11 June 2026

第三の文化を織る――シアスター・ゲイツが「アフロ民藝」の先に見出すもの

11 June 2026

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第三の文化を織る――シアスター・ゲイツが「アフロ民藝」の先に見出すもの | 第三の文化を織る――シアスター・ゲイツが「アフロ民藝」の先に見出すもの|Theaster Gates インタヴュー

2024年の森美術館での大規模展「アフロ民藝」で一気に日本での認知が広がったシアスター・ゲイツ。現在は陶芸、彫刻、都市計画、音楽、パフォーマンスを横断しながら、現代美術家として活躍している。アフリカ系アメリカ人の文化と日本の工芸の交差点を探り、制作を続ける彼が、京都のHOSOO GALLERYで着物を軸とした意欲的な展覧会「Glorious Robe」を開催中だ。

織物を生業とするHOSOOとは、「アフロ民藝」展でのコラボレーションをきっかけに、織物や衣服を彼の考える芸術の実践のひとつとして対話を繰り返してきた。密なる関係性から生まれた今回の作品群について、その背景とビジョンを語ってもらった。

取材・文=アイヴァン・ヴァルタニアン

常滑での原体験、陶芸が開いた世界

――あなたは、アイオワ州立大学で陶芸と都市計画を勉強しました。その後、2003年に初めて日本に来ることになるわけですが、その経緯を教えてください。

シアスター・ゲイツ(以下TG):陶芸学科時代の教授、イングリッド・リリグレンが1990年代に常滑に滞在していました。その教授の師であるポール・ソルドナーという陶芸家が、1980年代に始まったIWCAT(International Workshop of Ceramic Artists and Teachers)という陶芸ホームステイ・プログラムを通じて常滑を訪れていたのです。私は大学卒業後、南アフリカのケープタウン大学の大学院に進み、帰国後は、仕事の傍ら趣味として陶芸を続けていました。「もっと上達したい」とイングリッドに相談したところ、「ついに、あなたが常滑に行く時が来たわね」と言われたんです。

彼女がIWCATの会長に手紙を書いてくれたのは、まだ人々が手紙でやり取りしていた2003年のことです。返事には「この日に来てください」とだけ書かれていました。ホストファミリーの富田家から好きな食べ物を尋ねられ、パイナップル、スイカ、卵と答えたところ、3カ月間、毎朝スイカが出てきました。富田家とは、それから22年経った今でも連絡を取り合っています。

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――最初の日本での文化体験は、どのようなものでしたか?

TG:常滑の人々のほうが驚いていたと思います。小さな町に若い黒人の男性がいるわけですから。当時、そのプログラムに黒人はほとんど参加しておらず、15年か20年前にジャマイカ出身の方が一人いた程度でした。工房から自転車で帰るときに、NHKのカメラが後をついてくることもありました。小さな町に現れた外国人に強い関心があったのだと思います。

しかし最も衝撃的だったのは、自分が陶芸について理解していると思っていたことが、実は巨大な氷山の一角に過ぎなかったと気づいたことです。工房体験は常滑の小学校で日々開かれ、各地から陶芸家が訪れていました。ある日、95歳くらいの男性が現れ、私がろくろを回している隣で手びねりをしていました。すると、わずか10分ほどで、私の顔の完璧なレプリカを作り上げたのです。

その人に、これまで何をされてきたのか尋ねると、「これまでの生涯、陶器で仏像を作ってきた」と答えました。しかし、娘さんは陶芸に関心がなかったのでその工房を継ぐ人はいません。このホームステイプログラムは、彼にとって外の世界とつながる機会であり、技術を生かし続ける場でもありました。無名であっても驚くべき技を持つ人がいるーーその事実に、26歳の私は強い衝撃を受けました。

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「私たちのものだって美しい」

――今回のHOSOO GALLERYでの展覧会「Glorious Robe」の中心作品である「ダシキモノ」、これは、西アフリカの伝統的な衣装であるダシキと日本の着物を融合させたものですが、この作品を、アフリカ系アメリカ人の人権運動と日本の民藝運動を結びつけています。その関係についてどのようにお考えですか?

TG:着物とダシキを用いることで、黒人の政治的・文化的運動がいかにファッションに対して鋭敏であり、そこに洗練された美学的意図があったかを示したいと考えました。1960年代に起こったBlack Power運動とは同時にBlack is Beautiful運動でもあります。アフロヘアにし、伝統的な衣服をまとうことは、白人中心の支配的価値観に対する明確な意思表示でした。ダシキはその象徴なのです。

こうした視点から見ると、日本の民藝運動もまた、西洋的価値観や美意識に対する応答として立ち上がっていたことが見えてきます。誰も明確に「白人」とは言いませんが、西洋の価値観は急速に広がっていました。着物からスリーピーススーツへ、浴衣からサマードレスへと変化していった時代です。民藝には多様な側面があり、家父長的価値観の保存という、後ろ向きな側面もあったかもしれません。

