INSIGHT: IMA PHOTO SCHOOLなどでもお馴染みのアートディレクターの町口覚さん。本作りには並々ならぬ情熱を持った造本家で、ご本人もbookshop Mというブックレーベルを持ってらっしゃいます。写真選びと美しい造本があいまって、毎年パリフォトのパブリッシャーブースでは、写真集ファンの人だかりができるほどの大人気。
その町口さんと打ち合わせでお会いしたときのこと。「すっげー写真集ができたよ!」と嬉しそうに見せてくださったのが、『Sakiko Nomura:Ango』でした。bookshop Mでは、すでに名作文学とフォトグラファーのコラボ企画の写真集を森山大道×太宰治、寺山修司などを刊行済み。
文学×写真シリーズの次の新刊は坂口安吾×野村佐紀子なんだ、と理解した次の瞬間……。目の前にポンと置かれた写真集を見て、我が目を疑ってしまいました。本が歪んでいる。背表紙はまっすぐなのに、小口側が斜めで、しかもねじれている……。首をひねりながら、あっちこっちいろいろな角度から眺めてみましたが、にわかには理解できず。実に、複雑な作りになっています。
町口さんによれば、上辺が短くて下辺が長い台形をしたページが、1ページずつ形が変わっていって、最後は上辺が長く下辺が短くなるという構造の本なのだそう。さぞや印刷所、製本所が苦労したことでしょう。
造本だけでなく、レイアウトデザインも細部へのこだわりがすさまじい。というのも、小口がななめになっているので、文字組みも細かく細かく調整して、文章の終わりから小口までの空きをすべて同じミリ数で統一したのだとか。どこまで手をかければ気が済むのやら。
造本に目を奪われましたが、肝心の坂口作品は『戦争と一人の女』。町口さんが「世界のようすが、おかしくなっていると全身で感じている」という今こそ、世に問う、世界に発信するコンテンツとして選んだのだといいます。
目下、ドイツ語が完成したところで、この後、英語版、日本語版と刊行が続いていくそうです。これまでに見たことのない斬新なこの写真集、今年11月のパリフォトでは、またまたbookshop Mのブースに長蛇の列ができそうです。
タイトル | 『Sakiko Nomura:Ango』 |
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出版社 | |
発行年月日 | 2017年8月15日(火)予定 |
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。