誰もが応募できるオンラインの写真コンテスト「IMA next」第30弾のテーマ「TOUCH」のグランプリ受賞者が発表された。
IMAプロジェクトが主宰する「IMA next」は、2019年に発足した誰もが応募できるグローバルなオンライン写真コンテスト。毎月国内外の多彩なゲストを審査員に迎え、月ごとにひとつのテーマを掲げ、応募の中から優れた作品を選出し、プラットフォームとして新たな才能の発掘を目的としている。
第30弾「TOUCH」のグランプリは、木戸孝子「Skinship」。審査員を務めリナ・シェイニウスは、選評として下記のように述べている。
“最初に見た時から印象的でした。本当にユニークで力強いイメージで、私がよく作品で扱って、大事にしているセルフ・ポートレートでもあります。同時に、美しくタブーを打ち破り、この世で一番自然な姿であるのにも関わらず、考えさせられるイメージです。ほとんどの人は授乳を見ることにはあまり慣れていません。それが赤ちゃんじゃなくて子供だったらなおさらです。でも、このテーマに立ち戻ると、生まれて初めて行う「TOUCH」の動作でもあります。母と子の間のファースト・タッチはどこか神聖で、生命を感じさせます。裸もアートの中でどんどん見せるのが難しくなっているイメージの一つです。だからこそ、このように優しさと力を持った写真がより世に出されて、人の目に止まることが大事だと思います。”
なお、ショートリストには中原貴美子、平野悠希、折坂元気、原 智恵子、斎藤れおん、ahraun、ユイネハヤトの7名の作品が選ばれた。公式サイトにはショートリストの選評と受賞作品がそれぞれ掲載されている。
▼グランプリ
木戸孝子「Skinship」
スキンシップは、ほとんどの日本人が英語だと思っている日本語。英語だと思っているから、無意識に、英語を話す人たちも日本人と同じようなスキンシップをしていると思う。私もそうだった。でもそれは大きな勘違いなのだ。
母と子の肌と肌のふれあい、家族の裸の付き合い。一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり、暖かなふれあいから、子供は思いやりの心を学ぶ。日本のスキンシップは、家族のきずなを深めるため、子供の健全な発達のための大切な時間。 それは日本人である私にとって、あまりにも当たり前で、ニューヨークで、家族のスキンシップのスナップショットのせいで逮捕されるまで、そんなに特別で、異なった文化の中ではショッキングでさえある、などとは思いもしなかった。日本とアメリカ、両方に住んだから見えた文化の違いとパラドックス。
日本に戻り、2012年に息子が生まれた。飛ぶように過ぎる毎日のカオスの中、なんとかセルフポートレートを撮り始めた。お腹の中で一つだった私たちの体に境界線などなかった。スキンシップを楽しみながら育つ息子を撮りながら、心の傷は癒やされていった。
子供の頃、じいちゃんとばあちゃんがいなくなる日を心配して泣く私に、ばあちゃんはこう言った。「順番やけん大丈夫」。その時はわからなかった。そう言われてもやっぱり私は泣いていた。今、どんどん成長する我が子を前にして、自分や夫の体が変化し老化していくこと、父母が年老いて死に近付いて行くことを静かに受け入れる。そして、ばあちゃんの言葉を理解し、母として、命のサイクルを理解する。
木戸孝子|Takako Kido
1970年、高知県生まれ。1993年、創価大学経済学部卒業。2003年、ニューヨークのInternational Center of Photography卒業。その後、ニューヨークで、B&Wプリンター、リタッチャー、高知新聞への連載などを行いながら、自身の作品制作、発表を行う。2008年、日本に帰国。現在、宮城県仙台市に在住し、国内外で個展、グループ展、スライドショーに参加し、作品の発表を行う。
Photolucida Critical Mass 2021 Top 50 Photographers
Gomma Grant 2021 ファイナリスト
Lucie Foundation Scholarship Program 2021 エマージングアーティスト 佳作
▼ショートリスト
タイトル | |
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審査員 | リナ・シェイニウス(写真家) |
グランプリ | 木戸孝子「Skinship」 |
ショートリスト | 中原貴美子「祖母の手」 |
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