しかし根底にあるのは、「私たちのものだって美しい」という宣言です。私にとって、Black is Beautiful運動と民藝は、いずれも西洋的プログラミングに対する能動的な抵抗でした。何を着るか、何を作るか、何を食べるか、そして自分たちについて何を語るか。「英語を話すために日本語を捨てる必要はない」ということです。黒人たちもまた、「仕事ではプロフェッショナルであっても、彼らの服は着ないし、髪をストレートにもしない」と語っていました。

「Glorious Robe」は、こうした二つの文化の交差を肯定する試みです。そして、その交差から生まれる第三の文化の可能性を問いかけています。

――着物の展示がここまで昇華した展覧会は、珍しいのではないでしょうか。それが実現するためには、そんな思考のプロセスがあったのでしょう。

TG:「Glorious Robe」が重要なのは、私が京都で素晴らしい方々とのご縁をいただいてきたからです。常滑や東京との関係に加え、京都では細尾さんのような織物の作り手、それ以外にもお香の製造元、お茶の生産者、さらには茶道お家元とも親しく交流を深めてきました。そうした人たちとの友情のおかげで、京都という町でもっと活動をしたいという気持ちが強くなりました。

私は陶芸や茶道、儀式、修道院的な秩序、さらには黒人の政治的実践を通じて日本に入りました。それはポップカルチャーとは異なり、日本文化と黒人文化のより静かな層に触れる経験だったのです。宇治の友人たちは当初、茶を飲む人が減り、茶道が衰退していることを懸念していました。しかしその後、抹茶が世界的なブームとなり、茶道用の抹茶の供給が追いつかなくなる事態が起こりました。こんなふうに文化が変容していく過程そのものに、私は強い関心を抱いています。

日本を信じ、制作を続けてきた25年

――観客はまさか織物のギャラリーで、マルコムXの貴重な資料と出会えるとは、想像していなかったのではないでしょうか。

TG:今回、ジャーナリスト・翻訳家の長田衛さんとそのパートナーである石谷春日さんのマルコムXに関する研究のアーカイブを日本に持ち帰り、美術館ではなく、より親密な空間で体験してもらいたいと考えました。HOSOOのチームは、マルコムXや石谷春日さん、長田衛さんについて語るための、ある種の神聖な空間を提供してくれました。

柳宗悦が韓国との友情を築き、ソウルに民藝の拠点を作ったように、私もブラックアメリカンと日本人のあいだに持続的な関係を築き、その架け橋となる場をつくりたいと考えています。いつか京都にも、自身のスペースを持ちたいと思っています。

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――25年前の自分と今の自分を比べて、どのようなことを伝えたいですか?

TG:若い頃の私は、再び日本に来ることになるとは想像もしていなかったと思います。まして常滑で土管工場を購入し、その系譜を引き継ぐことになるとは考えてもいなかったでしょう。当時の私はミシシッピの小さな町を離れることに喜びを感じていたので、まさか常滑のような場所に戻りたいとは思っていませんでした。

この道を歩み続けてきたことに、若い頃の自分はきっと驚くと思います。現代美術の文脈で陶芸が十分に評価されていなかった時代に、あえて陶芸を称揚してきたからです。日本の陶芸家たちへの敬意があったからこそ、私自身もこの「陶」というメディアを用いるアーティストとしての自覚を持つことができました。その結果、若い世代の陶芸家たちにも影響を与え、陶芸家の辻村史朗さんや桑田卓郎さん、大原光一さんといった人々との関係を築くことができたのです。

日本を信じ、制作を続けてきた現代美術家であることを誇りに思います。もし若い自分に何か言うとすれば、「もっと働け。そしてネグローニは控えなさいよ」と伝えるでしょう(笑)。

Theaster Gates|シアスター・ゲイツ
1973年、アメリカシカゴ生まれ。アイオワ州立大学と南アフリカのケープタウン大学で都市デザイン、陶芸、宗教学、視覚芸術を学ぶ。陶芸や彫刻、都市再生、音楽、パフォーマンスを横断し、アフリカ系アメリカ人の文化史や工芸の伝統を再解釈する。地域コミュニティと連動したプロジェクトでも知られ、日本の民藝や陶芸との関係も深く、国際的に高い評価を受けている。主な個展に森美術館(東京、2024年)、ニュー・ミュージアム(NY、2022-2023年)、サーペンタイン・パビリオン(ロンドン、2022年)、パレ・ド・トーキョー(パリ、2019年)、プラダ財団(ミラノ、2018年)など。

タイトル

シアスター・ゲイツ:Glorious Robe

場所

HOSOO GALLERY(京都府京都市中京区柿本町412)

会期

4月11日(土)〜8月30日(日)

時間

10:30~18:00(祝日を除く、入場は閉館の15分前まで)

休み

無し

料金

無料

URL

https://www.hosoogallery.jp/exhibitions/glorious-robe/ 

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