7 August 2018

How to enjoy Les Rencontres d'Arles 2018

写真フェスティバルを楽しむための10の方法【アルル国際写真フェスティバル編】

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フランス

7 August 2018

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写真フェスティバルを楽しむための10の方法【アルル国際写真フェスティバル編】 | How to enjoy Les Rencontres d'Arles 2018

LUMA財団が大規模なアートセンターを建設している影響も受けて、この南仏の小さな街のフェスティバルは年々拡大し続けている。今年のテーマは「Back to the future」。過去と未来を行き交う時空を超えた36もの展覧会が9月23日(日)まで開催中だ。メイン展示のほか、写真集フェア、夜のプロジェクション、ポートフォリオレビュー、ワークショップ、サテライト展示「Voies off」など、見所は盛りだくさん。49回目を迎え、最も歴史のあるこの祭典のオープニングの週には、世界中から写真界の著名人が集結し、過去に例のない盛り上がり方を見せている。夏の太陽が強く降り注ぐ、陽気な雰囲気の中、実際のレポートも交えながら写真フェスティバルを楽しむための方法を紹介する。

文・写真=糟谷 恭子
Text&Photos: Kyoko Kasuya

(1)事前の準備はどうすればいいの?

事前に地図を見てどこを巡るかとルートを決めよう!プログラムや地図が盛り込まれたアプリを携帯にダウンロード。出かける前に、このアプリで気になる展覧会やイベントをチェックしよう。紙のマップがないと不安という方も、チケットを購入する際に受付でゲットできるので安心。


(2)展示を楽しむには?

毎年趣向を凝らした展示が見所のアルル国際写真フェスティバル、中でも今年の一押しである3つの展示を紹介。

ポール・グラハム「The Whiteness of the Whale」

今年のアルルは、ここ60年にわたるアメリカの歴史をテーマにロバート・フランクやレイモン・ドゥパルドンなどの大御所が名を連ねる「America Great Again」という括りの展示群を開催。中でも、ポール・グラハムの「The Whiteness of the Whale」は13世紀に建設されたゴシックスタイルの教会が会場になっており、出版社MACKから2015年に発売された写真集をもとに構成された展示で必見。「American Night」(1998–2002年)、「a shimmer of possibility」(2004–2006年)、そして「The Present」(2009–2011年)というトリオロジーでの構成になっている。「American Night」では、ぱっと見では何が写っているかわからない露出オーバーのイメージとカラー写真の組み合わせによって、現代アメリカ社会の中に存在する逃れることのできない「階層」を示唆している。

「a shimmer of possibility」ではアメリカ大陸を旅行しながら、直接的ではない方法で被写体にアプローチし、切り取るプロセスを経て、そこに流れる時間と占領する空間のバランスを、叙事詩的に構成されている。サイズの大きいプリントは天井の高い教会であるからこそ、圧迫感なくゆっくり鑑賞することができる。

Paul Graham, La Nouvelle-Orléans, série a shimmer of possibility [un scintillement de possibilités], 2003-2006. Avec l’aimable autorisation de Pace/MacGill Gallery, New York ; Carlier | Gebauer, Berlin ; Anthony Reynolds Gallery, Londres.

ポール・グラハムの展示風景 © Kyoko Kasuya

Croisière クロワジエール

去年から使用されている新しいスペースでは、今年はさらに空間を拡張し、もともとガレージだった建物の2階部分も使用して、10もの展覧会が開催されている。ポップアップの書店やトロピカルな雰囲気のカフェバーなど疲れた体をリラックスさせるスペースも設けられている。その中で一押しの展示は、「MINUIT À LA CROISÉE DES CHEMINS(真夜中に交わる道で)」。会場の古い建物の構造を残し、うまく利用した展示の方法は必見。作家のクリスティーナ・デ・ミデルとブルノ・モライスは「Ésù」と呼ばれる神と人間の間に存在する架空の伝達者によって、アメリカ大陸の歴史と切っても切れない関係性のあるアフリカの源へと導かれる。4つの国ベナン、キューバー、ブラジル、ハイチでいまでも根づく古代大陸のビビッドで不思議な世界観を、神秘的なストーリーで展開する。

Cristina de Middel & Bruno Morais, Untitled from the Midnight at the Crossroads series, Benin, 2016. Courtesy of the artists.

Croisiere展示風景 © Kyoko KASUYA

ポール・フスコ、レイン・イェレ・テレプストラ、フィリップ・パレノの3人展「The Train」

1968年6月8日、アメリカの政治家ロバート・F・ケネディー暗殺された。その3日後、遺体はニューヨークからワシントンへと電車で輸送された。その際に同じ電車から、国民が最後のあいさつを送る様子を写し取ったポール・フスコの有名なシリーズを題材に、オランダ人作家レイン・イェレ・テレプストラとフランス人作家のフィリップ・パレノが呼応する。

テルプストラは、ニューヨークからワシントンにかけて最後の旅にまつわる人々が集めたアーカイブをまとめ、工夫を凝らしたインスタレーションを展開。パレノはフスコの写真からインスピレーションを得て、70ミリで映像を当時の別れのシーンをリメイクし、オリジナルの作品との間を行き交うダイアローグを提示する。

その隣では2010年に亡くなったファッション界の伝説ともいえるアレクサンダー・マックイーンの華麗な未公開バックステージが垣間見ることができる「LES INACHEVÉS – LEE MCQUEEN」が開催。フランス人写真家のアン・レイの撮影によるもの。

「The Train」展でのレイン・イエレ・テレスプトラのインスタレーション © Kyoko Kasuya

Paul Fusco/Magnum Photos, sans titre, série RFK Funeral Train, 1968. Avec l’aimable autorisation de la Danziger Gallery [pour toutes les photographies].


