23 March 2017

Talk
Masahiro Higashide × Satoshi Machiguchi × Masaru Tatsuki

新しい世界を“感じる”旅から生まれた、比類なきドキュメンタリー

23 March 2017

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東出昌大×町口覚×田附勝「新しい世界を“感じる”旅から生まれた、比類なきドキュメンタリー」 | 鼎談 東出昌大×町口覚×田附勝

© Masaru Tatsuki

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―この写真集には「嘘がない」と感じられたそうですが、例えばどういう写真にそれを感じましたか。

東出:自分でもこんな顔をするんだっていう表情とか、自分でも見たことない顔ばかりなのは本当に驚きました。中にはやっぱり29年も歳を重ねていくと、人って邪悪な顔もするんだっていうのもあるし(笑)。

田附:今回は瞬間的に判断してシャッターを押していると思う。いつもの自分の撮影だと、ポートレイトにしても、その人を撮りながら何かに置き換えて撮っている部分がある。でも今回は東出さんがその瞬時に何を感じているかの方が重要だから、それこそ狩猟に近かった。

町口:ほんとそうだと思う。

鼎談 東出昌大×町口覚×田附勝

© Masaru Tatsuki

田附:今回は狩猟のために尾根を歩いているときとか、海で船に乗っているときに、普段は使わない機動性があって瞬時に撮影ができるカメラを使っていたこともあるかもしれない。

町口:ものすごい量を田附は撮っているけど、ほとんどの写真が、東出くんが感じているところを撮る以上に、田附がその先に行こうとしている感じが写真全体を通して伝わってきた。

東出:海の上で、「船は走っているし、冬の青森だし、落ちたら死んじゃうよ」と漁師さんがいっている横で、首からカメラを2台ぶら下げた田附さんが、僕を撮ろうとしながら波に揺られて落ちそうになっていて(笑)。こっちは「危ない!」って思っているのに、カメラを構えようとする目が全然怯んでなくて、旅も終盤で気持ち的にもクライマックスでした。

田附:ドキュメンタリーって、言葉はなくても写真で通じるのが一番強いと思うから、そこを狙いたいし、この作品も俳優・東出昌大を知らなければ伝わらないものだったら本としても意味がない。それは感覚の話かもしれないけど、そうやって撮らないと写らないと思っているところはあるね。

鼎談 東出昌大×町口覚×田附勝

田附勝

―写真集には、東出さんが身に着けているストールが、水にさらされて単体で写っている写真がところどころ挟まれています。

町口:これは編集上のひとつの仕掛けで、道中どこに行っても必ず出てくるように入れているんです。いわゆる狂言回しです。このストールは、スタイリングをやってくれた伊賀大介くんが、出発の日の朝に手渡してくれたもの。彼はロケに同行できなかったんですが、これは使えると思って、必ず東出くんに身につけてもらいました。写真集の中では場面と場面を繋ぐ重要な役割を果たしていると思います。

―旅の体験は3カ月経ったいまでも身体に残っていますか?

東出:残っていますね。いまでも日記をつけ続けているんですよ。考え続けないともったいないですから。

町口:僕がいつもいうのは、写真集は残すことも大事だと思うんだけど、発売して終わりじゃないと思うんですよ。写真集自体を育んでいくことをしないといけないと思っていて。だからこの写真集も発売して終わりじゃなくて、ここからいろんなところに出かけたり、感じて、考え続けていかなくてはと思っています。それは3人とも同じだと思う。

―この写真集を見ることがきっかけになる人も出てくるでしょうね。

町口:「感じる」連鎖だと思うんだよね。東出くんが感じたことから、何かを感じ取る若い人が出てくるといいなと思って。それがこういう本の役目でもあり、今回の写真集はその可能性がすごくあると思っています。

田附:世の中のタレント本に、何か強力な重い石をバーンって投げつけてやるっていうね(笑)。一人の日本の若者が何を思って俳優となって、何を感じて生きているんだっていうことも問われてもいい時代だと思う。インターネットやSNSの環境が当たり前になって、何もかも露になってしまう時代に、表層ではない核になる部分の断片を見せたかった。いままでの俳優写真集とは違った形で提示できて、次のステップに行くひとつの試金石みたいなことになれば今回やれたことは本望だし、実際この3人でやれたと思います。

東出:という、ものすごい生意気な3人の主張が詰まった写真集なんです(笑)。

タイトル

西から雪はやって来る

著者

東出昌大、町口覚

写真

田附勝

価格

2,980円+tax

仕様

B5版変型/224ページ

ISBN

978-4-8002-6062-8

URL

http://tkj.jp/book/?cd=02606201

東出昌大|Masahiro Higashide
俳優。1988年埼玉県生まれ。2012年に映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。同作で第36回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。翌年、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』で注目を集める。近作に、映画『クリーピー 偽りの隣人』、主演映画『デスノート Light up the NEW world』など。羽生善治役を演じた映画『聖の青春』では第40回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。今後の出演作として、テレビNHK大河ファンタジー『精霊の守り人』シリーズ、映画『関ヶ原』(2017年8月26日公開予定)など。

町口覚|Satoshi Machiguchi
グラフィックデザイナー、パブリッシャー。1971年東京都生まれ。「マッチアンドカンパニー」主宰。森山大道、蜷川実花、大森克己、佐内正史、野村佐紀子、荒木経惟など日本を代表する写真家の写真集をはじめ、映画・演劇・展覧会のグラフィックデザイン、文芸作品の装丁などを幅広く手掛ける。2005年、自ら写真集を出版するためレーベル「M」を立ち上げ、2008年より世界最大の写真の祭典「PARIS PHOTO」に出展、世界を視野に“日本の写真集の可能性”を追究している。2009年、2015年に造本装幀コンクール経済産業大臣賞、2014年に東京TDC賞などを国内外で受賞多数。

田附勝|Masaru Tatsuki
写真家。1974年富山県生まれ。1995年よりフリーランスとして活動を始める。2007年、デコトラとドライバーのポートレートを9年にわたり撮影した写真集『DECOTORA』(リトルモア)を刊行。2006年より東北地方に通い、東北の人・文化・自然と深く交わりながら撮影を続ける。2011年、写真集『東北』(リトルモア)を刊行、同作で第37回木村伊兵衛写真賞を受賞。写真集『その血はまだ赤いのか』(SLANT/2012年)、『KURAGARI』(SUPER BOOKS/2013年)、『「おわり。」』(SUPER BOOKS/2014年)、『魚人』(T&M Projects/2015年)など。

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