13 July 2022

200万円超えの日本の幻カメラ「ズノーペンタフレックス」|新宿 北村写真機店ヴィンテージカメラのすすめ Vol.4

13 July 2022

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200万円超えの日本の幻カメラ「ズノーペンタフレックス」|新宿 北村写真機店ヴィンテージカメラのすすめ Vol.4 | 200万円超えの日本の幻カメラ「ズノーペンタフレックス」|新宿 北村写真機店ヴィンテージカメラのすすめ Vol.4

今回紹介するのは、今は無きズノー光学工業による日本ブランドの超希少カメラ「ズノーペンタフレックス」です。世界で最初にクイックリターンミラーとレンズの自動絞りを完全に運動させた35mm一眼レフというカメラ史に足跡を残したカメラですが、販売台数が極端に少なく、今では幻のカメラとなってしまいました。

撮影=佐藤万智弥
文=新宿 北村写真機店

ズノーペンタフレックスの設計は1956年、千代田光学から移ってきた技術担当の常務・荒尾清が1人で始めました。ズノー光学工業は元々レンズエ場でカメラ本体に関しては全く経験なく、荒尾自身も35mm一眼レフの経験はありませんでした。そこで唯一のペンタプリズムー眼レフであったミランダを研究し、クイックリターンミラーと自動絞りを組み込みました。クイックリターンミラーはアサヒフレックスII Bから実現されていましたが、完全自動絞りはまだどこのカメラも手つかずでした。

ズノーペンタフレックスF1.8/50mm(253万円)

ズノーペンタフレックスF1.8/50mm(253万円)

ズノーペンタフレックスF1.8/50mm(253万円)

ズノーペンタフレックスF1.8/50mm(253万円)


無駄のないシンプルなデザインは、榮久庵憲司率いるGKインダストリアル研究所がデザインしたものです。GKはキッコーマンの醬油差しや電車のデザインで有名な日本を代表するデザイン事務所。荒尾の設計が始まると同時にGKもスケッチを開始。1957年にはデザインが決定。しかし、GKは満足せず再度やり直し、今見るようなミニマルな「能の精神の具体化」というデザインに落ち着きました。

GKのデザインはカメラだけではなく、ペンタプリズム前面に刻まれているZUNOWのロゴや パンフレット、パッケージなど総合的なもので、ズノーペンタフレックス全体のクリエイティヴディレクションを行っていたのも興味深いことです。

さて、ズノーペンタフレックスのプロトタイプは1958年の正月に完成し、量産がスタート。2000を超える各種部品はすべて外注されました。本格的な組み立て作業が始まるとトラブルが続出。部品が外注のためバラツキが多くパーツの合いが悪かったのです。組み立てには多くの手直しが必要となり、当然品質は安定しませんでした。

ですがそんな中、同年8月に日本橋三越で一般向けの発表会を1週間にわたって開き販売。しかし、返品と故障の嵐。追い打ちを掛けるように発表会後、荒尾は上層部と意見の食い違いから退社。結局根本的な改善ができず、1959年やむなくズノー本社はカメラから撤退となりました。

ズノーのF2.8/35mmレンズ(220万円)

ズノーのF2.8/35mmレンズ(220万円)

ズノーのF2.8/35mmレンズ(220万円)

ズノーのF2.8/35mmレンズ(220万円)


部品は2000台分くらいあったようですが、実際に組み立てられ販売されたのは500台以下だったようです。生産期間は1958~59年までの約1年間。販売されたズノーペンタフレックスはほとんど 50mm F1.8付きで、58m F1.2はごく少数、100mm、35mmと合わせても100本はいかないと言われています。

とても生産数が少なく、また故障も多いことから、実際に撮影に使うのは難しいかもしれません。しかし、そのレンズは焦点が合ったところ以外のボケが得も言われぬ味わいのあるもの。部品ストックのために複数台コレクションしているお客様もいらっしゃいます。夢と幻のズノー、いかがでしょうか。

新宿 北村写真機店
世界一のカメラストアをコンセプトに2020年新宿にオープン。新品・中古カメラやグッズ、ギャラリーやセルフスタジオ、子供写真館が揃い、機材だけに留まらない豊かなフォトライフを提供している。

東京都新宿区新宿3-26-14
10:00~21:00
https://www.kitamuracamera.jp/ja

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