パリフォト期間中の11月4日~10日、サンローランがライカ展を開いた。会場となったのは同ブランドが2017年にクローズしたセレクトショップ・コレットの跡地に今年オープンしたサンローラン リヴ・ドロワット。コレットはファッションとカルチャーが交差する伝説的なショップだったが、サンローランのこのストアもそのDNAを意識してか、同クリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ヴァカレロが思い描くカルチャーライフスタイルを発信するショップだ。
ライカ展では、0シリーズ、M3、III G、M6(1984年)などライカのコレクターズアイテムを展示。また、森山大道の写真集を制作。森山とは2018年のパリフォト中に写真展「SELF01」をパレロワイヤルで開いた。その時の作品をリミテッドブックとしてまとめた形だ。現在、カメラ、写真集ともに同ストアで販売もしている。
アンソニー・ヴァカレロがつくるパリのエスプリともいえるこのメゾンは、より官能性が増した印象だ。それは毎シーズンのキャンペーンヴィジュアルからも明らか。ロックというよりセンシュアル。森山の悲哀を感じさせるモノクロ写真と化学反応が起こる作風ではないだろうか。
店名のリヴ・ドロワット(rive droite)はフランス語で右岸という意味。サンローランは、創業者ムッシュ イヴ・サンローランの時代に当時知性派リベラル層の溜まり場だったパリ左岸=リヴ・ゴーシュ(rive gauche)に、デザイナー名に同様のセンテンスを付けたプレタポルテ(既製服)ショップを開き、新たなファッション・カルチャーを切り拓いた。そもそもイヴはピエト・モンドリアンなどにインスパイアされたコレクションを発表し、屈指のアートコレクターでもあった。ともにイヴ・サンローラン社を立ち上げた公私にわたるパートナー、ピエール・ベルジェはイヴと出会う前はベルナール・ビュフェのマネージャーだった。このようにサンローランは、アートと縁の深いブランドだ。
リヴ・ドロワットは先達の衣鉢を継ぎ、更に現代で発展させる意図を感じさせる。サンローランのカルチャー動向にも注目だ。
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。