3月の香港といえば、アートに彩られた一カ月。香港政府もHong Kong Arts Monthにあたってウェブサイトを立ち上げたり、香港の空港に降り立つと自然とアートイベントの情報が目に入ってくる力の入れようだ。その勢いを牽引するのが、2013年からスタートした現代美術のフェア・アートバーゼル香港。昨年の入場者数が約7万人だったのに対し、今年は6日間で、8万人近くもの観客が足を運んだという。一般来場者が訪れる後半3日間は、当日券(約4,000円)も開場2時間もしないうちに売り切れるという人気具合だ。アートバーゼル香港では、34カ国242のギャラリーが集結したが、それだけにとどまらずArt Centralといった別のアートフェアの開催や、ギャラリーがオープニングで街を活気づけ、また美術館や文化施設で注目度の高い展覧会が催されていた。これがアジア全体を指すことにはならないが、香港という場所からアジアのアートシーンの隆盛を見ていきたい。
文=松本知己
ここでは特に写真作品について取り上げたいと思うが、アートバーゼル香港は現代美術のフェアゆえに、写真作品が多いわけではないのは想像がつくだろう。でもThe Third Gallery Ayaでは、Gallery Side 2では 石内都、タカ・イシイギャラリーでは 田附勝と山本悍右、小山登美夫ギャラリーでは 東松照明、TARO NASUでは 蜷川実花、URANOでは潘逸舟、Misa Shin Galleryでは彦坂尚嘉といったように、相対的に日本のギャラリーの多くは、写真作品を展示販売していた。作風や年代も違えば、ブースに複数いる作家のひとりであったり、個展形式だったりと扱い方に差はあるが、アートバーゼルという場でギャラリーが写真作品で勝負をすることは、重要な意味を持っているはずだ。 松江泰治
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