建築家・隈研吾の原点を知るための1冊『隈研吾 はじまりの物語 ゆすはらが教えてくれたこと』が青幻舎より刊行された。
本書では、隈がはじめて木造を用いた建築となる「雲の上のホテル」をはじめ、「梼原町総合庁舎」「雲の上のギャラリー」「まちの駅『ゆすはら』」「雲の上の図書館/ YURURI ゆすはら」の、梼原町にある5つの隈建築を年代順に紹介しながら、隈が続けてきた木材の実験的な試みと進化を辿る写真文集。
ときに新しい長が前任者の仕事に反発し、継承されないこともある行政での仕事にもかかわらず、梼原町では歴代の町長みなが建築を大事にし、約30年にわたり、一貫して街づくりに携わることができた。この経験が後の国立競技場や歌舞伎座を始めとする、場所に根付いた建築を作る過程で生かされたと、隈は述懐する。 また本書に収録されている梼原の隈建築群の写真は、主に広告写真やCMの世界で活躍しながら、『Le Corbusier』(2017)など建築写真の評価も高い写真家・瀧本幹也が撮影している。瀧本が直感的に隈建築に合うと感じた硬質な光によって、情緒を排して切り取られた写真は、梼原の建築が持つ木の質感を見事にとらえており、隈も「本書の写真はその陰影を巧みにとらえ、木という物質の本質をとらえています」と語る。
2011年の東日本大震災を経て、新型コロナウイルスのパンデミックを経験し、隈が提唱する、いわゆる「負ける建築」によって社会とつながり、共同体のあり方をとらえなおす建築観が重要さを増している。 本書は、1964年の東京オリンピックをきっかけに建築を志した隈が、新しい未来の可能性を見出すきっかけとなった、日本の小さな町とそこに住む人々の営みとの、特別な出合いの物語である。
タイトル | 『隈研吾 はじまりの物語 ゆすはらが教えてくれたこと』 |
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出版年 | 2021年6月 |
価格 | 1,980円 |
仕様 | ハードカバー/A5変/80ページ |
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