作品制作にどんなカメラを使用するだろうか?一眼レフ、コンデジ、はたまたスマートフォンと現代はデジタルで気軽に撮れる時代だ。一方、カメラの聖地・新宿に佇む名店・新宿 北村写真機店ではフィルムカメラも人気という。最新デジカメからヴィンテージライカまで揃う同店が、歴史もまとう貴重な過去のカメラを紹介。デザインも機器としての描写力も手に取って確かめたくなる魅力に溢れるヴィンテージカメラ。初回はライカコピー機の中でも幻と呼ばれるウィットネスだ。
撮影=鈴木孝彰
文=新宿 北村写真機店
今回紹介するのは、数あるライカコピーの中でも幻の名機「ウィットネス」です。1930~50年代、ライカの革新的フィルムカメラ「バルナックライカ」に影響を受けたカメラがたくさん造られました。中には本家を凌ぐ性能の物も出現しました。ウィットネスはそんな中の1台で、レンジファインダーカメラです。
ウィットネスは、1951年頃発売。イギリスのPeto Scott社が製造し、イルフォード社が販売しました。設計したのはエルンスト・ライツ社で光学設計者として働いていたロバート・スタンバークとツァイス出身のD・A・ロスチャイルドの二人です。市場に出回ったのは1年ほどといわれており、ゆえに流通量が少なく、幻といわれる所以です。
製造台数はイルフォードのブランド名で350台、またイルフォードの名が外れて100台ほどが製造されたといわれています。今回紹介するこちらは後期の100台です。なのでイルフォードと記載がありません。
市場価格は状態によりますが、大体200万円前後。後述しますが、初期タイプはダルメイヤーのダロンレンズが搭載されているのですが、そのタイプだとより価格が上がります。
独特な流線形のフォルムがとにかくカッコいい。平らな軍艦部にアクセサリーシュー(バネ式のカバー)が付いて作りが凝っています。また、コンタックスI型のように裏蓋部分が外れて、簡単にフィルム装着ができるところや、レンズのマウントはウィットネス用バヨネットマウント+ライカスクリューマウントのダブル仕様(パララックス自動補正、不回転シャッターダイヤル)といった、当時では斬新な機構がいろいろ採用されているのもコピーながら名機といわれる理由でしょう。
つまり多機能で、その結果大量生産が難しい、またコストもかかり高額になったため、数百台しか市場に出回らなかったようです。
標準の搭載レンズは、ダルメイヤーを代表する名品・スーパーシックスレンズを採用しています。4群6枚構成のダブルガウスです。ライカのDRズミクロンのように近接撮影ができ、45cmまで撮影可能。描写はコントラストが低く、あっさりナチュラル。今フィルムカメラが人気ですが、いわゆる美しいフィルムの描写です。開放付近では少し滲み、かつ艶も感じます。
レンズはダルメイヤーの名玉スーパーシックス。
初期に少数ですが、ダロン50mm F2.9が搭載されたものがあり、それだと市場価格も高騰します。その後スーパーシックス50mm F1.9が標準レンズになりましたが、こちらもレンズ先端が白のタイプと黒のタイプがあり、収集欲を刺激しますね。
ウィットネスはとにかくこだわり切った機能とデザインです。最高のレンジファインダーカメラを目指した設計者の気概を感じられます。世界中に400台ほどしか存在していないので、見かけたらぜひ触ってみてください。イギリスカメラの粋を感じられるはずです。
新宿 北村写真機店
世界一のカメラストアをコンセプトに2020年新宿にオープン。新品・中古カメラやグッズ、ギャラリーやカフェ併設のブックラウンジが揃い、機材だけに留まらない豊かなフォトライフを提供している。
東京都新宿区新宿3-26-14
10:00~21:00
https://www.kitamuracamera.jp/ja
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