Interview
Kensuke Koike

小池健輔「FOREVER MINE」
パリの気鋭ギャラリーでの滞在制作を経て、新作が生まれるまで

AREA

フランス

9 January 2020

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小池健輔「FOREVER MINE」パリの気鋭ギャラリーでの滞在制作を経て、新作が生まれるまで | © SEPTIEME Gallery & Alessandra Chiericato

© SEPTIEME Gallery & Alessandra Chiericato

ヴェネチアを拠点に活動をする現代美術作家、小池健輔は、ヴィンテージフォトや古いポストカードを用い、錬金術師のようにイメージを巧みに操る。現在では世界中で展示をしながら精力的に活動を続けている。昨年10月、小池はパリにオープンしたばかりのSeptieme GalleryとThe Roomが企画した「レジデンス・イン・ギャラリー」に参加し、展示スペースでの滞在制作という新しい試みに挑戦した。その最新の活動を、小池の言葉とともに振り返る。

インタビュー・文=糟谷恭子

© SEPTIEME Gallery & Alessandra Chiericato

© SEPTIEME Gallery & Alessandra Chiericato

© SEPTIEME Gallery & Alessandra Chiericato


今回の展示の発端は、インディペンデントキュレーター、アレッサンドラ・チェリカートの提案から始まったという。「以前、アレッサンドラはヴェネチアのA plus A galleryが行なっているキュレーターの育成講座で学んでいました。そこでは一年を通して9カ月イタリア人、3カ月は外国人が学べるカリキュラムになっており、僕がそこに教えに行ったことがきっかけで知り合いました」。

SEPTIEME Galleryは、ジュリー・バナトレとレア・ペリエ・ロコという二人の女性ギャラリストがダッグを組んで運営している新しいギャラリー。アレッサンドラは、この二人のギャラリストと以前一緒に働いていたことが縁で、アーティストを招き、ギャラリーでレジデンスをするという面白い企画を今回始めることとなった。このプロジェクトはThe Roomと名付けられ、別の国や都市のギャラリーや美術機関と提携を組んで作家をピックアップしている。展示するスペースで滞在制作をしてもらい、その場で発表するというシステム。小池はその最初のアーティストとして選ばれた。

 

ギャラリストのジュリー・バナトレとレア・ペリエ・ロコ© Nicola Lo Calzo

Forever Mine © Kensuke Koike

Forever Mine © Kensuke Koike


プレスリリースには作品に写っている女性と恋に落ちて、作品のモチーフとして選んだと書かれている。「この写真はパリに到着してから2日目に訪れた小さな蚤の市で偶然にもモチーフになった6、70年代に撮られた女性の写真に出会いました。まっすぐな視線を注ぐ彼女の表情はとても印象的で、僕は彼女の写真だけを使って作品を制作することに決めました。パリで作品を作るからにはパリで巡り合った人物と制作しないと面白くないですよね?自分のアトリエではないところで制作するのであれば、サイト・スペシフィック性のあることをしないと意味がないと思います。また、今回は、彼女だけに専念して制作することになり、独り占めをするというコンセプトなので、展覧会のタイトルを「FOREVER MINE」にしたんです」。

© SEPTIEME Gallery & Alessandra Chiericato

© SEPTIEME Gallery & Alessandra Chiericato


滞在制作中はギャラリーを開放し、ビジターも自由に見学できる試みをしていたという。「基本的に午前中から夜中まで作業をしていたのですが、日中ギャラリーに入ってきた人は、僕の作業を観察していることが多かったです。時間が限られているため、黙々と制作を進めなければならなかったので、会話をすることはほとんどありませんでした。夜はギャラリーのガラス越しに作業をじっと眺めている通行人がいるのを目にしました。なかなか反応がよかったように思えます」。

とはいえ今回は2週間という短期間で約60点もの新作を制作している。制約の中で作品を制作することはどのような効果をもたらしたのだろうか。「もともと作品を制作に関してのノウハウの蓄積があり、それをアウトプットするだけだったので、プレッシャーはあまり感じませんでした。最初の2、3日は、いままで取り入れてきた幾何学模様などを使ってイメージを作っていきました。ある程度まとまった作品数が出てきたら、気の赴くままに作業をする。自由奔放に作業を始めるとかなりインパクトのあるイメージが現れるのですが、あまりに強烈だとほかのイメージとの調和が保たれないので、それは採用しなかったりと、試行錯誤をしながら完成させました」。新しい環境の中で、奮闘しながらも自身のこれまでの経験が生きた結果となった。「ギャラリーでの制作がいいと思ったのは、作った作品を直接壁に貼って全体像がすぐに見られることです。今回はA2サイズで80枚ほど作品がかかっていますが、実際手を加えたのは66枚。何も手を加えていないイメージも混ぜています。最初はギャラリーの壁を全部埋め尽くそうとしたのですが、作業を進め壁に貼っていくうち全てに手を加えるとやりすぎであることに気がつき、いまの形態になりました」

© SEPTIEME Gallery & Alessandra Chiericato

Kensuke's Room, Forever Mine - vue d'exposition_ SEPTIEME Gallery

小池とギャラリスト2人、本展のキュレーターアレッサンドラ・チェリカート© Septième Gallery


「作品を作る上では常に大事にしていることなのですが、パリで制作をしていて改めて感じたのはノウハウを蓄積することの面白さです。作業中にだいたいの結果は見えていますし、どうなっていくかは大概わかってしまいます。作業を繰り返すことで、飽きそうになるときにも、ぐっと我慢して、うまくモチベーションを保ちながら作業をすることでノウハウを蓄積していくことが大事だと思っています。インスピレーションの部分では、パリの窓枠や外観のステンドグラス、鉄格子の模様や、組み合わせなどを見ることで、アイディアとして取り入れることができました」。新しいギャラリーとのコラボレーション、そしてパリという場所での体験は、作家に新しいインスピレーションをもたらしたようだ。

タイトル

「KENSUKE’S ROOM – FOREVER MINE」Curated by Alessandra Chiericato

会期

2019年12月14日(土)~2020年1月18日(土)

会場

SEPTIEME GALLERY(フランス)

URL

https://septiemegallery.com/en/home-en/

小池健輔|Kensuke Koike
1980年、名古屋生まれ。人間の想像力や知覚をテーマに、ヴィンテージ写真を使ったコラージュ作品を制作している。イタリアを拠点に活動。近年の主な展示に「To Wolf」(A plus A Gallery、イタリア)などがある。2017年のGuangzhou Image Triennial(中国)ではトーマス・サルヴィンとのコラボレーション「No More, No Less」を展示した。2018年にニューヨークのPostmasters Galleryにて個展を開催。