19 July 2022

地域密着型プロジェクトを通して考える、
エコロジカルな写真の未来
Vol.3 チャーリー・エングマン

19 July 2022

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地域密着型プロジェクトを通して考える、エコロジカルな写真の未来 Vol.3 チャーリー・エングマン【IMA Vol.37特集】 | 地域密着型プロジェクトを通して考える、エコロジカルな写真の未来 Vol.3 チャーリー・エングマン【IMA Vol.37特集】

持続可能な世界を目指す現代社会において、写真には何ができるのだろうか? IMA Vol.37「自然と環境をめぐる写真家の声」の関連記事第一弾では、現地コミュニティに根差して環境問題と向き合う写真家たちによる、イラン、ペルー、ガーナ、イギリスの4つのプロジェクトを紹介する。vol.3は写真家のチャーリー・エングマンが最近足を運んでいるガーナでの活動だ。ファッションフォトグラファーとして活躍するエングマンにとって、ガーナの山積みの古着と、そこで暮らす人々との出会いは自身の今後の制作に大きな影響を与えるものであるという。ファッションとどう関わっていくかを模索するエングマンの視点を辿ることは、ガーナでいま起きていること少しでも知るきっかけとなるだろう。

テキスト=IMA

着られなくなった服はどこへ行くのか?

世界最大規模の古着マーケットがあるガーナには、毎週約1500万枚もの使用済み衣類が輸入されるが、そのうち約40%は売ることも、着ることもできないほど傷んでいるという。その結果、「ゴミ」となった衣類の処分は追いつかず、火災や海洋汚染の原因となるばかりか、古着の価値も下がり、マーケットで生計を立てる人たちの暮らしに影響を与えている。私たちが善意で途上国に古着を「寄付」することで、現地の環境、経済、社会に問題を引き起こすという、意に反する負のサイクルが生まれているのだ。

ファッションフォトグラファーとして世界中で活躍するチャーリー・エングマンが、ガーナを初めて訪れたのは、同国で慈善活動を行う団体OR Foundationを主宰する古くからの友人に誘われたのがきっかけだった。OR Foundationは、公平に循環する経済を目指し、一部の人たちが支配するファッションのサイクルを根本から変え、私たちが「消費者」という枠組みを超えてファッションとの新しい関係性を築くことを促進する。

高く積み上がった古着の山々と、そこで暮らす人々の過酷な環境を目にしたエングマンは、「ファッションアイテムがどのように生まれるのかは知っていたけど、どう終わるのか知らなかった」と衝撃を受け、ファッションに携わる者として、そ終わりに対する責任を感じたという。エングマンは、あくまで一人のスタッフとしてOR Foundationへの協力のためガーナを訪れており、掲載写真は、その合間を縫って撮影されたものだ。少なくともいまの時点では、何が起こっているのか学び、自分に何ができるのか模索するために撮影しており、今後これらの写真を自分の「作品」として発表することは考えていないという。

また「外国から来た白人である自分が、彼らを解釈することに違和感があり、現地の人たちのストーリーは彼ら自身が伝えるべきだという哲学を持っている」と語るエングマン。そこで彼は最近、アルハッサン・ファタウという首都アクラのスラムに住む23歳のガーナ人男性に写真の撮り方を教え始めた。現在ファタウが撮影しているのは、カヤイェー(Kayayei)と呼ばれる古着産業で働く女性たち。その多くは地球温暖化の影響で砂漠が拡大しているガーナ北部出身で、仕事を求めてアクラに流れ着き、50〜70キロの重さの洋服を頭の上に乗せて危険な環境下で働いている。エングマンは、現在ガーナが抱える多くの問題から最も被害を受け、社会的弱者の立場に追いやられた者同士が交流しながら、自分たちの物語を自ら記録する様子を見守っている。一人の写真家として彼らに貢献できる方法を探しだし、実践しようとするエングマンがとらえた写真、そしてその姿勢は、遠く離れていながらも、実はその問題の要因となっていた私たちに強く訴えかける。

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チャーリー・エングマン|Charlie Engman
1987年、シカゴ生まれ。オックスフォード大学在学中にファッション写真家として活動を開始。現在はニューヨークを拠点とする。ユニークな身体表現と鮮烈な色使いを得意とし、被写体の表層の背景にある歴史や文化に言及する。代表作に自身の母を撮影した写真集『MOM』(Edition Patrick Frey、2020年)などがある。 The Or Foundationについて:https://theor.org/

  • IMA 2021 Autumn/Winter Vol.37

    IMA 2021 Autumn/Winter Vol.37

    特集:自然と環境をめぐる写真家の声

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