いま世界の写真シーンにおいて、もっとも大きな地殻変動があるのは東アジアではないだろうか?今回は、『IMA』Vol.19掲載の特集「台頭する東アジアの写真シーン」より、中国写真の急速な進化を牽引する写真祭や出版社、若手支援のアワードなどを紹介。また本誌で取り上げた気鋭の中国人作家たちの中から、2組の写真家デュオの未公開インタビューなども収録し、充実の内容でお送りする。
文=編集部
近年、中国の写真シーンの国際化と若手育成に一躍買っているのは、各地で開かれている国際写真祭だろう。写真評論家のグー・チェンが中でも注目するのが、昨年12回目を迎えた老舗フェスティバル、連州のLianzhou Foto Festival、そしてアルル写真フェスティバルのディレクターと北京の写真センター三影堂撮影芸術中心を主宰するロンロンが発起人となり、2015年に集美でスタートしたJimei x Arles International Photo Festivalである。チェンは、「両者の共通点は、国際性。キュレーターや写真祭が設ける写真賞の審査員などは、かなりの数を外国人が占め、両者とも外国人作家による展示を写真祭のメインに据えている。もうひとつは、現代アートとしての写真と伝統的な写真の両方を一堂に集め、写真表現の可能性を追求していること」という。中国の写真家たちが世界の最前線の表現に触れ、写真を通した国際交流が活発化することは、これらかの中国写真に多くのプラスの影響を与えるに違いない。
ヤン・ユアンユアンによるユニークなインスタレーション。Courtesy of Jimei x Arles International Photo Festival
中国の現代写真を海外に発信するプロジェクト「Go East Project」主宰のホー・イニンは、次世代が盛り上がりを見せるインディペンデント出版に注目する。「写真集だけでなく、『Brownie』、『Imageless』などの写真雑誌も人気を博しているのが新たな傾向。昨年は、Jimei x Arles International Photo Festivalで行われたPhotobook Marketや、abC/f(art book in China)、Fotobookfestival Kassel/ Beijingなど、多くのアートブックフェアや写真集を軸とした展示が開かれました」。いまや世界の写真集賞の常連ともいえる出版社Jiazazhi Pressは、地方自治体の支援を得て、図書館、書店、ギャラリーからなる写真の複合施設をオープン。上海ベースのグラフィックデザイナーと写真家による出版レーベルSame Paperは、2015年から書店Closing Ceremonyを運営している。海外のブックフェアで中国の若き才能を世界へと発信する出版社が、国内での発表の場を整えていることも、自費出版の勢いを支えているようだ。本誌では、ホーがオススメする出版社や雑誌をさらに詳しく紹介している。
Jiazazhi Pressがオープンした写真の複合施設のブックストア。
これから世界に羽ばたく気鋭の作家を知りたい方は、登竜門となるアワードをチェックしよう。写真家のロンロン&インリが主宰する写真センター、三影堂撮影芸術中心が若手育成を目的に設立した三影堂撮影賞は、今年で9回目を迎える。これまでにジャン・シャオやレン・ハンなどを輩出してきた賞で世界的にも認知度が高く、第一線で活躍する審査員たちに選ばれたファイナリストたちのグループ展は新たな才能を発掘する絶好の機会。もうひとつの若手を対象とした写真賞New Talent Awardは、Jiazazhi Press、前述のホー・イニンなど次世代のキーパーソンと、、 アレック・ソス、Foam写真美術館のマルセル・フェイル、そしてG/P Galleryの後藤繁雄が審査員を務めて話題を呼んだ。さらなる国際化を図るアワードが築く文脈にも注目したい。 クリスティーナ・デ・ミデル
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プロセス自体を作品化する、注目の若手写真家デュオ
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