モノには必ず形がある。
形が分からないものを想像するということは、
視覚的経験が豊富だとしても難しいと思う。
僕にとっての写真とは、目に見えている世界を切り取り、
元あったものとは違う形と意味を与える行為であり、
写真で撮られたイメージを見ることとは、
新たに与えられた形を見て意味を探ることなのだと考えている。
―鈴木崇
「Form-Philia」とは、形(フォルム)を意味する「Form」と嗜好、偏愛などを意味する「Philia」を組み合わせた造語。本展では代表作「BAU」「ARCA」に加えて、新作「Fictum」を含めた3つのシリーズで構成され、写真というメディアを通して、写真を見ることの意味に向き合ってきた鈴木崇の作品が一堂に会する機会となります。
「BAU」シリーズはカラフルなスポンジを組み合わせてさまざまなフォルムを構築していく意欲作で、昨年オランダの写真フェア「Unseen」でも人気を博しました。あえて黒い背景を用いることで、「BAU」が意味する「建物」や「構造」という側面が浮かび上がり、それが膨大なパターンとして増殖していくことで、日用品であるスポンジは別の意味を帯びていきます。今回は500点にも及ぶシリーズの中からIMA galleryの空間に合わせたインスタレーションで展示します。
「ARCA」は、現象である影を正面から写した作品。大判カメラで撮影し、大きく引き延ばされたイメージは、輪郭やサイズなどの情報が奪われ影本来の持つ意味を超えた新しい構造物として表出します。さらに今回は、日本の混沌とした家々の写真をモンタージュしながら、建築物が重なっていくことによって生まれる奇妙な風景を創造する新作「Fictum」も出品。
写真というメディアによる視点と表現を与えることで、スポンジ、影、家屋など見慣れた日常の形に新たなフォルムを見出し、異なる意味と価値を生み出す鈴木崇の思考の軌跡に触れてください。
会期 | 2015年5月29日(金)~7月12日(日) |
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会場 | |
時間 | 12:00~22:00(土日・祝日:11:00~20:00) |
観覧料 | 無料 |
イベント | ・鈴木崇×布施英利トークイベント「写真とフォルムの関係性」 |
鈴木崇|Takashi Suzuki
The Art Institute of Boston写真学科卒業後、デュッセルドルフ芸術アカデミートーマス・ルフクラス研究生とトーマス・シュトゥルートのアシスタントとしてドイツに滞在。見ることから生じる視覚と知覚の関係性をテーマに国内外で作品を発表。昨年作品集『kontrapunkt』をドイツのTRADEMARK PUBLISHINGより刊行。