(3)あの写真家と出会うためには?

出展作家との距離が近いのもフェスティバルの醍醐味、3つのチャンスを確認して憧れの作家に会ってみよう。

作家による展示ガイドに参加しよう!

展示を見る際に作品の制作の経緯を紹介し、ガイドしてくれるツアー。フランスの若手新鋭写真家に贈られるBMW賞のアートディレクターで元ニエプス美術館館長のフランソワ・シュバルと、昨年度BMW賞を受賞したバチスト・ラビションがレジデンスで制作した作品「EN VILLE(街の中で)」を発表し共同でガイドツアーを行った。

展示ガイド風景

© Kyoko Kasuya

サイン会に行こう!

オープニングの週はサイン会が行われており、メインの受付会場のCours Fantonではレイモン・ドゥパルドンが展示に合わせた写真集を販売し、サイン会を行なっていた。先月発売したばかりの日本についての写真集『Japon Express』も販売していたのでそちらを購入!早速サインをしてもらう。

サイン会風景

© Kyoko Kasuya

また街中ではルイヴィトンがポップアップ書店を開いており、世界の首都のガイドブックを有名写真家とダックを組み発行したものを発売していた。ゲストでピーター・リンドバーグが招かれており、そこでもサイン会を行っていた。

ポップアップ書店

© Kyoko Kasuya

トークショーを聞こう!

作家だけではなく、キュレーターなどの著名人もイベントに参加している。偶然出くわしたのは元テート美術館写真専門キュレーターのサイモン・ベーカーとフランス人美術評論家のナターシャ・ウォリンスキのトークショー。ベーカーは今年の4月にパリにあるヨーロッパ写真美術館の館長に就任。その経緯やフランスとの関わりについて和やかな雰囲気で対談していた。

トークショー風景

© Kyoko Kasuya


(4)ディープな楽しみ方をするには?

展示作品の裏側を知っていると、見る時によりディープに楽しむことができる。ここでは少し変わったストーリーを持った、“通”おすすめの展示を紹介。

ルネ・ ブリ「THE IMAGINARY PYRAMIDS」

1958年、マグナム・フォトのメンバーでもあったルネ・ブリはエジプトを初めて訪れそびえ立つピラミッドに驚嘆した。人間の手によって人工的に作られた巨大な山が突如砂漠に姿をあらわすパノラマは、スイスの大自然に囲まれて育ったブリにとっていままでに考えられなかった光景だったのだ。それからメキシコやグアテマラやのピラミッドにも魅了されるだけでなく、彼の目には三角形のものが無意識にピラミッドとして解釈されるようになり、世界の至る所で見つけた想像上のピラミッドを収集するようになった。それは建物の屋根であったり、富士山であったり、インド人のテントであったり。写真祭のディレクター、サム・ストウゼ自身がキュレーションを手がけ、アーカイブのドローイングや写真を組み合わせた大変ユニークな展示。

René Burri, Canada, Montreal, 1967. René Burri © Magnum Photos. Fondation René Burri. Avec l’aimable autorisation du musée de l’Élysée.

実際の展示風景 © Kyoko KASUYA


ジョナス・ベンディクセン「THE LAST TESTAMENT」

世界でイエス・キリストの生まれ変わりと称した7人の男性を追った、コミカルなルポタージュ風な写真展。ロシア、スカンジナビア、日本、南アフリカ、ブラジルなどの国で出会ったイエスの再来とその周りを取り囲む人々とのやり取りをジャーナスリスティックなアプローチだけでなく、自らのイマジネーションも盛り込んで作り上げた作品。会場のサン・タン教会スペースを思う存分生かしスペキュタクラーに仕上げ、多くの観客を魅了していた。

Jonas Bendiksen, INRI Cristo is wheeled around their compound on a rolling pedestal. INRI are the initials that Pontius Pilate had written on top of Jesus' cross, meaning Jesus Christ, King of the Jews. Brazil, 2014. Courtesy of Jonas Bendiksen/Magnum Photos.

