8 June 2022

細江英公と三島由紀夫が炸裂する名作『薔薇刑』

小宮山書店選レア写真集 Vol.1

8 June 2022

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細江英公と三島由紀夫が炸裂する名作『薔薇刑』|小宮山書店選レア写真集 Vol.1 | 薔薇刑

三島由紀夫が『おとこと女』(1961年刊 細江英公撮影)の中で躍動している舞踏家・土方巽の姿を見て、自身の著書『美の襲撃』表紙写真の撮影を細江英公に依頼したことから写真集『薔薇刑』は誕生しました。同タイトルで過去6度にも及ぶ出版を繰り返している怪物写真集であり、日本写真史の中でも世界に誇れる作品です。希少で価値ある写真集を紹介する連載第1回目は、この『薔薇刑』第一作目となる元版と第二作目の『新輯版 薔薇刑』の2冊を取り上げます。

文=小宮山慶太(小宮山書店)
撮影=竹澤航基

『薔薇刑』1963年刊(集英社) 細江英公/撮影 三島由紀夫/被写体・序文 杉浦康平/装幀 限定1500部 細江・三島両者サイン入 蓋付き函 ハードカバー ビニールカバー Size H440 x W285 mm

『薔薇刑』1963年刊(集英社) 細江英公/撮影 三島由紀夫/被写体・序文 杉浦康平/装幀 限定1500部 細江・三島両者サイン入 蓋付き函 ハードカバー ビニールカバー Size H440 x W285 mm


内容は、三島の裸體を中心とした耽美な写真が並ぶ「序曲」「市民的日常生活」「哂う時計あるいは怠慢な証人」「さまざまな涜聖」「薔薇刑」の5章で構成。当時はリアリズム写真全盛時であって、合成技術を多用しシュールな世界観を表現した作品はとても新鮮であり人々を魅了したであろうと想像します。

被写体は、三島由紀夫のほかにも土方巽や江波杏子、元藤燁子が参加。撮影時には細江先生の助手として森山大道が帯同し「三島さんの体にホースをグルグル巻きつけていた」といいます(森山氏談)。『薔薇刑』はこんな豪華メンバーが揃って作り上げた傑作。グラビア印刷による深い黒の描写もこの写真集の味わいを深くしています。


余談ですが、元版の出版当時、販売促進用に『薔薇刑』の内容見本が制作されており、そこでは澁澤龍彦や岡本太郎、安部公房などそうそうたるメンバーが寄稿しています。そして何故か小宮山書店、小宮山慶一の名前も!私の祖父である慶一は、「この写真集ですが、、、間違いなく古本になっても高値を呼びましょう。」と書いているのです。

細江先生から直接当時の話を聞いた際、「発売したばかりなのに将来高値になるなどといわれ、若かった私は怒ってしまいましたが、いまになって小宮山(慶一)さんのおっしゃっていたことが正しかったと理解しました。あの時は本当に失礼しました」と丁寧なお言葉をいただきました。そんな流れもあり『二一世紀版・薔薇刑』では細江先生から推薦され、私が推薦文を書かせていただいたという、何かと縁を感じる1冊です。

ヴィンテージとしての注意点は外函のコンディションはもちろん、巻頭にある白半透明のパラフィン紙4ページにシミやヨレが出やすいこと。購入の際にはチェックしてください。

『新輯版 薔薇刑』1971年刊(集英社) 細江英公/撮影 三島由紀夫/被写体・序文・題簽 横尾忠則/挿画・装幀・レイアウト ステンレス板口絵写真1枚貼込 ダンボール外函に題簽貼込 白布ケース ハードカバー Size  H420 x W560 mm

『新輯版 薔薇刑』1971年刊(集英社) 細江英公/撮影 三島由紀夫/被写体・序文・題簽 横尾忠則/挿画・装幀・レイアウト ステンレス板口絵写真1枚貼込 ダンボール外函に題簽貼込 白布ケース ハードカバー Size H420 x W560 mm


第二作となる新輯版は、1970年に自決した三島の死後に出版されたもの。前作より巨大化して重量たっぷり、筒型のダンボール函から本体を引き抜くと白布のケースがあらわれます。蓋を開くと横尾忠則のインド調のイラストと赤い薔薇に彩られた裸體の三島が登場。本編中にも横尾の挿画があり、なんともエネルギッシュな演出で元版の杉浦康平とは違ったアプローチで『薔薇刑』を昇華させているのです。サイズアップしたことにより写真も大迫力!

題字は漢字ですが横書き。「これには訳があって最初は縦書きでの予定だったが、海外からも注目されていたため横書きの案になりました」とのこと(細江先生談)。実はこの題字のほか、三島由紀夫自筆色紙原稿は縦書き、横書き、英語ver.などが編集段階で用意されており、迷ってから漢字の横書きになった経緯と三島が生前から『新輯版 薔薇刑』に携わっていたことがわかります。

ヴィンテージとしての注意点は、糊のせいか白布ケースに茶色いシミが出やすいこと。購入の際にはチェックしてみてください。

どちらも時代を作ってきた秀逸な写真集です。機会がありましたら是非実物を見ていただきたいと思います。

小宮山書店
1939年創立の神保町を代表する古書店。写真集、アート・ファッション誌のほか、ヴィンテージのフォトプリントやポスター、アート作品も販売。過去の秀逸な作品に光をあて新しい価値を見出すことで、日本のカルチャーを世界に発信し続けている。

東京都千代田区神田神保町1-7
03-3291-0495
時間:12:00~18:30(日曜・祝日:12:00~17:30)
臨時定休日:火水曜
https://www.book-komiyama.co.jp/

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