5 April 2023

岡田舞子インタヴュー、
新作「The sound of the wind」が探求する、
イメージであふれる現代において「見る」ということ

5 April 2023

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岡田舞子インタヴュー 、新作「The sound of the wind」が探求する、イメージであふれる現代において「見る」ということ | 岡田舞子インタヴュー

これまでも日常生活の気づきを起点に、その問いの本質に迫る作品を制作してきた岡田舞子。4月13日(木)まで、東京・銀座にあるソニーイメージングギャラリーで展示している新作「The sound of the wind」では、純粋に美しい景色を追い求め、現代社会において見ること、そして撮影することとは何かというストレートな問いに向き合う。ここでは、作品が生まれた経緯やプロセス、タイトルにある「風の音」という、目には見えない要素の役割などを尋ねてみた。

インタヴュー・テキスト=IMA
写真=西村満

―新作「The sound of the wind」のアイデアが生まれたきっかけを教えてください。

新型コロナウイルスの感染拡大が急速に広がった時期に、風を可視化するイメージが頭の中に浮かんだのが、まずひとつのきっかけでした。また、その頃は外出が制限されていたので、Pinterestのような画像検索サイトをずっと眺めていたんです。美しい景色の写真を一枚見たら、同じような関連イメージがたくさん出てきました。その美しさは理解できるけど、私もその場に行ったら撮れると思えるようなイメージが多かったですし、そこに個性を見いだせませんでした。それでも気づいたらオンラインでの画像検索を毎日繰り返していて、コロナが長引く中で、ものの見方が鈍ってきているように感じていました。そして、どうしたら美しい景色を自分が「見た」と認識できるか考え始めたんです。

 ちょうどその時期に電子ビューファインダー使い始めたのも重なっていて、撮影時はフィルターを通してしか外の世界を見えないので、「写真を撮った」という感覚も鈍っていくように感じていました。撮影したい気持ちは高まるけど、結局撮ったところで実感がなく、身体的に撮影の終わりを感じなくなったので、プロセスに重要性を見出すようになりました。

―いろいろなタイミングが重なったんですね。身の回りに膨大な数のイメージがあふれている現代においては、実際は行ったことのない場所であっても、写真を通して見たような、知ったような感覚になる傾向がありますよね。特にコロナ禍は外出できなかったので、美しい景色を求めていた気がします。

そうですね。「美しい」の定義は人によって違いますが、私が美しいと思う場所が美しく見える時間帯を狙って、その場所を何度も尋ねました。以前撮影した写真をプリントしたものを分割し、それらを吊るしてもう一度写真を撮る経験によって確実に見たと思える感覚に変わっていくのがすごく面白かったです。それは視覚を使うだけではなく、その場で音を感じ、身体を使ってセットアップする工程を通して、見たという認識を確かめるような行為でもありました。

© Miko Okada

© Miko Okada


―現場でのプロセスを具体的に教えていただけますか?

私たちはフレームの中で世界を見ることが多いので、同じ場所で過去に撮った写真を分割して、テグスで吊るすことにしたんです。その場所が、過去の写真と同じように見える瞬間は絶対にないのですが、別の日に同じような時間帯を狙って、同じ画角で撮影しました。

―過去に同じ場所を撮影した写真と背景との間にズレがあり、時間の経過が感じられます。

イメージが重なるように撮影していましたが、天候は自分の意思ではどうにもできないですよね。例えば、雪景色を撮影した一枚があるのですが、雪が撮影時と同じように積もることはありませんでした。白い花が咲いている写真も、撮影した翌日の朝に雨が降り、次に行ったときには花が全て落ちてしまっていました。そういったコントロールできない部分やハプニングがあったのが面白かったです。

―撮影したという感覚は、いつ訪れるのでしょうか?

海でも山でも風はずっと吹いていて、撮影するときもどの瞬間を撮るか選んではいるのですが、何千枚も撮影した中から1枚を選ぶことでしょうか。その最後の選択によって、撮影したと感じます。

© Miko Okada

© Miko Okada


―話が戻りますが、最初の質問の答えで、風を可視化するイメージが頭に浮かんでいたとおっしゃっていました。なぜ風だったのでしょう?

見るという行為においては、見るだけでなく、その場で音が聞こえたり、触れたりすることも重要だと考え、見ることを表現するために写真の中にもうひとつのレイヤーを加えたいと思いました。最初は手探りだったのですが、風を視覚化すれば、もっと見ることにつながるのではかと思ったんです。

―今回の展覧会では10点展示されていますが、どのような基準で選びましたか?

説明的な要素より、私が純粋に美しいと感じる感覚を優先して選びました。実は、今回初めて額装した状態で写真を展示しています。平面作品として写真を展示したい思いがありましたし、額に入れるのは、写真にとってかっこいい見せ方だと考えていて。あと、一点大判の布にプリントした作品をインスレーションに使用しています。揺れる布が会場にあることで、作品の世界観をより感じてもらえたらと思っています。

© Miko Okada

© Miko Okada

タイトル

「The sound of the wind」

会期

2023年3月31日(金)~4月13日(木)

会場

ソニーイメージングギャラリー(東京都)

時間

11:00〜18:00

URL

https://www.sony.co.jp/united/imaging/gallery/detail/230331/

岡田舞子|Miko Okada
1993年、岩手県生まれ。2014年に日本写真芸術専門学校を卒業。出版社スタジオに勤務後フリーに。2019年Nonio Art Wave Award 審査員特別賞名和晃平選受賞。主な展示にLUMIX MEETS BEYOND 2020(アムステルダム、東京、パリ/2019)、T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO(京橋、東京/2020)など。

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