ジャンピエール・アタルとバレンシアガ、
ふたつのリアルが結晶する
社会的ファッションビジュアル

29 May 2019

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バレンシアガ

都市を写し、社会を解読する写真作品を発表し続けているパリを拠点とする現代アーティスト、ジャンピエール・アタル(Jean Pierre Attal)。人や建物を被写体に、現代社会を切り取ってきた。そこには、システマチックな人間社会の現実への不安を感じさせる。

そんなアタルが、現代のファッション界を最もリードするブランドを撮影した。そのブランドはアーティスティック・ディレクター、デムナ・ヴァザリア率いるオートクチュール発祥のメゾン「バレンシアガ(BALENCIAGA)」。この19年フォールコレクションのキャンペーンビジュアルをアタルが手がけた。彼にとっては、初のファッションキャンペーンという。

スティルはアタルの社会学的考察シリーズ「Paysages Ethnographiques(民族誌学の風景)」に則ったカット。広大無辺な大地を現代の人々が歩いているオリジナル作品のように、モロッコやスペイン・ランサローテ島の砂漠にバレンシアガを着用した人々がさすらう。

同じくフィルムも手がけているが、アタルの映像作品「Chronique Urbaine(都市の記録)」のように、都会で見られる日常の雑踏が流れる。エスカレーターや階段を上り、オフィス街を日常に追われた人々がバレンシアガに身を包み歩いて行く。アイコニックなシーンは、ガラス張りのオープンスペースの前を歩く映像だ。冷たい都会の風景と人々の関係性、これらに親密さを与えるかのようなバレンシアガのヴィヴィッドな服が、映像にコントラストをなしている。

このキャンペーンで表現されるのはバレンシアガという“リアル”だろう。バレンシアガのアーティスティック・ディレクター、ヴァザリアは自身のブランド「ヴェトモン」から一貫して“ストリート”といういまを服として提案してきた。手がける双方のブランドでショーモデルをストリートからもキャスティングしている。バレンシアガの19年サマーコレクションショーでは日本人バンドマン・プラズマが高円寺でスカウトされたことが話題となった。

ファッションは時代を映す鏡。現代をフィルムに収めてきたアタルがキャスティングされるのは必然だったのかもしれない。

Courtesy of BALENCIAGA

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