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書店員がピックアップする2017年の売上ベスト写真集【POST編】

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書店員がピックアップする2017年の売上ベスト写真集【POST編】 | クリステル・レバス『Field Studies』

2017年はどんな写真集が売れたのだろうか? 昨年7月から4店舗のおすすめ写真集を毎月紹介しているこのコーナーでは、新年特別号として2017年の売上ベスト3を紹介。昨年の写真集のトレンドが見えるラインナップに注目してみよう。

セレクト・文=錦多希子(POST)

1位

Robert Frank | Books and Films, 1947-2017

ロバート・フランクの世界巡回展に際して作成された新聞型展覧会カタログは、これまでたびたび入荷しているが、気づいたときには品切れしている、息の長いタイトルのひとつ。最新版は価格は据え置きのまま、今年に入ってから開催した展覧会の内容も盛り込みパワーアップしている。価値が高騰しオリジナル作品が展示しづらい状況を打破するために印刷物にして展示構成をするというアイディアは、彼らの純粋な想いと柔軟な発想の転換の賜物だ。表出方法はどうであれ、作品に強度があればその威力は削がれないことを証明した。

タイトル

ロバート・フランク『Robert Frank | Books and Films, 1947-2017』

出版社

Steidl

価格

800円+tax

発行年

2016年

仕様

新聞印刷用紙に輪転印刷/404mm×275mm/64ページ

URL

https://steidl.de/Books/Robert-Frank-Books-and-Films-1947-2017-3135376160.html


2位

フランス出身で現在はロンドンを拠点とするフォトグラファーのクリステル・レバスは、著名な植物学者で生態学者のエドワード・ジェームス・ソールズベリーの遺したガラス板ネガと出逢った。1920年代にスコットランドの調査の一環で作成されたこの重要な史料をもとに、レバスは彼の歩みを再びたどることを決心した。本作はソールズベリーのネガやテキストに誘われるようにして、レバスが大判カメラを片手に長時間露光や薄暮時の撮影を駆使してとらえたパノラマ写真が織り交ぜられる。折りたたまれた観音開きをひらけば、そこには圧巻の景観が立ち現れる。100年の時を経て気象や生態系の変化を受けてもなおそこに在る、あるがままの自然が抱く力を存分に感じてほしい。

タイトル

クリステル・レバス『Field Studies』

出版社

Fw:Books

価格

7,500円+tax

発行年

2017年

仕様

ソフトカバー/240mm×310mm/188ページ+30折り込みページ

URL

https://fw-books.nl/product/chrystel-lebas-field-studies/


3位(同率)

Bunkamuraで開催された回顧展によって、一躍知名度と注目が高まったソール・ライター。POSTではライターの自邸を撮影したフランソワ・アラールの写真展や、ソール・ライター財団の協力のもとに便利堂が手がけたポートフォリオボックスの発表記念展を開催したりと、縁が重なった年でもありました。

初期のモノクロ作品に特化した本書には、1940年代末から50年代にかけて彼なりの視点で見つめるニューヨークの街並みが連なります。ドキュメンタリーとしての軸を持ちながらも、彼が身をもって対面した人々や物事へのごく個人的な反応が色濃く出ているからこそ、心に響くものがあるのではないでしょうか。ちなみに「Early Color」は回顧展の会期中に版元絶版となって久しく、再版が待ち望まれています。

タイトル

ソール・ライター『Early Black and White』

出版社

Steidl

価格

11,100円+tax

発行年

初版2014年/第2版2015年

仕様

ハードカバー(クロス装丁)2冊組、スリップケース入り/200mm×200mm/ページ数不明

URL

https://steidl.de/Books/Early-Black-and-White-2350525455.html


3位(同率)

「近代絵画の父」と謳われるポール・セザンヌは最晩年、彼の故郷でもあるエクス=アン=プロヴァンスに自ら設計を担ってアトリエを構えました。アメリカ出身の写真家、ジョエル・マエロヴィッツはこの場所を訪れたとき、すべての色を自然に見せるために自ら調色して濃い灰色に塗りつぶした壁に、遺されていたオブジェクトが溶け込むような光景に感銘を受け、新たな作品制作に向けて触発されました。アトリエの管理者から特別に許可を得て、テーブルトップの同じ場所にオブジェクトを配置してひとつひとつ撮影された作品群には、まるでアトリエの主が描く絵画の世界に飛び込んでしまったかのような美しい情景が広がっています。彼なりのアプローチを通じた、セザンヌのいう「平面性」への返歌となっているのです。

タイトル

ジョエル・マイロウィッツ『Cézanne’s Objects』

出版社

Damiani

価格

7,200円+tax

発行年

2017年

仕様

ハードカバー/260mm×325mm/116ページ

URL

https://www.damianieditore.com/en-US/product/631


2018年おすすめの一冊

ハッセルブラッド社が毎年ひとりの写真家に授与するアワードでは、受賞記念の出版物が刊行されることが通例です。2017年にはオランダ出身のリネケ・ダイクストラが選ばれました。表現方法は写真を軸に、ときに映像にもおよびますが、いずれもポートレイトであることは変わりません。作品の主題となるのは、例えば思春期の少年少女や妊婦といった、変化のさなかにいる人々。過渡期ならではの脆さ、そしてアイデンティティをはらんだその瞬間をとらえる見事な描写は、まるで17世紀のオランダの肖像画を彷彿させます。女性が被写体の作品のみに焦点をあて年代順に並べることで30年にわたる代表作をひとまとめにしたブックデザインは、同じくオランダを拠点とするイルマ・ボームによるもの。二者による密接な協働あってこその渾身の一冊です。

タイトル

リネケ・ダイクストラ『Wo Men – Hasselblad Award 2017』

出版社

Hasselblad Foundation

価格

12,500円+tax

発行年

2017年

仕様

ソフトカバー/256mm×360mm/216ページ

URL

https://www.buchhandlung-walther-koenig.de/koenig2/index.php?mode=details&showcase=1&art=1568799

POST(limArt Co., ltd)
恵比寿にあるブックショップ。定期的に取り扱っている出版社が変わり、出版社の個性を感じる事の出来るセレクトになっている。また書店だけではなく、トークショーや展覧会なども開催、本の売り場のコーディネートや本のアーカイブ作成も手がけている。

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