GUCCIが制作した『Gucci Prospettive N. 1, Milano Ancora』は、ミラノへの敬意を詰め込んだ1冊だ。キャンバスを切り裂く絵画で知られるルチオ・フォンタナや、ダンサー・振付家のアンナマリア・アイモネ、写真家のアンドレア・コッコ、TOMBOYS DON’T CRYなど、あらゆるジャンル/年代の、ミラノにまつわるアーティストらの作品が掲載されている。GUCCIの新たなアートプロジェクトとして生まれた作品集をめくってみよう。
テキスト=IMA
またひとつ、GUCCIとアートの関係の新たな1ページがめくられた。
『Gucci Prospettive N. 1, Milano Ancora』は、新しいGUCCIのアート支援プロジェクトとして、GUCCIの新しいクリエイティブ・ディレクター、サバト・デ・サルノが、キュレーションのステファノ・コッリチェッリ・カゴール博士をパートナーとして制作したアートブック。カゴール博士はローマ・クアドリエンナーレ財団の元キュレーターを経て、現在イタリア・プラートのルイジ・ペッチ現代美術センター館長を務める人物で、今回、アートにおける新たな挑戦が始まった。
テーマはミラノ。ファッションの中心であり、文化的資産にあふれるミラノへのリスペクトに満ちたこの本は、ビジュアルと文章でファッションと美学の融合、競演、融合を通して、この街を表現する。
冒頭、20世紀を代表するアーティスト、ルチオ・フォンタナのキャンバスを切りつけた真紅の代表作 「Concetto spaziale, Attesa」に始まり、「ブレラ地区」「ストリート」「言葉」「瞬間」「共に」などのキーワードで章立てされ、それぞれに1950年代以降に制作されたペインティングや写真と文章を織り交ぜながら展開されていく。マン・レイなどの巨匠もいるが若手への目配りも忘れず、ブレラ美術アカデミーの学長と教授陣の協力のもとデ・サルノがアカデミー卒業生から選抜した4人のアーティストたちの作品もフラットに混在して紹介されている。
戦後から今日までのミラノにおける文化、芸術を通して、アート作品が文学、音楽、映画、ファッション、歴史と交差し、街を成熟させ、人々を楽しませてきた歴史の断片を物語る。それらが混じり合いながら続くリレーの中で、アーティストたちは美と欲望の場としてのミラノを語り、新しい空間と新しい自分を思い描いて伝統を超えていく。
2024年春夏コレクションに合わせ制作され、「N. 1」に続くかたちで今後も定期的に発行される。次はどんなテーマが提示されるのか、楽しみだ。