東京・六本木のフジフイルム スクエア 写真歴史博物館で、企画写真展「写真伝来|写真大国ニッポンのはじまり」が7月1日から開催される。本展では、富士フイルムが所蔵する「フジフイルム・フォトコレクション」を中心に、幕末・明治期の写真作品、歴史的撮影機材、貴重書など約30点を通じて、日本写真文化の黎明期をたどる。
今日、私たちは日常的に膨大な数の写真に接している。しかし、写真が日本に伝来したのはわずか190年ほど前のことである。1839年にフランスでルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが発表した世界初の実用的写真術「ダゲレオタイプ(銀板写真)」は、1848(嘉永元)年にオランダ船によって長崎へもたらされた。当時の日本にとって写真は未知の西洋科学であり、蘭学者の川本幸民らによって研究と実験が重ねられていった。
日本で写真が実用化したのは1860年代初頭のことだった。技術の中心はコロジオン湿板法へ移行し、開国後に来日した外国人写真家や外国人から技術を学んだ人々によって職業写真家が誕生する。明治時代に入ると、日本独自の写真文化は急速に発展し、後に「写真大国ニッポン」と呼ばれる土壌が築かれていった。
本展では、日本写真史を代表する初期写真家たちの作品を紹介する。日本の「写真の開祖」と称される上野彦馬による《長崎、中島川》(1872年頃)は、長崎の風景を繊細な階調で捉えた名品として知られる。また、下岡蓮杖の《醤油売り》、内田九一の《隅田川の舟遊び》、鹿島清兵衛の《ぽん太》など、幕末から明治にかけての日本写真を語るうえで欠かせない作品群も展示される。
写真作品だけでなく、現存する日本最古のカメラ・オブスクーラや19世紀のダゲレオタイプカメラも出品される点も見どころだ。さらに、上野彦馬が抄訳した化学書『舎密局必携』(1862年)、日本初の写真技術専門書とされる『写真鏡図説』(1867–68年)などの貴重書も展示され、日本における写真受容の知的背景を浮かび上がらせる。
興味深いのは、日本の写真史が単なる西洋技術の受容ではなかった点にある。湿板写真と鶏卵紙、手彩色写真などの技法は、日本画の絵師や既存の工芸文化と結びつきながら独自の発展を遂げた。西洋の科学技術と日本の美意識が交差することで、世界でも類を見ない写真文化が形成されていったのだ。
スマートフォンによって写真がかつてないほど身近になった現代だからこそ、写真がどのように日本へ伝わり、人々を魅了し、一つの文化へと成長していったのかを振り返ることには大きな意味がある。本展は、「写真大国ニッポン」の原点を再発見する貴重な機会となるだろう。
| タイトル | フジフイルム スクエア 写真歴史博物館 企画写真展「写真伝来|写真大国ニッポンのはじまり」
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|---|---|
| 場所 | フジフイルム スクエア 写真歴史博物館(東京都港区赤坂9-7-3 東京ミッドタウン ミッドタウン・ウェスト1F) |
| 会期 | 2026年7月1日(水)〜9月17日(木) |
| 時間 | 10:00〜19:00(入館終了10分前まで、最終日16:00まで) |
| 休み | 無し |
| 料金 | 無料 |
| URL | https://fujifilmsquare.jp/guide/museum.html |
