27 August 2019

古き良き黄金時代のパリへの
現代からの「ヒューマン」な視点のタイムスリップ
『ディリリとパリの時間旅行』

Text: IMA

27 August 2019

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ニューカレドニアからパリへやってきた混血の小さな女の子、ディリリ。偶然知り合った配達夫の少年オレルとの冒険譚を描いた、愉快かつ優美なアニメーション『ディリリとパリの時間旅行』が、今週公開になった。

舞台は、さまざまな文化が花開き、科学技術が大きく発展した黄金時代のパリ。「ベル・エポック(美しき時代)」と呼ばれたこの豊かな時代、光が強ければ強いほど影も深いように、輝ける街を脅かす悪の集団が暗躍する。それが、「男性支配団」。彼らは、少女たちを次々と誘拐し、世間を脅かしていく。そんな中、「男性支配団」がパリを代表する高級宝飾店「ヴァン クリーフ&アーペル」を襲撃するという計画がディリリとオレルの知るところとなる(1906年創業のこのメゾンは、まさにベルエポック時代の流行の最先端、話題の店であったに違いない)。ディリリたちは店の前で待ち伏せして、見事悪党たちを撃退、宝石類は難を逃れるが、この快挙が仇となりディリリは彼らの標的に。結局、誘拐され少女たちと一緒に辛い仕打ちを受けるが、そこからの逆転劇がドラマチックなショーさながら、痛快な捕り物が見ものだ。

『ディリリとパリの時間旅行』(Dilili in Paris)に登場するヴァン クリーフ&アーペルのファサード

三輪車でパリ中を駆け回りながら、事件を解決していく二人。

スピーディーに展開していくストーリーも、愛らしいイラストレーションもさることながら、見所の一つが、時代を象徴する登場人物たち。ピカソ、プルースト、ロートレック、キュリー夫人、ミュシャのモデルでもあった大女優サラ・ベルナールにドビュッシー……誰もが知る偉人たちが100人以上も登場し、物語を盛り上げる。

スピーディーに展開していくストーリーも、愛らしいイラストレーションもさることながら、見所の一つが、時代を象徴する登場人物たち。ピカソ、プルースト、ロートレック、キュリー夫人、ミュシャのモデルでもあった大女優サラ・ベルナールにドビュッシー……誰もが知る偉人たちが100人以上も登場し、物語を盛り上げる。

ヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーが随所に散りばめられているのも必見。

そして、もうひとつが写真とアニメーションの見事な融合だ。フランスアニメーション界の巨匠ミッシェル・オスロ監督は、独特の美意識と芸術性を備えた作品世界を描くことで知られるが、今回『ディリリとパリの時間旅行』では、アニメーションの登場人物たちの背景であるパリの街並みを全て本人が4年間にわたり撮影したという。写真によって物語はリアリティを帯びながらも、アニメーションによるファンタジックな要素が加味されて、何とも幻想的な仕上がりになっているが、100年前の街並みを舞台にした物語が再現できるのも、歴史的建造物の保全と厳しい景観条例を遵守するフランスならではといえるかもしれない。

キュリー夫人などのセリフにも、現代社会が孕む問題を示唆する金言が散りばめられている。

キュリー夫人などのセリフにも、現代社会が孕む問題を示唆する金言が散りばめられている。

日本やアメリカのアニメーションとはまた違った魅力に満ちたこの作品、たくさんの魅力的な登場人物から、それぞれのセリフ、描写のディテール、歌や踊りなど細部に至るまで、鑑賞すればするだけ新しい発見がある。スペクタクルの合い間には、歴史における負の遺産から人種やフェミニズム、子どもの虐待などの問題、現代社会への警鐘と示唆にも富んだテーマが見え隠れする。スクリーンと向き合ってあっという間に過ぎる94分の「時間旅行」の中で、私たちは何を知ることになるのか。ディリリの案内で、知が人間の本質を追求していた古きよき時代のパリへ出かけてみよう。

タイトル

『ディリリとパリの時間旅行』

脚本・監督

ミッシェル・オスロ

音楽

ガブリエル・ヤレド

日本公開

2019年8月24日(土)

会場

YEBISU GARDEN CINEMAヒューマントラストシネマ有楽町ほか、全国順次公開

概要

2018年/フランス・ドイツ・ベルギー/94分

URL

https://child-film.com/dilili/

2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。

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