森山大道トークイベント「原点と現点」

2018.2.22 Thu

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東京都

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森山大道トークイベント「原点と現点」 | 森山大道トークイベント「原点と現点」

過日、NADiff a/p/a/r/tで開催中の森山大道の新作展「景」、また最新の写真集『K』(月曜社)の販売に合わせて、作家本人によるトークイベント「原点と現点」が行われた。

森山の作品はしばしば「時代が見えない写真」といわれる。確かに、白黒、ハイコントラストの彼の写真には一貫した世界観があるため、今の写真であってもいま撮られたものに見えないことがある。本人も「ノスタルジック」という感覚に抵抗があるからだろうか、時代の流れをあえて意識して撮影することはほとんどないという。しかし、そんな彼にもひとつだけ、例外的な過去への執着がある。

それがニセフォール・ニエプスによって1827年に世界で初めて撮影された「実験室からの眺め」という一枚だ。これを見たときの感動は、森山の記憶にずっと焼き付いており、彼はこれを写真の「神」と称し、寝室の壁に80×100センチで引き伸ばして飾っているという。

その写真が撮影されたのは中部フランスのサン=ルー=ド=ヴァレンヌにあるニエプスの館。森山は2008年夏、実際にここに訪れ、館の窓から原作とほぼ同じ角度で「実験室からの眺め」を撮影している。さらに、2015年にはアメリカ・テキサス州の大学博物館にて、その最古の写真原版との対面を果たした。

70年代後半、スランプ時期で写真が全く撮れなくなった彼を再度奮い立たせたのもこのニエプスの写真だというから、これは写真家・森山大道の「大きな原点」であることは間違いないだろう。

K © Daido Moriyama

K © Daido Moriyama


トークショーの後半は、もうひとつのキーワード「現点」について。

いまは暗室を使わず、すべてデジタルで撮影しているらしいが、手法が違えどそのスタイルに変化はない。毎日カメラ片手に散歩し、「ラチもない日常」を過ごしているという。晩年の生き方について聞かれると、「僕は街が好き。さまざまな混沌が好き。それが在り、僕の足が丈夫なうちはずっと撮り続けるよ。だって、それしか面白いことないんだもん」と。この方は写真家になるべくして生まれてきたのだと、改めて思わされた。

会場風景