27 January 2021

料理本が“偶然の写真集”に?気長に楽しく収集を続けるコツ

コレクターの視点 vol.3 マチュー・ニコル

27 January 2021

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料理本が“偶然の写真集”に?気長に楽しく収集を続けるコツ | マチュー・ニコル

実用書として作られたクックブックも写真集!?

ここ20年にわたるホームクッキングの人気により、料理本は出版業界においていまだに成功を収めている数少ないカテゴリーのひとつといえるだろう。有名シェフが台頭する時代において、その種類の豊富さだけでなく、料理本の仕様の豪華さは目を見張るほどである。マチュー・ニコルが 、 2016年から集めている少し変わった料理本コレクションは、今日目にするそれらとは一線を画している。

収集をスタートしたきっかけは、ブルターニュ地方のヤードセールで見つけた一冊の本だった。それは、FBHF(フランス馬肉精肉店連盟)が刊行した『Gastronomie de la Viande de Cheval (馬肉を使ったガストロノミー)』というパンフレット。これを機に“偶然の写真集”―写真集として作られたものではないが、写真やデザインに重きが置かれた料理本を集め始めたという。

昔から写真集を収集していたニコルは、この新たなジャンルのコレクションにおいては、真剣になりすぎず、楽しさを求めたいと話す。彼のコレクションにおけるルールは次の通りだ。まず第一に、低価格の本しか買わない。彼のコレクションの中で最も高価な本でも、たったの20ユーロ。第二に、ガラクタや古道具などを販売する中古品店またはマーケット、ヤードセールでのみ本を収集する。高価なものを扱う蚤の市や古書店では買わないのは、「セレンディピティを信じながら、このコレクションを育てたいから」と語る。そして最後に、インターネットで本を探さない。これらのルールにのっとって、彼のコレクションはゆっくりとしたペースで増えてはいるが、現在はまだ約100冊余りである。

1. ニコルは、写真、アート、デザインなど幅広い分野についての執筆も手がける。彼の寄稿した記事が掲載されている『The PhotoBook Review』など。

2. ニコルの料理本コレクション。表紙に圧力鍋の写真が使われているのが『300 Recettes Seb』。

3. 『300 Recettes Seb』の中ページ。さまざまな料理とともに時計を配置して撮影されている。


カラー写真が好きなニコルのコレクションは、1950~90年代に作られたクックブックが多い。90年代以降のものを集めていないのは、「そのあたりの時期に、大きく食についての本が変わったのが理由」と話す。それ以前の料理本には、持ち主だった人が書き込んだ注釈や指の跡、食べ物の汚れが残っていたりする。彼がコレクションするのは、基本的に「食のマニュアル」であり、キッチンに保管され、定期的に使われる実用的な本なのだ。「料理本はキッチンから移動し、現在はコーヒーテーブルの上に置かれています。もはや実用的な本ではありません。1990年代から著者が重要になり始め、“偶然の写真集”と呼べる本が少なくなりました」

ニコルが収集するクックブックは、現在の料理写真に比べて演出がかなり重要視されているのも特徴だ。例えば、フランスの台所用品メーカーが販売する圧力鍋を購入した顧客に配られていた『300 Recettes Seb』では、料理のカットの中に小道具として時計をしのばせ、加圧調理における時間の重要性を見事に強調する演出が施されている。また最近、ニコルのコレクションに外国の料理本も加わり始めたという。アーネスト・マシュー・ミックラー著『White Trash Cooking』は、そのひとつ。同書は、家庭料理のレシピと奇抜なアイデアによって、アメリカ南部のホワイトトラッシュ文化を称賛するベストセラーだ。

将来的には自身のコレクションにまつわる書籍の出版も検討しているが、現在はヤードセールに通いながら、少しずつコレクションを増やし続けている。

4. 出版社oodee主宰で、アーティストのダミアン・プーランらとシェアするスタジオ兼オフィス。

5. ニコルの写真集および料理本のコレクションが並ぶ本棚。

6. 雑誌『La Bonne Cuisine』。


文=マーク・フューステル
写真=Atelier 9
IMA 2019 Winter vol.30より転載

マチュー・ニコル|Matthieu Nicol
クリエイティブコンサルティング&コミュニケーションエージェンシーTOO MANY PICTURES 主宰。数々の企業、ブランド、文化施設をクライアントに持つ。料理本コレクションをInstagramアカウント@vintage_food_photographyで紹介するほか、トークショーや執筆活動を通してその魅力を発信している。

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