カルチャー、ファッションシーンを常に牽引しているヒットメーカー・藤原ヒロシ。彼が主宰するフラグメントデザインがこのたびライカとコラボレーションし、二つの特別限定モデル「ライカM10モノクローム “fragment Edition”」「ライカQ2モノクローム “fragment Edition”」を発表した。ライカを代表するM10とコンパクトデジタルカメラのQ2を藤原らしくシンプルな漆黒にカスタム。しかも双方モノクロタイプというのが写真好きの心をくすぐる。自身もカメラを愛用し、日常をスナップしている藤原にライカについてインタヴュー。話は写真に対する姿勢や原体験にまで及んだ。
撮影=竹澤航基
取材・文=IMA
―まずライカとの出合いを教えてください。
初めて購入したのはフィルムのライカMPです。“ライカ”というブランドは以前から知っていて、当時(2003年)MPが最新モデルだったので、買ってみました。
―使ってみていかがでしたか?
正直MPはあまり使いませんでした(笑)。フィルムなのでプリントが面倒というのと、持ち歩くにはちょっと重かった。
でもデジタルになったライカM8からほぼすべてのM型ライカを買っています。
―ほぼすべて!それはすごいですね。今回コラボした2機種もお持ちですか?
ライカM10は持っています。M型の形が好きなんです。また、慣れているので使いやすい。マニュアルフォーカスは、写真を撮っているというと感じがします。レンジファインダーは難しいといわれますが、ライカは最初からM型を使っているので、そういうもの、という感じですね。
ライカQ2は持っていませんが、オートフォーカスなので使いやすそうです。
―そもそもこの2機種になった理由は?
Q2のモノクロームモデルが出るタイミングにお話を頂いたので、このモノクロの2台となりました。いろんなデザインを試したんですが、結果的に自分が使うことを考えるとシンプルな黒が良いと思って、オールブラックに落ち着きました。外装の革もマットな質感のカウハイド(柔らかい牛革。丈夫なのが特徴)を選んでいます。
この現代で白黒しか撮れないなんて、ある意味贅沢ですよね。しかも画素数が高い。不便かもしれないけど、モノクロはなんでもカッコよく撮れてずるいですよ(笑)。
―以前のIMA ONLINEでのインタヴューで「ライカ力」があると仰っていました。
「ライカ力」はいまでも信じています(笑)。ライカで撮るとなんでもカッコいい。ピンぼけでも「わざと」といえるのがライカじゃないですか。いま、オートフォーカスが主流なので逆にピンぼけは難しいですけどね。
―ライカは独特のぼけ味のあるレンズがとても人気です。お気に入りはありますか?
アポ・ズミクロンの35mmをよく使います。僕はオールドレンズのぼわーっとした感じよりも、現代的なビシっとした写りの方が好きですね。ぼけ味は変わらずライカなので。
―お詳しいですね。そもそも写真に触れるきっかけはあったんでしょうか?
親戚がカメラ屋をやっていて、母がそこで働いていました。そのため子どもの頃よく遊びに行っていたんです。プリントもしていたので、僕も現像したりして。暗室が遊び場でしたね。プリントを浸けておくと、画像が出てくるというのが面白かった。現像液の匂いはいまでもよく覚えています。
―またプリントしたいとは思わないですか?
思わないですね(笑)。
やはりデジタルカメラは便利です。最近ではスマホのカメラの解像度も雑誌に耐えうるレベルになりましたし。
―ライカのスマートフォン、ライツフォン1もお持ちですか?
持っています。綺麗に撮れますね。
スマホは、ライカ開発のカメラが搭載されたファーウェイもすべて持っています。というのも、コロナ前はミラノに仕事で月1回ペースで行っていたんですが、トランジットするフランクフルトの空港のラウンジの目の前がポルシェストアで、ポルシェデザインによるファーウェイのスマホが置いてあるんです。
ラウンジの真ん前なので毎月チェックして(笑)。新機種が出るたびに購入していました。
―すごいライカ好きですね(笑)。いま、主に使用しているライカは?
ライカM10-Dが気に入っています。
―M10-Dは背面にモニターがないので難しくないですか?
モニターはあってもなくても良いですね。僕は写真を撮るのが楽しいというわけじゃなくて、なんとなくごく自然に撮っているんです。こう撮りたいというイメージも特になく、そこにあるものを記録している。アウトプットを見たら「こんなふうに撮れたんだな」と思うだけで、自分のアーカイブになればいいかなと。
写真集にするつもりもありませんし。なので、最近撮ったものは全然見ていませんね(笑)。いつか、ふとしたときに見返すだろうと思います。
―愛用のM10-Dのトップカバーにはご自身の名前をラベリングしているんですね。コラボモデルもネームラベル用に同部分が空いています。
本当かどうかわからないのですが、友人からベトナム戦争の従軍ジャーナリストはみなライカを使用していて、誰のものかわかりやすいようにトップカバーにネームラベルを貼ったと聞いて。
―しかもダイモでレタリングしているんですね。こだわりを感じます。
結構良いダイモがいま売っていて。パチパチレタリングして作っています。
―モノが好きな藤原さんらしいです。ファンが真似しそうですね(笑)
だから特定の写真家が好きというより、好きなのは個別の写真作品。なんというか僕は写真そのものが好きなんですよね。写真もモノですから。
藤原ヒロシ|Hiroshi Fujiwara
1964年三重県生まれ。Fragment主宰。音楽プロデューサー、ファッションデザイナーのほか、多彩な顔を持つ。82年、ロンドンに遊学。83年にニューヨークでDJの現場を体感し、帰国後、日本におけるクラブDJとして活動。85年、高木完と音楽ユニット、タイニー・パンクスを結成。90年代からは自身の楽曲を発表する一方、小泉今日子、藤井フミヤ、UAほか多数のアーティストたちに作品を提供。NIKE、リーバイス、ルイ・ヴィトンなどブランドとのコラボレーションも多数。グローバルにクリエイティヴのディレクションで活躍する。ライカを愛用、アート作品のコレクターでもある。