現代世界をシニカルに、ユーモラスに描く画家・山口晃。エルメスのアイコンアイテムであるカレ(スカーフ)に、山口作品が登場した。タイトルはカレ《エルメスの職人たち》。アートと職人を大事にするエルメスらしいウィットに富んだデザインに仕上がっている。
カレ中央に描かれるのは、サムライの格好をした男女。女性は馬とバイクが一体化した乗り物にまたがり、男がその手綱を手にして導く。まるで4隅に描かれた絵世界に誘うかのようだ。
山口はエルメスのアーティスティック・ディレクター、ピエール=アレクシィ・デュマに招かれて訪仏。エルメスのアトリエを回り、職人たちの作業を実見し、その感興からカレ《エルメスの職人たち》が制作された。アイテムの4隅をよく見てほしい。職人たちがカレを刷り、なんとカレ《エルメスの職人たち》を作っている!つまりカレの中にカレがあるという入れ子構造となった作品で、見れば見るほど別世界へと迷い込んでいく気分になる。まるで日本三大奇書の一つ「ドグラマグラ」のようだ。
またエルメスのフォーブル・サントノーレ通りにあるパリ第1号店や馬具工房なども描かれている。同店には屋上にスタチュー「騎乗の花火師」がシンボルとして据えられているのだが、このカレ内では日本仕様になっているのでぜひ注目してほしい。このように様々なディテールにエルメスの要素が忍ばせられている。
職人の技法を駆使し、芸術作品をカレへ落とし込む工程も同じくアートだ。芸術を身につけて、春の毎日に彩りを添えてみてはいかがだろう。
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