現在のアートブックフェア人気の先駆けとなる、ニューヨークのNY Art Book Fairを主催する書店「PRINTED MATTER」が同じく主催するのが、このLA Art Book Fair。5年目を向かえた今年は約300の出展者が集結。来場者は約38,000人にもおよび、その勢いはニューヨークに迫るほどだ。着実に西海岸のカルチャーシーンを牽引しつつあるこのフェアを、写真にまつわるブースや、ロサンゼルスならではの出展者を紹介しながら、その動向をIMA編集部が現地レポートする。
まず最初に紹介するのが、「Focus: Photography」と題された中2階の部屋。ここには写真を軸とする大小さまざまなパブリッシャーが集まっている。日本からはAkio Nagasawa、小宮山書店、SUPER LABO、X MAGAZINE & EINSTEIN STUDIOらが参加していたが、RVB BOOKS、Bemojake、Kodoji Pressなどヨーロッパからの参加も多い。パリを拠点とするRVB BOOKSでは、『IMA Vol.19』でも紹介したの最新刊も。RVB BOOKSとマイランダーはこれまでも何冊も恊働作業をしているが、一点一点の表紙の柄と背表紙に使われている皮の色が異なる新刊『Skin Memories』があったのでチェック。本作は、マイランダーがなめし皮工場で行った実験やリサーチをまとめたもの。写真のみならず、新聞の切り抜きやポストカード、資料などのイメージを、サイアノタイプ、ヴァンダイクプリント、アンソタイプなどの古典技法を用いて皮の表面にプリントしている。 トーマス・マイランダー
ロンドンのHoxton Mini Pressでは『IMA Vol.19』の特集内でも紹介した、がユーモラスな車の修復を切り取った『Badly Repaired Cars』ほか、ついコレクションしたくなる小振りなフォーマットに収められた写真集シリーズが魅力。ロサンゼルスを拠点とするThe Ice Plantでは、 ロニ・カンパーナの『ANIMALS THAT SAW ME: Volume Two』ほか、過去の出版物が並ぶ。隣のKodoji Pressでは、 エド・パナルによる新刊のZINE『NY APPLES AND PEARS』の林檎と洋梨のモノクロのポスターが人気を呼んでいた。 グアダルーペ・ルイス
自身も写真家であるが主宰するロンドンのBemojakeのブースには、Wiktoria Wojciechowskaによる大判の写真集『Short Flashes』が目を引いた。中国で雨の日に、カラフルなレインコートを纏うバイクを運転する人々を淡々と撮影した写真をまとめた一冊は、想像していたよりも大きな判型が臨場感をさらに増幅させている。そのほか新刊では現在京都で暮らすライター、写真家の マックスウェル・アンダーソンによる『Sunlanders』も。 ション・ロットマン
スイスの出版社、Edition Patrick Freyには、や タイヨ・オノラト&ニコ・クレブスなどの新刊がずらり。日本にもすでに入荷しているが、フランス人写真家 ジャン=リュック・クラマットがアラブ首長国連邦に滞在して、現地のユースカルチャーをとらえた写真集『Fully Fueled』は、大胆なイメージ、スーパーグロッシーな紙、大判サイズということもあり、つい手が伸びてしまう。中東を撮った写真集は政治、社会的なものが多い傾向にあるが、ムークハジーが写真におさめた若者たちは、ギラギラ光る車に乗り、カラフルなアクセサリー、洋服をまとい、パーティへと繰り出す。どの国の若者とも変わらない、中東のリアルなユースの姿を垣間見ることができる。 バジール・ムークハジー
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。