個性的なセレクトが光るブックストアが月替わりでおススメの写真集3冊を紹介。今月は国内外のファッション、写真、アート、デザインなどの書籍を店主の偏愛のもと選書する代田橋の書店「flotsam books」。
セレクト・文=小林孝行(flotsam books)
静かな風景に宿る写真家の眼差し
出版レーベルMēdeia1.0>が発行する、国内外の写真家が捉えた世界の出来事や社会課題を発信するプロジェクト「Mēdeia2.0」。このプロジェクトではこれまでに金村修、小松浩子、テリ・ワイフェンバックなどを取り上げてきた。今号で特集されるのは日本の写真家・原美樹子だ。2021年から2024年までの近作約30点が掲載されている。部屋の中やキッチンに、電車の中に、屋外の草木や路上に、柔らかな光が差し込む様子が収められた写真からは、どこにでもあるような静かな風景のなかに写真家の確かな眼差しを感じることができる。
タイトル | 『Medeia 2.0 ISSUE No.00』 |
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著者 | 原美樹子 |
出版社 | INDIGO CO.LTD |
出版年 | 2025年 |
価格 | 4,950円(税込) |
仕様 | 36ページ / ソフトカバー / 274 x 184 mm |
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渋谷の二十年を綴じ込めた一冊
鈴木信彦の初めての写真集『Tokyo Heat Wave』の2nd edition。2000年から2018年の間に撮られた渋谷のストリートスナップが収録される。毎週末に渋谷に出向き、渋谷の街を颯爽と歩く女性や、虚ろな顔で佇む少女、たむろする悪そうな少年たち、カメラを見返す男性など、渋谷を象徴するような人たちを撮影した。観光客だらけになった今では信じられないほど、猥雑でギラギラしている渋谷の夜がこの本に綴じ込められているかのようだ。渋谷にフォーカスし続けた二十年近い歳月がこの一冊に詰まっているからこそ、これらの写真がファッション史の一部であり、風俗史の一部であり、渋谷の歴史の一部であり、“かっこいい”写真なのではないだろうか。
タイトル | 『TOKYO HEAT WAVE』 |
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著者 | 鈴木信彦 |
出版社 | 蒼穹舎 |
出版年 | 2025年 |
価格 | 5,500円(税込) |
仕様 | 114ページ / ソフトカバー |
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シドニーの裏社会で巻き起こる生き残りをかけたゲーム
『The Diary of a Hitman』は、ヒットマンと共に制作された初の写真集であり、オーストラリアの組織犯罪の実態に迫る貴重な記録である。無法者バイカー集団「Rebel Outlaw Motorcycle Club」をオーストラリア史上最も効果的な殺し屋集団に変えた男 Abuzar “Abz” Sultaniは悪名高いヒットマンでもあった。偽造ナンバープレート、数々の銃、弾丸、防弾チョッキやメッセージのやり取りのスクリーンショットなど印象的なイメージから、命を狙われ報復の連鎖の中に生きる彼らの様子に迫る。「play for keeps」(生き残るための真剣勝負)というルールが支配するシドニーの裏社会で巻き起こる、生き残りをかけたゲームを淡々と写し出した。
タイトル | 『The Diary of a Hitman』 |
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著者 | Pouria Khojastehpay |
出版社 | 550BC |
出版年 | 2025年 |
価格 | 13,200円(税込) |
仕様 | 114ページ / ハードカバー / 240 x 170 mm |
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