今年は依然として閉鎖的な空気に包まれつつも、少しずつ外出する機会が増え、実際に書店や展示に訪れることができた人も多いはず。そんな2021年は一体どんな写真集が売れたのだろう? 4つの書店に、本年の写真集売上ベスト3といまオススメしたい1冊を教えてもらった。第4弾は、話題の一般書からアート本に至るまで幅広く取り扱う青山ブックセ
セレクト・文=山下優(青山ブックセンター本店)
▼1位
工藤正市『青森 AOMORI 1950-1962 工藤正市写真集』
昭和30年代の青森で、人知れず、家族にも知らせず、青森の暮らしの原風景の瞬間を撮り溜めていた写真家、工藤正市。本書は、没後発見されたフィルムの束を元に360点余りを収録した初の写真集。そこに写されていたのは、戦後の青森に生きる人々の日常の姿と、やがて失われる情景への思慕にみちた、故郷を愛する写真家のまなざしであった。みすず書房創業75周年の企画の一つとして、当店限定で購入特典のポスターをつけていたこともあり、店頭での反応もとてもよく、写真集として近年稀にみる当店ベストセラーの1冊。
タイトル | 工藤正市『青森 AOMORI 1950-1962 工藤正市写真集』 |
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出版社 | みすず書房 |
価格 | 3,960円 |
発行年 | 2021年 |
仕様 | ソフトカバー/A5変型判(196mm×148mm)/ 432ページ/写真約360点収録/年譜・青森駅前撮影場所の地図 |
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▼2位
ジェイミー・ホークスワース『THE BRITISH ISLES』
ジェイミー・ホークスワースが自身のレンズを通して見てきた、13年にわたるイギリスの記録。小学生や販売員、祭司や専門職に就くもの、市場や住宅などの建物、都市風景や建築現場、ポートレイトと風景が混ざり合い広がる。母国であるイギリスの日常を形作る人々や土地の様子を探求して写しだす、イギリスの多難な時期を辿る歴史的なドキュメントでもある。個人的にもとても好きな写真家で、2017年作『PRESTON BUS STATION』(DASHWOOD BOOKS)もよく動いていたので、文字通り待望の1冊。
タイトル | ジェイミー・ホークスワース『THE BRITISH ISLES』 |
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出版社 | MACK |
価格 | 9,900円 |
発行年 | 2021年 |
仕様 | ハードカバー/220×260mm/304ページ/カラー |
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▼3位
植本一子『わたしたちのかたち』
2019年作の写真集『うれしい生活』(河出書房新社)のその後の3年間を1冊にまとめた本書。この世からいなくなってしまった人へ、その後のわたしたちを知ってほしい、という想いでまとめられた写真たち。わたしたちのかたちはどんなかたちに見えますか? あなたたちのかたちはどんなかたちですか? 写真家・植本一子さんのまなざしや視点によって、パーソナルな想いが昇華されることで、こんなにも私たちの胸を打つ。石田さんへの手紙も収録。
タイトル | 植本一子『わたしたちのかたち』 |
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出版社 | 自費出版 |
価格 | 1,760円 |
発行年 | 2021年 |
仕様 | B6判変形/128mm×176mm/184ページ/1000部限定 |
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▼いまオススメしたい1冊
Fujimura Family『PROOF OF LIVING』
Dai Fujimura(芸術家)と味果丹(詩人)夫婦によるアーティストペア。2020年に自費出版で100冊のみ作られ、そのうち世に出回ったのはたったの90冊だけという、伝説にして幻の作品を、ページ数を増やし装丁も新たに再編集して刊行。生きる証明をそのままに表現する、10年間のいのちのポートレイト。お取引のご連絡を頂いた際に、「これは!」という空気感がメール越しでも漂っていましたが、案の定、実際に手にした時の衝撃は一生忘れないと思います。ぜひ。
タイトル | Fujimura Family『PROOF OF LIVING』 |
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出版社 | MARGINAL PRESS |
価格 | 4,840円 |
発行年 | 2021年 |
仕様 | ソフトカバー/B6サイズ/320ページ/初版444部限定 |
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青山ブックセンター本店
表参道駅から5分、ワンフロアの書店。一般書に留まらず、デザインや広告、写真、アートなどクリエイティブ系の書籍から、文芸や人文書まで品揃えが豊富。刊行記念イベントや、講座やワークショップなど書店を生かした学びの場も開いている。
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コスモス青山ガーデンフロア(B2F)
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