービスの配達員にレンズを向けた。多種多様な制服や彼らの着こなしなど、ファッション的観点から見ても興味深いポートレイト集だが、このような時世においては社会的なプロジェクトとしての側面がより一層際立っている。写真表現の在り方が年々拡張される中、オーソドックスなドキュメンタリー写真はどのような意味を持つのだろうか。物事の価値観が再考される時代だからこそ、ドゥリエのようなインディペンデントな活動にも改めて注目したい。
タイトル | イヴ・ドゥリエ『Garçon de Café』 |
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出版社 | Nouveau Palais |
価格 | 4,500円+tax |
発行年 | 2020年 |
仕様 | ソフトカバー/165mm×240 mm/806ページ/初版500部 |
URL |
リン・フィリス・ゼーガー『You I Everything Else』
ドイツ人アーティスト、リン・フィリス・ゼーガーのファーストブック。本作はポストデジタル時代における恋愛をテーマにした作品集であり、ゼーガーがパートナーと交わした私的なチャットやソーシャルメディア、デジタルインターフェースなどの断片的なスクリーンショットから構成されている。現代写真において、デジタル加工やスクリーンショットを多用する手法自体は決して新しいものではない。しかし、その多くが写真というメディアやテクノロジーそのものへの言及にとどまるのに対し、ゼーガーはロマンスという人間的なテーマを、一見相反する非身体的/非感情的な手法を用いて巧みに表現している。私写真的表現の現代的な形態として見ても興味深く、今後の作品が楽しみな作家のひとりだ。
タイトル | リン・フィリス・ゼーガー『You I Everything Else』 |
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出版社 | Skinnerboox |
価格 | 4,300円+tax |
発行年 | 2020年 |
仕様 | ソフトカバー/PVCダストジャケット/160mm×290mm/112ページ/初版500部 |
URL |
IACK
2017年に写真家・河野幸人のアトリエとして石川県金沢市に設立。「開かれた書斎」というコンセプトのもとアトリエは週末に一般開放され、現代写真を中心とした作品集を手に取ることができる。ギャラリーとして企画展や、国外独立系出版社や自費出版作品のディストリビューション業務も行う。
〒920-0864
石川県金沢市高岡町18-3
https://www.iack.online/
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。