実際の展示風景 © Kyoko KASUYA

グオ・ユンクオン(郭盈光)「THE BLISS OF CONFORMITY」

2016年より中国の集美(ジメイ)ではアルル写真祭とダッグを組み、ジメイ×アルル国際写真祭が行われている。Guo Yingguangの作品「THE BLISS OF CONFORMITY」は、昨年度 マダム・フィガロ賞を獲得し、今年のアルルに招待された。適齢期を迎えた娘や息子を持つ親の心配と、その間にいる子供の葛藤や悩みがテーマである。中国では親が先陣を切って公園などの公共の場所に集い、独身の息子のプロフィールを片手に相手を探す風習が見られる。作家自身もパフォーマンスと称しこのシステムで相手探しをも試みる。その中で自らが体験したこと、作者自身の過去の記憶、社会からの女性への軋轢をうまく包括し、写真だけではなく、テキスト、インスタレーション、写真集というさまざまなメディアを構成することで成り立った展示。

Yingguang Guo, Untitled, from The Bliss of Conformity series, 2015. Courtesy of the artist.

実際の展示風景 © Kyoko KASUYA


(5)お土産を買うには?

展示会場ではさまざまなグッズが販売されている。一番売れているグッズは?と売り子の方に伺ったところ、カタログが一番売れているとのこと。その次は扇子!アルルの日差しはとても強く、風があまり街中を通り抜けることがない。

© Kyoko KASUYA

© Kyoko KASUYA

展示会場の屋内は冷房が効いている場所が少ないため、扇子は必須アイテム。モデルは今年、第一回目に開催の「Dior Photography Award for Young Talents」日本代表作家の櫻井麻衣さん。


(6)お腹が減ったら?フェスティバル会場のもうひとつの楽しみ

おすすめはアルルの名物といっていいほど有名なサンドイッチ屋さん「Fadoli et Fadola」。毎年アルルに来る関係者の人気スポット。持ち運びも楽で、片手で食べることの出来るサンドイッチはたくさんの展示を急いで見なければならない人にも最適!

チケット売り場のお姉さん方からの一押し! レピュブリック広場にある2軒の手作りアイスクリーム屋さん。暑い中食べるモヒート味のソルベは最高!

© Kyoko KASUYA

© Kyoko KASUYA


(7)夜のフェスティバルを楽しむには?

オープニングの1週目にはThéâtre Antique(古代劇場)で夜10時より「LES NUITS(夜)」というタイトルのプロジェクションが数回設けられている。昨年から今年にかけて出版されたより優れた写真集に与えられる賞PRIX DE LIVRE 2018の発表や、それに付随する関連作品のプロジェクションおよび朗読も行われた。また別の日にはダミーブックアワードの受賞作品の発表や、90歳を迎えたウイリアム・クラインをゲストに1968年5月の革命時に撮影された作品のプロジェクションも行われた。

LES NUITS(夜)

© Kyoko KASUYA


(8)ポートフォリオレビューに参加するには?

フェア中にはテートギャラリーのサラ・アレンや、KYOTOGRAPHIEでキュレーターも務めたフランス人キュレーターのパスカル・ボースなど世界中から130人ものエキスパートが集結し、彼らに直接アドバイスを受けられる豪華な講評会Photo Folio Reviewが開催。5月からオンラインでエキスパートを選び予約購入が可能。1セッション当たり20分の真剣勝負。毎年このレビューで選ばれた優秀な1作品は、翌年のアルル国際写真祭で展覧会というビックなチャンスも与えられるのがこの企画の醍醐味でもある。今年のレビューの申し込みは終わっている為、気になる人は来年の情報を見逃さないようにチェックしよう。

関連記事: 世界を目指す写真家のためのリスト vol.2 写真のプロフェッショナルからのアドバイスを得られる、ポートフォリオレビューとワークショップ

ポートフォリオレビュー風景

© Kyoko KASUYA


(9)写真集を楽しむには?

オープニングの1週目だけに開催の企画「COSMOS ARLES BOOKS」は写真集が好きな方には一押し!世界中の写真に特化した書店が、旧ミストラル中学校舎の会場でスタンドを出し、選りすぐりの写真集を並べて販売する。この企画に合わせてサイン会やイベントも毎日催され、たくさんの人で賑わいを見せていた。日本からはAKAAKAと小宮山書店が参加。

© Kyoko KASUYA

© Kyoko KASUYA


(10)メイン会場以外を楽しむには?

アルル写真祭は規模がどんどん拡張していて「グランド・アルル・エクスプレス」と称し、マルセイユ、アビニョンなどの近郊の街でも大きな写真展が開催されている。ヴォルフガング・ティルマンスがここ数年の間に制作した作品を、ニームのカレ・ダール美術館のスペースに合わせサイトスペシフィックに構成した「QU’EST-CE QUI EST DIFFÉRENT ?(WHAT IS DIFFERENT?)」がおすすめ。電車で30分の距離なので気軽にアルルからアクセスできる。

Wolfgang Tillmans, Springer, 1987

Wolfgang Tillmans, Springer, 1987. Avec l’aimable autorisation de la Galerie Chantal Crousel, Paris et Galerie Buchholz, Berlin/Cologne.

タイトル

「アルル国際写真フェスティバル」

会期

2018年7月2日(月)~9月23日(日)

URL

https://www.rencontres-arles.com/en

2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。

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