デイヴ・ヒース(1931〜2016年)は1950年代に初めて「疎外感」や「孤独」を叙情的に表現した写真家の一人。彼の作品は「ドキュメンタリー」とも「実験的」とも表現し難く、アメリカの写真史において少し特異な位置づけをされている。1959年から1961年にワシントン・スクエアで制作したシリーズでは、自身を見失った人々、混沌とした路地裏、そして政府に対する疑念が広まったアメリカ当時の緊張感そのものをとらえている。中でも1965年に出版された写真集『A Dialogue With Solitude(孤独との会話)』はその10年間で最も物議を醸した写真集として注目されてきた。
ヒースが少し上の世代の写真家、W. ユージン・スミスやロバート・フランクから受けた影響は大きいが、彼の生涯のテーマ「孤独」(またそれに対立する「愛情」や「母性」)は自身のバックグラウンドから必然的に生まれたようだ。
Dave Heath, Elevated in Brooklyn, New York City, 1963 © Dave Heath / Courtesy of Howard Greenberg Gallery, New York, and Stephen Bulger Gallery, Toronto
4歳で捨て子となり、フィラデルフィアの孤児院や里親の元を転々として育ったヒースは、「家族」や「帰属感」とは無縁の幼少時代を過ごした。そんな彼の人生を変えたのが15歳のときに目にした『ライフ』誌に掲載されていた写真、特にニューヨークの孤児院についてのフォトエッセイだった。写真家になることを決意したヒースは、朝鮮戦争で砲兵隊隊員として従軍後、ほぼ独学で写真を習得。被写体に自身の悲惨な記憶を照らし合わせたヒースの写真からは、人々の孤独感と、繋がりに対する強い欲求が感じられる。
ヒースの写真はこれまで主に、MoMAやシカゴ美術館、カナダ国立美術館、カナダ現代写真美術館など北アメリカ大陸を中心に展示されてきた。今回は、シリーズ「A Dialogue With Solitude(1965)」から150点にのぼるオリジナル・プリントが公開される。
タイトル | 「Dialogues With Solitudes」 |
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会期 | 2018年9月14日(金)~12月23日(日) |
URL | http://www.le-bal.fr/en/2018/06/dave-heath-dialogues-solitudes |
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。